5 / 14
5.
しおりを挟む
「トーイよ。昨夜は良く眠れたか?」
俺がおとなしく朝食の席に着くのを見て陛下はにこやかに話し掛けてきた。
昨夜の無礼な態度など、忘れたかのような態度だ……。
「はい。綺麗な部屋を用意してくださりありがとうございます。ぐっすりと休みました。」
陛下は鷹揚に頷く。
一晩拘束され、俺が反省したと思ったのだろう。
陛下は自分の斜め前に座っている華美に着飾った王女を紹介した。
「うむ。トーイ、私の娘のマルガリーゼだ。これから一緒に過ごして交流を深めて欲しい。」
俺はちらりと王女を一瞥して、陛下へと視線を戻す。
「俺に結婚しないという選択肢はないんですか?」
「ふむ。君の両親から聞いている。アイサと言う女性に君は入れあげているらしいな。」
俺を真っ直ぐ見据える陛下の目に不穏な影が混じる。
「彼女の身の安全を考えるなら逆らわん方がよい。分かるな?」
(俺を脅しているのか?)
俺を脅迫してまで俺との婚姻を望んでいるのか?
王女なんてどっかの貴族と結婚すればいいのに……。俺との結婚を無理に進める理由は何なんだ?
姉ちゃんの家はバレている。早く姉ちゃんの安全を確認したい。
けど。
(俺が言うことを聞かないと姉ちゃんが危ないのか……。)
「はい。」
笑顔を作るなんて出来ず、無表情で頷くので精一杯だった。
★★★
「……。」
マルガリーゼ様のティータイムに付き合わされていた。
彼女は何か話し掛けてくるけど、俺は姉ちゃんの事が心配でそれどころじゃ無かった。
「トーイ様は甘い食べ物はお好きですか?」
「いや。好きじゃない。」
「お好きな食べ物はなんですの?」
「獅子肉の唐揚げ。」
「では、夕食に用意するようシェフに伝えますね。」
「王宮のシェフが作ったヤツが好きなわけじゃない。」
「そうですか……。」
俺の無愛想な態度にも腹を立てずに、王女様気味が悪いほどにっこりと微笑んでいる。
「私との婚約はご不満ですか?」
王女様がこの婚姻を拒否すれば、陛下だって無理強いしないだろう。
俺は彼女を説得しようと試みた。
「王女様だって俺みたいな平民と結婚するなんて嫌だろう?」
「いえ、わたくしは世界を救った勇者様に添うことが出来ることを誇らしく思います。」
「俺は別に好きな人がいるんだ。他の女を好きな男なんて……。」
「ああ、両親を亡くして独り暮らしとかいう平民の女性……。」
彼女の声にはハッキリと侮蔑の響きが含まれていた。
「父上から聞いておりますが……もうお立場が違います。弁えてくださいませ。貴方はもうわたくしの正式な婚約者なのですから……。」
「弁えるって何だよ?」
「愛人にしても平民の女性が相手など………。わたくしの世評に関わりますわ。婚約者を満足させられない女などという謗りを受けるのは困ります。もう婚約は発表してしまっているのです。」
「知るかよ。横入りしてきたのはお前らだろう?お前なんかで勃つかよっ!」
俺のあまりの言葉にその場に居た侍女や護衛達は固まってしまった。
「そうですね。トーイ様にはご自分の立場というものをしっかりと理解して貰う事が必要のようですね。」
マルガリーゼは諦めたのか、スッと席を立つと俺をその場に残して去っていった。
俺がおとなしく朝食の席に着くのを見て陛下はにこやかに話し掛けてきた。
昨夜の無礼な態度など、忘れたかのような態度だ……。
「はい。綺麗な部屋を用意してくださりありがとうございます。ぐっすりと休みました。」
陛下は鷹揚に頷く。
一晩拘束され、俺が反省したと思ったのだろう。
陛下は自分の斜め前に座っている華美に着飾った王女を紹介した。
「うむ。トーイ、私の娘のマルガリーゼだ。これから一緒に過ごして交流を深めて欲しい。」
俺はちらりと王女を一瞥して、陛下へと視線を戻す。
「俺に結婚しないという選択肢はないんですか?」
「ふむ。君の両親から聞いている。アイサと言う女性に君は入れあげているらしいな。」
俺を真っ直ぐ見据える陛下の目に不穏な影が混じる。
「彼女の身の安全を考えるなら逆らわん方がよい。分かるな?」
(俺を脅しているのか?)
俺を脅迫してまで俺との婚姻を望んでいるのか?
王女なんてどっかの貴族と結婚すればいいのに……。俺との結婚を無理に進める理由は何なんだ?
姉ちゃんの家はバレている。早く姉ちゃんの安全を確認したい。
けど。
(俺が言うことを聞かないと姉ちゃんが危ないのか……。)
「はい。」
笑顔を作るなんて出来ず、無表情で頷くので精一杯だった。
★★★
「……。」
マルガリーゼ様のティータイムに付き合わされていた。
彼女は何か話し掛けてくるけど、俺は姉ちゃんの事が心配でそれどころじゃ無かった。
「トーイ様は甘い食べ物はお好きですか?」
「いや。好きじゃない。」
「お好きな食べ物はなんですの?」
「獅子肉の唐揚げ。」
「では、夕食に用意するようシェフに伝えますね。」
「王宮のシェフが作ったヤツが好きなわけじゃない。」
「そうですか……。」
俺の無愛想な態度にも腹を立てずに、王女様気味が悪いほどにっこりと微笑んでいる。
「私との婚約はご不満ですか?」
王女様がこの婚姻を拒否すれば、陛下だって無理強いしないだろう。
俺は彼女を説得しようと試みた。
「王女様だって俺みたいな平民と結婚するなんて嫌だろう?」
「いえ、わたくしは世界を救った勇者様に添うことが出来ることを誇らしく思います。」
「俺は別に好きな人がいるんだ。他の女を好きな男なんて……。」
「ああ、両親を亡くして独り暮らしとかいう平民の女性……。」
彼女の声にはハッキリと侮蔑の響きが含まれていた。
「父上から聞いておりますが……もうお立場が違います。弁えてくださいませ。貴方はもうわたくしの正式な婚約者なのですから……。」
「弁えるって何だよ?」
「愛人にしても平民の女性が相手など………。わたくしの世評に関わりますわ。婚約者を満足させられない女などという謗りを受けるのは困ります。もう婚約は発表してしまっているのです。」
「知るかよ。横入りしてきたのはお前らだろう?お前なんかで勃つかよっ!」
俺のあまりの言葉にその場に居た侍女や護衛達は固まってしまった。
「そうですね。トーイ様にはご自分の立場というものをしっかりと理解して貰う事が必要のようですね。」
マルガリーゼは諦めたのか、スッと席を立つと俺をその場に残して去っていった。
60
あなたにおすすめの小説
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】遅いのですなにもかも
砂礫レキ
恋愛
昔森の奥でやさしい魔女は一人の王子さまを助けました。
王子さまは魔女に恋をして自分の城につれかえりました。
数年後、王子さまは隣国のお姫さまを好きになってしまいました。
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる