海が囁く誓い ー冤罪で島流しになった令嬢は、初恋王子と戀に堕ちるー

まめなちゅせん

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潮騒の夜、二人の呼吸*

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「ん……」

 触れた唇が離れ、短く息が混じる。深いキスの余韻が、肌の奥にまで溶けていた。
 指先が頬から肩へと滑り、やがて彼女の背にまわる。布の擦れる音が、火のはぜる音と重なった。

「あ……」

 小さな声がこぼれ、エリザベスは身をすくめた。

「どうした?」

 低く問いかける声が、耳のすぐ傍で震えた。

「その……お気に召さないと、思って」

「は?」

 エドワードの動きが止まる。
 エリザベスは顔をそむけ、小さく唇を噛んだ。

「わたくしには……レティシア様のような、殿方を喜ばせる魅力がありませんもの」

  その名を出した瞬間、エドワードは小さく笑みを漏らした。
 こんなにも、彼女が独占したい欲を表に出してくれるなんて、夢にも思っていなかった。

「これは問題だな」

「な、何が……きゃっ!」

 突然、両手を掬われ、彼の指に包まれる。逃げようとしても、優しくけれど確かに、捕らえられていた。

「君は、本当に鈍い」

 エドワードの瞳が、炎のように揺れる。

「どれほどの男が君に心を奪われ、この瞳に映りたいと願ったか――君は、まるで知らない」

「鈍いだなんて……リンドブルグでは、いつも聖女様と比べられて……」

「比べたとて、答えなど決まっている」

 彼は息を吐き、額を彼女の額に寄せた。

「俺には、エリザベス以上に美しく、愛しい女性を知らない」

「そ、それは……エドワードが盲目的すぎるから」

「そうかもしれない」

 彼の囁きは、まるで夜気を甘く染める音楽のようだった。

「だが、それでいい。君以外に心を奪われることなどありえない」

 その言葉とともに、彼の手が頬をなぞり、唇がすぐ近くで熱を帯びた。
 食べられるようなキスは、いつもより深く、鼻で呼吸ができるようになったのに、酸欠になりそうだった。

「んっ、ふ、ぅ……」

「ふっ、やっと慣れたんだな。けど、そんなところも知るのは俺だけでいい」

 低く囁く声が、くすぐるように耳に触れる。

「ッは、んん、エドワード……あっ」

「舌を出して」

「ふぁい……っ」

 外気に触れながら互いの舌を重ねるのは初めてだ。いつも口内で絡ませているからか、肌寒いような感覚に陥る。

「エドワ、ド……ん」

「そんな顔しないでくれ。君の声も聞きたいんだ」

「あッ! あっ、」

 柔らかな胸に手を乗せて、かたくなっている先端を弾けば、彼女から声が漏れる。弾く度に膝がびくついて、エドワードの足に当たり、振動が伝わる。

「俺の手で、こんなにも反応する胸に夢中で仕方ないが」

「ひゃっ、あん!」

 優しく撫でられた指先に、身体が応える。
 どうして、こんなにも心が満たされるのだろう。
 彼に触れられるたび、胸の奥に隠していた不安が、少しずつほどけていく。

「エリザベスには伝わっていないようだな。なら、飽きるまで味わせてもらおうか」

「あ、そんなっ、アッ」

 舌先で胸を舐め上げ、先端を口に含み吸い上げたり転がしたり、強い刺激に声が抑えられなくなって、手で口を塞いだ。

「んっ! ンン」

「そういえば、妃殿下と将来子供の話をしたそうだな」

「あッん、は、い……。殿下と、同級の子を、求められ、ッあ!」

「なら、我々も育まなくてはならないな」

「あ! そこ! んッ!」

「ッ、エリザベス。そんなに誘われては我慢できなくなる」

「あっ、待っ、ぁ! 誘って、な!」

 指が挿入され、中を掻き回され、抵抗しようとエドワードの手首を掴む。だが、力が入らないからか、ただ添えるだけになっていた。
 上を擦られ、腰がガクガクと震え出す。目がチカチカし、限界を迎えた。

