幼馴染が勇者となって帰ってきました。

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その後私たちは幾つかの国を越えて、目指している国の手前にある国境の街に着いた。

この街の宿に宿泊して、明日いよいよ目的の国スロア王国に入る。

「トーイ様達は祖国に戻ったと聞きましたが?」

カウンターで、宿屋の主人がトーイに話し掛けてきた。

「それがさー、酷い目にあって逃げてきたんだ。」

「何があったんですか?」

「テック王国に戻ったら、王女と無理矢理結婚させられそうになっててさ。酷いだろ?拒否したら監禁されて薬を盛られたんだ。」

「うへぇ!恐ろしい……。勇者様にそんな仕打ちを……。」

「幻覚を見る薬を盛られて、俺に王家の人形になれって脅してきたんだ。だから俺たちは逃げてきて……。明日、この国の隣のスロア王国へ行こうかと思っててさ。」

「良かったですね。よくぞご無事で。ひでぇ国ですねー。」

トーイは行く先々で再び旅をしている理由を聞かれ、全て本当の事を話した。
元より隠し事なんて出来るはずも無い。
ジンさんもユンフィーさんもそうだ。
あっけらかんとした様子で、自分たちが王家にされた仕打ちを話した。

街の宿屋や食堂からその話は伝わり、きっとこの話は世界中に広がっていることだろう。 

途中テック王国からの追っ手もあったが、トーイたちは私を決して危険に晒さなかった。
他国に部隊を派遣する訳にもいかず、追っ手は少人数だけだったため、トーイとジンさんだけで返り討ちにしていた。
近くで見たトーイ達の強さは圧倒的。
少しも不安になることなんて無かった。

世界を救った勇者として、トーイ達は行く先々の国で歓迎された。

★★★

そして翌日。
とうとう着いたスロア王国。
大陸の南東に位置する大きな山に囲まれた小さな国だ。

「ここの王国は平和で、国王陛下が物凄くいい人なんだ。旅の途中、いつか住むならここが良いってみんなで話をしてた場所だよ。」

「ここに住むの。」

「姉ちゃんが気に入ったら。ジンとユンフィーはこのままここに住むと思う。この国は同性婚が認められているんだ。」

「え?」

「ユンフィーは男だよ。ジンも男で、つまり…同性愛者なんだ。」

今、二人は買い出しに出掛けている。
二人が恋人同士なのは、旅の途中で気がついたが、まさかユンフィーさんが男だとは……。
私にはユンフィーさんは女性にしか見えず、今まで女性として色々相談に乗ってもらっていた。

「気づかなかった……。でも聖女って……。」

「あいつは自分でそう言ってるけど、俺は回復師だと思う。二人とも別の相手を押し付けられそうになって逃げてきたんだ。テック王国では同性婚は認められていないから。」

「そうだったのね。」

「あいつらの事はいいんだ。」

肩を掴んで彼の方を向かされる。

「ねぇ、アイ姉ちゃん。俺と結婚してくれる?」

「………。」

ちらりと上目遣いで彼の顔を見ると、真剣な目にびっくりしてあわてて視線を反らせた。

「国を出るときは急いでいたから……。もう一度キチンと確認しときたい。姉ちゃん、ホントにいい?」

「うん。」

「俺アイ姉ちゃんの事、好きだよ。ずっと小さい頃は相手にされて無かったけど、本当に好きだった。」

そんな私の顔を両手で挟み込み、目を合わせて確認してくる。
もう、どこを見ていいか分からない。
コクコク頷くと、ますます頬を挟む力を強くする。
唇が前に突き出して、ヘンな顔になるのが分かる。
そんな恥ずかしい顔を晒した私をトーイは甘い顔で見つめて、そのままぶちゅーと強く唇を押し付けた。

「んっ……ちょっ……ちょ……。」

「ん?」

ぐいーっと彼の顔を押し退ける。

「こんなファーストキスなんていやーーー!」

私の言葉にトーイは少し傷付いたように表情を顰めた。

「なんだよ。俺とキスしたくないってことか?」

キスが嫌なんじゃない…けど…。

「そ、そうじゃ無くて……。」

彼の誤解を解くためのぴったりとした言葉が見つからない。

「なんだよ。俺、ずっと我慢してたんだからな!!」

トーイは唇を少し尖らせ、明らかな不満顔で詰め寄ってくる。

「く、唇が付き出しちゃって、へ、ヘンな顔だったでしょ?そんな顔でキスなんて嫌だよ。」

「な、なんでだ?可愛いだろう?食べたくなるぞっ?」

「い、いやだよ。ふ、普通の顔で、ほらっ………。」

少し上を向いて目を閉じる。
しまったっ!!
この顔も恥ずかしい。

「な、なんだよ。照れるだろっ。」

明らかに狼狽えたような声……。

(なんだ、キスしないのか……。)

そう思って目を開けた途端に唇に柔らかい感触がした。
目を開けてしまったせいで至近距離で彼の視線とぶつかる。少し潤んで熱を孕んだ強い視線に驚いてきゅっと目を閉じた。

二人とも動かないまま唇を合わせる。
その時間はきっと短い。なのに緊張のせいか気が遠くなるほど長く感じた。

少し唇を離したかと思うと直ぐにチュッチュッと啄むように口づけられる。

息苦しくて、恥ずかしくて……だけど嬉しい。
もう身体はカチンコチンでトーイにされるがまま。両手はサイドに下ろされたまま、指の先までピンと伸ばしていた。

軈て気が晴れたのか、キスを止めて私の濡れた唇を親指でなぞっている。
愛しくてしょうがない、そんな顔。

「姉ちゃんの唇うまそう。舐めていい?」
「ん?」

そのまま分厚い舌でべろりと舐め上げる。

「ひゃあ!」
「うん。美味い、なんかエロい気分になるな。」
「な、何を??」
「え?ジンに好きな人は身体中どこを舐めても美味いって聞いたんだ。」

(ジンさん、何を教えてるんだ?)

「もうちょっと雰囲気を大切にして。」

「あー分かった。雰囲気だな!」

パッと明るく笑う彼は本当に私の言った事を理解したのだろうか?
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