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黎明の祝婚、海が選んだ姫君
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夜明け前の海は、まるで絹を敷き詰めたように静まり返っていた。
東の水平線には薄桃色の光が滲み、ルシエンテスの空を柔らかく染めていく。
波が小さく寄せては返し、その音が祝福の前奏曲のように響いていた。
土島――かつて貧困と荒廃に苦しんだこの地は、今や王国で最も美しい島と呼ばれている。
豊かな作物が実り、港には交易船が並び、夜には星と灯りが海面に映る。
人々の笑い声が絶えず、風が通り抜けるたびに、潮の香りに混じって希望の匂いがした。
その朝、屋敷の一室では、エリザベスが鏡の前に座っていた。
薄いヴェールの向こうで、金糸の髪が朝日を受けてほのかに輝いている。
侍女長のマーシャが、慎重な手つきでヴェールの端を整えながら、優しく微笑んだ。
「お美しいです、エリザベス様。今日ほど輝いて見える日はありません」
「ありがとう、マーシャ。わたくしの事業を任せてしまって忙しい身なのに、身支度を手伝わせてごめんなさいね」
「まさか。任せていただいて大変光栄でございます。元領主夫人だったことを、これほど誇りに感じていることなどございません。
たとえ忙しくとも、この仕事だけは誰にも譲りたくありませんわ」
現在、エリザベスが主宰する事業《人魚姫》は、王国内外で広く展開している。
海洋貿易、織物、薬草研究、教育支援――そのどれもが人々の生活を支え、ルシエンテス王国の未来を育む基盤となっていた。
その統括を担うのは、かつて島の再建を導いた元領主夫妻、ラウルとマーシャ・アルベリヒである。
今や二人は、王国随一の実業家として名を馳せていた。
マーシャの言葉に胸が温かくなり、エリザベスはそっと自分の胸に手を当てた。鼓動がひときわ高鳴る。
その手の甲に、海から吹き込む潮風が触れ、ひんやりと心を鎮めた。
卓上には、一つの小箱が置かれている。
以前のお茶会で、ルシエンテス王妃から贈られた白金のティアラ――。
繊細な細工が施されたその王冠は、海の泡を模した真珠の列と、波を象る銀糸が交差しており、まるで「海の祝福」そのもののようだった。
「王妃陛下が直々に贈り物をされたのは、奥様だけだとセシリア事業長から伺いました。陛下は、『彼女こそルシエンテスの海が選んだ真の姫君』と、公の場でおっしゃっていたそうです」
マーシャの言葉に、エリザベスの胸がじんと熱くなる。
頬をなぞるように光が差し、彼女の瞳が微かに潤んだ。
「ふふ、本当に陛下は義理堅いお方なのね」
「義理堅い? 以前に王妃陛下と何かおありだったのですか?」
「実はね、まだわたくしがリンドブルグ王国にいた頃、王妃陛下がちょっとした“失敗”をしてしまったことがあったの」
「陛下が……? 失敗、ですか?」
「ええ。本当に些細なことなのだけれど――リンドブルグ王妃の前では、赤いドレスを着てはいけなかったの」
「え? 赤いドレスを? 赤がお嫌いなのですか?」
「違うわ。むしろその逆。好きすぎて、ご自分以外の着用を許さなかったの」
あまりに自分勝手な話に、マーシャの表情がわずかに歪んだ。
だが、すぐに理解したように小さく息を吐く。
「……言いたいことはわかりますわ。けれど、仮にも大国相手では、他所は従うしかない。特に小国のルシエンテスでは、反発するなど無理な話ですものね」
「それで、奥様は陛下にどのようなご助力を?」
「その日はたまたまマナーレッスンの一環で、王庭をお借りし小さなお茶会を催していたの。そこへ、赤いドレスのご婦人が通りかかられてね。お声をかけさせていただいたのよ」
「ということは、奥様はまだ幼かったのでは……」
「ええ。たしか十歳にも満たなかったと思うわ」
「それから、どうなったのです?」
