幼馴染が勇者となって帰ってきました。

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王城での宴は既に始まっていた。

壇上では国王陛下夫妻の隣に両親二人が並んで座っていた。
豪華な椅子に座り、目の前には陛下と同じ料理が並べられている。
平民としてはあり得ないほどの待遇を受け、機嫌良さげに給仕に酒を注がれていた。

(なんでそんなところにいるんだ?)

遅れて入ってきた俺にみんなが注目する。きらびやかな衣裳を纏い豪華な宝石を付けた、何の苦労も知らない貴族たち。

陛下も両親も満面の笑みで俺を迎えた。

「勇者トーイよ。よく来た。この宴はお主の魔王討伐を祝うものだ。存分に楽しむが良い。」

陛下は尊大な口調でそう言うと、徐に立ち上がった。
会場の人々は会話を中断し、陛下の方を向いて言葉を待つ。

「今回の魔王討伐の褒賞として、勇者トーイに王女マルガリーゼを下賜しよう。ここに、二人の婚約を正式に発表する。近々結婚式の日取りも発表する予定だ。皆、盛大に祝ってくれ!」

陛下が言い終わると同時に、会場では大きな歓声が湧き上がる。
会場の貴族達がそれぞれ陛下と俺の両親へ、祝いの言葉を口にした。

俺の事なのに、全く俺抜きで話が進んでしまっていることに愕然とする。

嫌だ。俺はアイ姉ちゃんと結婚したい。
なんでそんな事勝手に決まってんだ?
俺は歓声をかき消すように声を張り上げた。

「俺!王女様とは結婚出来ません!!」

俺の声が響くと、会場はシンと静まり、陛下の地を這うような低い声が響いた。

「何が不満だ。」

「結婚相手が不満です。」

「マルガリーゼが不満だと申すか?」

「俺には心に決めた人がいます。もう帰ります。褒章も何もいりません!」

出て行こうとする俺を王城の兵士が止めた。

「王命だ。勇者トーイ、悪いようにはせん。お主の両親とも話はついておる。」

頭にカッと血が昇るのが分かる。
怒りで手が震え、身分を忘れて陛下に向かって怒鳴ってしまった。

「はっ?そんな奴らが親だって?陛下だって魔王討伐したら自由にして良いって約束しただろ?ふざけんな。」

俺の暴言に周囲が騒めき、両親はさっと陛下の顔色を伺う。反吐が出るほど嫌いな奴ら。

「勇者トーイには何か誤解があるようだ。旅から帰ったばかりで疲れているのかもしれない。彼には休んで貰おう。」

陛下は立ち上がり貴族達にそう説明すると俺を連れて行くように兵士に目配せした。

「何処へ連れてく気だ!」

宴では俺は帯剣は許されていない。

「離せっ!!」

一緒に旅をした魔法使いも聖女もいないなか、丸腰の俺は大勢の兵士に取り囲まれて王城の一室へと閉じ込められた。

閉じ込められた部屋は賓客用と思われる豪華な部屋。
ただし施錠されている。

逃げたいけど、今はどうしようも出来ない。 ドアを叩き続けるが何の反応もない。
きっと外には武器を持った兵士が構えているのだろう。
ドアを蹴破って部屋を出ても直ぐに捕まって更に頑丈な部屋に入れられるのがオチだ。

(姉ちゃん怒ってるかな?折角唐揚げ作って貰ったのに……。)


俺は武具を取り返すまでおとなしく従った振りをする事に決めた。
おとなしくいうことを聞いていれば逃げるチャンスはあるだろう。
この国にも両親にも未練は無い。
けれどアイ姉ちゃんはついてきてくれるだろうか?
それだけが心配だった。

(反抗し過ぎて監禁されたのか……?従う振りをして逃げれば良かった。)

俺は自分の振る舞いを後悔したが、もう遅い。
その夜はどうやって逃げようか考えながら眠りについた。

★★★


翌日、朝から侍女が入って来て勝手に俺の身支度を整えた。

「トーイ様、陛下が朝食をご一緒したいと。」

「はい。」

素直に答えた。
諦めて従う振りをする事に決めていた。取り敢えずこの部屋から出るチャンスを作りたい。

「朝食にはマルガリーゼ様もご一緒です。それはそれはお綺麗で、その美貌は他国にも評判になる程の美姫ですのよ。」

「俺も姿絵は拝見したことがあります。」

「実際は姿絵以上ですわ。」

「へー楽しみですね。」

冷めた気持ちで話を合わせる。誰か味方が欲しい。ユンフィーとジンは何をしているんだ?

俺は重苦しい気持ちで朝食へと向かった。


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