幼馴染が勇者となって帰ってきました。

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夕食の後、マルガリーゼが部屋を訪ねてきた。
その手には小さな小瓶が握られている。

「これを毎日飲んでくださいませ。」

「毒か?」

「まさか。トーイ様はわたくしの夫となる方。そのようなことはいたしませんわ。」

「少し幻覚を見て自分の意思が弱くなる薬ですわ。強い薬で廃人になってしまうと困りますもの。」

クスクス笑いながら小瓶を俺に渡してきた。

「大好きな人の安寧を願うなら飲んだ方が良いと思いますわ。トーイ様が王家の傀儡になっていただけるなら、彼女には手を出しません。」

ーーーなんて卑怯な!

アイ姉ちゃんを巻き込む訳にはいかない。
俺は一気に小瓶の中身を煽った。

★★★

もう何日薬を飲まされているのだろう?
腕や足は、正気を保つために自分で噛んだ痕だらけになっている。 
その傷の痛みすら今では感じにくい。

(……姉ちゃん…。)

姉ちゃんが見える。
幻覚か……?
困ったように目尻を下げる、あの大好きな笑顔……。

「……姉ちゃん…。」

手を伸ばすと温かい手が俺を包む。

「そろそろ限界でしょう?」

マルガリーゼか?
手を振り払おうとするが力が入らない。

「い…や…だ……く…るな……。」

「トーイ様が大人しく薬を飲み続けて下さればアイサさんには手を出しません。腕の良い刺繍をなさるそうですね。私の花嫁衣裳の刺繍をお願いしようかしら?ふふふ。大丈夫ですわ。この薬は死んでしまうような薬ではありませんもの。ただ意思を奪うだけ。」

「ふざ…け…る……な……。」

目の前に居るのは、王女だ。
そう思うのに、俺の目にはアイ姉ちゃんが見える。

「わたくしに口づけしてくださいな。」

大好きな姉ちゃんが目の前で目を閉じている。

ーーー堪らない。

そっと頬に手を当て顔を寄せる……


バンっ!!

「トーイっ!!」

ーーバタバタバタ

「ジ…ン、ユ…ンフィー?」

朧気な視界の中、一緒に魔王討伐の旅をした魔法使いのジンと聖女ユンフィーが部屋へと入ってくるのが見えた。

(…これは……夢か?)

「大丈夫か?」

「……ぼんや…り……するん…だ。」

「こんな薬を飲まされるなんて馬鹿ね。」

ユンフィーが側に来て癒しの魔法で体内の媚薬を抜いてくれた。

「すまん。」

「傷だらけじゃない!」

「正気を保つために自分で付けた。」

「まったく…。健気ね。」

ユンフィーが傷の回復魔法も掛けてくれた。

「俺たちもそれぞれ伴侶を無理やり宛がわれそうになって逃げてきた。お前も行くぞ!」

ジンに俺の武具を渡された。謁見するときに武具の帯同を禁じられ、王城に預けたものだ。

「取り返してくれたのか?すまん。」

「礼は後だ!兵士が集まってきた!」

俺達は王女を拘束して部屋に転がす。
部屋に次々と入ってくる兵士達の剣を躱しながら、素早く潜り鳩尾に剣の柄を突き込む。

城の出口に向かって兵士達を倒しながら進んで行く。
人間相手の戦闘は俺たちにとっては楽だった。

身体が欠損しようと突っ込んでくる魔獣と違い、人間は一太刀浴びせれば直ぐに動かなくなる。

「急げっ!!」

「門が閉まっているぞっ。下がれ魔法を……」

「必要ない。」

俺は魔法で門を破壊しようとするジンの前に出て、力を込めて一閃剣を振り下ろす。

ドガーーーーーン

粉々になった瓦礫の中、ジンの風魔法を足元に掛け、俺たちはスピードを上げて王城から走り去っていった。








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