「ふふ、必死に考えたわ。でもね、幼いわたくしには良い策がなかったの。だから、わたくしの我儘で“赤いドレスを着ていただいたことにした”のよ。早くに到着されていたから、わたくしがお茶会に招いたということにして」
「まあ!」
「その後、お着替えいただいたの。ルシエンテス国王陛下にも許可を得て、王妃陛下のお好きなドレスをお選びいただいたわ。その時お召しになられたのが――淡い青地に銀のレースと真珠をあしらったドレス。このティアラと、よく似た意匠だったのよ」
「もしかして、このティアラは……」
「どうかしら。もしかしたら、ね」
その後、頂上会合は滞りなく終わり、王妃陛下から丁寧な礼状が届いた。
“あなたの知恵と勇気に、ルシエンテスの海が感謝しています”――そう記された手紙は、今でも彼女の宝箱に大切にしまわれている。
「その時かしら。初めて殿下とお会いしたのは」
「カルロス殿下ですか?」
「ええ。わたくしが突然お茶会に招いたものだから、とても驚いていらしたわ」
その瞬間、カルロスが初恋の芽を息吹かせたのだと知るのは――彼と王妃だけである。
ふと、窓の外に目をやる。
海辺では、結婚式の準備が進んでいた。砂浜には見事な砂像が並び、波打ち際に飾られた白い花々が風に揺れている。
その光景に、エリザベスの口元に自然と笑みがこぼれた。
「突然、反逆者が流れ着いて……島の皆様はさぞ不愉快だったでしょうね」
「そんなことありませんわ」
マーシャはくすりと笑い、静かに首を振った。
「実は、ここだけの話ですが――島民たちは最初、わざと悪態をついたのです」
「わざと?」
「ええ。だって、打ち上げられた“人魚”があまりにも美しかったのですもの。男たちは皆、鼻の下を伸ばして夢中になってしまいました。それを見た女たちは黙っていられません。男たちは慌てて興味のないふりをして……結果、あのようなご無礼に」
「まあ……」
エリザベスは頬を染め、そっと笑った。
「わたくしなんて、島の女性たちの足元にも及ばないのに」
「そのお言葉、今後一切お控えくださいませ。奥様は、島の誇りなのですから」
潮風がふわりと吹き込み、カーテンが柔らかく揺れた。
まるで海が「その通りだ」と頷いているかのようだった。
「さあ、奥様。お時間でございます」
マーシャが穏やかに声をかける。
「今日、あの海が再び祝福するのです。貴女と、エドワード様の未来を」
エリザベスは微笑み、ティアラを手に取った。
冷たい金属の奥に、王妃の優しさと王国の祝意が宿っているように感じる。
窓の外では、アニーとハリーが庭で最後の準備を整えていた。
小さな子どもたちが籠いっぱいの花びらを抱え、笑いながら駆け回る。
空には白い帆船が浮かび、港では鐘の音が響き始めた。
いよいよ、夜明けの式が始まろうとしている。
ヴェールを整え、ティアラをそっと額に載せる。
真珠が光を受けてきらめき、彼女の微笑をやさしく包んだ。
鏡の中の自分を見て、エリザベスは静かに息を吸う。
――これが、あの日、夢見た光景なのだと。
嵐の夜に打ち上げられた“人魚姫”は、もう波に流されるだけの存在ではない。
自らの足で大地に立ち、隣に歩む人と共に未来へ向かうのだ。
「お姉ちゃん! 準備できた?」
扉の向こうから、弾むような声。
アニーが、花びらを詰めた籠を抱えて飛び込んできた。
「アニー」
マーシャが目を細める。
「あ! ごめんなさーい! ──こほんっ。奥様、侍女長。会場の準備が整いました。お支度はお済みでしょうか?」
そう言って再び扉の外へ出ると、丁寧にノックをしてから入室の許可を取った。
マーシャは「今日のところは許しましょう」と微笑んで許可を与える。
アニーは目を輝かせた。
「奥様、まるで本物の人魚姫みたい!」
「ありがとう、アニー」
「先に行くなんてずりぃぞアニー! うおぉ……奥様、すっげぇきれい!」
「ふふ、ハリーもありがとう」
エリザベスはそっと膝を折り、二人の手を取った。
「わたくしは、初めから最後まであなたたちにお世話になりっぱなしね」
はにかむ彼女に、ハリーが慌てて声を上げる。
「は? 何言ってんだ、人魚姫さま。“これからも”だろ──痛ぇ!」