「あッ、ら、め……イッ、あぁ!」

 達した身体から太い指が抜かれ、エリザベスが長く息を吐く。だが、次にはエドワードが当てられ、容赦なく押し広げられていく。

「あ、まだ、イッた……ばっかりぃ…….ひぁ!」

「ッ君が魅力的だから、我慢できないんだ。ああ、けれど君は理解できないんだった、な!」

「あぁッ!」

 一気に奥まで貫かれ、甲高い声が上がってしまった。
 とんと奥を突かれ、さらに声が漏れてしまうのを慌てて手で塞ぐが、それをエドワードが繋ぐことで阻止をする。

「君に、夢中で、止められない」

「やッ! あ! わ、わかっ、からあ!」

「ん? 聞こえないな。ああ、だめだ。乱れる君が魅力的すぎて、もっと」

「やあ、あ! エドワード、まっ、あ! ひッ」

「もっと、奥に、行かせてくれ」

「む、りぃ! あぁんッ」

「無理じゃない。君が自覚するまで犯し続ける」

「ひッ!? きゃ、あ! まっ、ほんと、ら」

「分かってくれ。エリザベス。君は俺だけのものだ」

「わかっ、わかって、るからぁ! も、むっりぃっん、ん、あぁ!」

「ッ……!」

 奥に注ぎ込まれ、それがまた嬉しくてゾクゾクと身体が反応する。反応する度、下腹が、一滴もこぼすまいと収縮しているのが自分でも分かり、恥ずかしい。
 そんな反応がエドワードを燃えさせる。
 吐き出した後なのに、彼の下部はまだ足りないようだ。

「っ、あ……エドワード、ひゃあ!」

「まだ終わらないぞ」

「うそ、ぁ、もう、わたくし……っあん!」

 背後から抱きしめられ、両手ごと包まれる体勢は、まるで拘束されているようで胸がドキドキしてしまう。
 強く打ち付けられては、蕾の小さな実を弄られ、ピリッと痺れが走る感覚に、エリザベスは戸惑っていた。

「まっ、あん! 待ってぇ、あ! エドワードさ、まぁ!」

「待てない。君が笑う度、男どもが見惚れているのが気に食わない」

「ああ!」

「いや。見惚れるのは当然だ。こんなに美しいのだから。だが、その視線で君を汚していると思うと」

「ンッ、ふ、んん!」

「……嫌悪感と優越感でおかしくなりそうだ」

「あ、あっ、あぁ!」

 また達してしまった。
 エドワードの言葉の意味を理解して、それがエリザベスを優越感から快感へと変換させて攻め立てる。

「美しい君が、俺は誇らしく、だが、無防備なのが不安でもある」

「やっ! まっ、また、あぁ!」

「ッ、ここに、注ぐのは俺だけだ。君のこの姿も、味も全て、俺だけの」

「ッ、あ、エドワード、あ! あっ!」

「エリザベス……」

「あー! っ、ん、んー!」

 何度目かの注入に、エリザベスの意識が遠のいていく。
 せつなげに、だが愛おしそうに名を呼ぶエドワードに、エリザベスは無意識に微笑んで、キスをした。
 言葉とは裏腹に、幸福そうな表情を見せるエドワードに、彼女は微笑んでそっとその頬に触れた。
 指先に伝わる体温が、愛の証のように確かだった。

 唇を重ねるたび、互いの想いが形を持つ。
 ただ触れ合うだけで、世界がひとつに溶けてしまいそうだった。

「ありがとう。俺の人魚姫」

 外では潮騒が、静かに寄せては返している。
 夜の海が、二人の間に流れる熱をやわらかく包み込み、
 まるで祝福するように、優しく囁いていた。

 ――世界がゆっくりと、二人の呼吸だけになっていく。


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