「ハリー! 女性の控え室に無断で入るとは何事だ! しかも奥様の前に!」
扉の陰から現れたのは、エドワードの執事ラウルだった。
その厳しい声にハリーは飛び上がる。
「申し訳ございません、奥様。私の教育不足です」
「ラウル。いいのよ。ハリーはこうでなくては」
「ラウル、いいのよ。ハリーはこうでなくては」
「ほら、奥様もこう言ってるし!──はい、ごめんなさい」
ラウルの冷たい視線に負け、ハリーは素早く頭を下げた。
「この調子では、ハリーは執事ではなく御者に転職かもしれませんね?」
「それは嫌だ! じゃなくて嫌です! 俺――私は、将来の領主様に仕えたいんです!」
ハリーとアニーが侍女と執事の見習いを始めた理由。
それは、将来的にヴァルメア侯爵家の子供に仕えたいからだという。
だから今から修行して、立派な執事と侍女になるのだと。
「楽しみにしているわ。ハリー、アニー」
「はい!」
「頑張ります!」
「それでは、そろそろ行きましょうか、マーシャ」
「はい。皆が、奥様をお待ちしております」
エリザベスはゆっくりと立ち上がった。
ヴェールの裾が床を撫で、朝の光が一気に差し込む。
彼女の姿は金色の輝きに包まれ――その瞬間、部屋の空気までもが祝福に変わった。
新しい一日の始まり。
海と空が、そして人々が――静かに、二人の未来を讃えていた。
東の水平線には薄桃色の光が滲み、ルシエンテスの空を柔らかく染めていく。
波が小さく寄せては返し、その音が祝福の前奏曲のように響いていた。
土島――かつて貧困と荒廃に苦しんだこの地は、今や王国で最も美しい島と呼ばれている。
豊かな作物が実り、港には交易船が並び、夜には星と灯りが海面に映る。
人々の笑い声が絶えず、風が通り抜けるたびに、潮の香りに混じって希望の匂いがした。
その朝、屋敷の一室では、エリザベスが鏡の前に座っていた。
薄いヴェールの向こうで、金糸の髪が朝日を受けてほのかに輝いている。
侍女長のマーシャが、慎重な手つきでヴェールの端を整えながら、優しく微笑んだ。
「お美しいです、エリザベス様。今日ほど輝いて見える日はありません」
「ありがとう、マーシャ。わたくしの事業を任せてしまって忙しい身なのに、身支度を手伝わせてごめんなさいね」
「まさか。任せていただいて大変光栄でございます。元領主夫人だったことを、これほど誇りに感じていることなどございません。
たとえ忙しくとも、この仕事だけは誰にも譲りたくありませんわ」
現在、エリザベスが主宰する事業《人魚姫》は、王国内外で広く展開している。
海洋貿易、織物、薬草研究、教育支援――そのどれもが人々の生活を支え、ルシエンテス王国の未来を育む基盤となっていた。
その統括を担うのは、かつて島の再建を導いた元領主夫妻、ラウルとマーシャ・アルベリヒである。
今や二人は、王国随一の実業家として名を馳せていた。
マーシャの言葉に胸が温かくなり、エリザベスはそっと自分の胸に手を当てた。鼓動がひときわ高鳴る。
その手の甲に、海から吹き込む潮風が触れ、ひんやりと心を鎮めた。
卓上には、一つの小箱が置かれている。
以前のお茶会で、ルシエンテス王妃から贈られた白金のティアラ――。
繊細な細工が施されたその王冠は、海の泡を模した真珠の列と、波を象る銀糸が交差しており、まるで「海の祝福」そのもののようだった。
「王妃陛下が直々に贈り物をされたのは、奥様だけだとセシリア事業長から伺いました。陛下は、『彼女こそルシエンテスの海が選んだ真の姫君』と、公の場でおっしゃっていたそうです」
マーシャの言葉に、エリザベスの胸がじんと熱くなる。
頬をなぞるように光が差し、彼女の瞳が微かに潤んだ。
「ふふ、本当に陛下は義理堅いお方なのね」
「義理堅い? 以前に王妃陛下と何かおありだったのですか?」
「実はね、まだわたくしがリンドブルグ王国にいた頃、王妃陛下がちょっとした“失敗”をしてしまったことがあったの」
「陛下が……? 失敗、ですか?」
「ええ。本当に些細なことなのだけれど――リンドブルグ王妃の前では、赤いドレスを着てはいけなかったの」
「え? 赤いドレスを? 赤がお嫌いなのですか?」
「違うわ。むしろその逆。好きすぎて、ご自分以外の着用を許さなかったの」
あまりに自分勝手な話に、マーシャの表情がわずかに歪んだ。
だが、すぐに理解したように小さく息を吐く。
「……言いたいことはわかりますわ。けれど、仮にも大国相手では、他所は従うしかない。特に小国のルシエンテスでは、反発するなど無理な話ですものね」
「それで、奥様は陛下にどのようなご助力を?」
「その日はたまたまマナーレッスンの一環で、王庭をお借りし小さなお茶会を催していたの。そこへ、赤いドレスのご婦人が通りかかられてね。お声をかけさせていただいたのよ」
「ということは、奥様はまだ幼かったのでは……」
「ええ。たしか十歳にも満たなかったと思うわ」
「それから、どうなったのです?」
「ふふ、必死に考えたわ。でもね、幼いわたくしには良い策がなかったの。だから、わたくしの我儘で“赤いドレスを着ていただいたことにした”のよ。早くに到着されていたから、わたくしがお茶会に招いたということにして」
「まあ!」
「その後、お着替えいただいたの。ルシエンテス国王陛下にも許可を得て、王妃陛下のお好きなドレスをお選びいただいたわ。その時お召しになられたのが――淡い青地に銀のレースと真珠をあしらったドレス。このティアラと、よく似た意匠だったのよ」
「もしかして、このティアラは……」
「どうかしら。もしかしたら、ね」
その後、頂上会合は滞りなく終わり、王妃陛下から丁寧な礼状が届いた。
“あなたの知恵と勇気に、ルシエンテスの海が感謝しています”――そう記された手紙は、今でも彼女の宝箱に大切にしまわれている。
「その時かしら。初めて殿下とお会いしたのは」
「カルロス殿下ですか?」
「ええ。わたくしが突然お茶会に招いたものだから、とても驚いていらしたわ」
その瞬間、カルロスが初恋の芽を息吹かせたのだと知るのは――彼と王妃だけである。
ふと、窓の外に目をやる。
海辺では、結婚式の準備が進んでいた。砂浜には見事な砂像が並び、波打ち際に飾られた白い花々が風に揺れている。
その光景に、エリザベスの口元に自然と笑みがこぼれた。
「突然、反逆者が流れ着いて……島の皆様はさぞ不愉快だったでしょうね」
「そんなことありませんわ」
マーシャはくすりと笑い、静かに首を振った。
「実は、ここだけの話ですが――島民たちは最初、わざと悪態をついたのです」
「わざと?」
「ええ。だって、打ち上げられた“人魚”があまりにも美しかったのですもの。男たちは皆、鼻の下を伸ばして夢中になってしまいました。それを見た女たちは黙っていられません。男たちは慌てて興味のないふりをして……結果、あのようなご無礼に」
「まあ……」
エリザベスは頬を染め、そっと笑った。
「わたくしなんて、島の女性たちの足元にも及ばないのに」
「そのお言葉、今後一切お控えくださいませ。奥様は、島の誇りなのですから」
潮風がふわりと吹き込み、カーテンが柔らかく揺れた。
まるで海が「その通りだ」と頷いているかのようだった。
「さあ、奥様。お時間でございます」
マーシャが穏やかに声をかける。
「今日、あの海が再び祝福するのです。貴女と、エドワード様の未来を」
エリザベスは微笑み、ティアラを手に取った。
冷たい金属の奥に、王妃の優しさと王国の祝意が宿っているように感じる。
窓の外では、アニーとハリーが庭で最後の準備を整えていた。
小さな子どもたちが籠いっぱいの花びらを抱え、笑いながら駆け回る。
空には白い帆船が浮かび、港では鐘の音が響き始めた。
いよいよ、夜明けの式が始まろうとしている。
ヴェールを整え、ティアラをそっと額に載せる。
真珠が光を受けてきらめき、彼女の微笑をやさしく包んだ。
鏡の中の自分を見て、エリザベスは静かに息を吸う。
――これが、あの日、夢見た光景なのだと。
嵐の夜に打ち上げられた“人魚姫”は、もう波に流されるだけの存在ではない。
自らの足で大地に立ち、隣に歩む人と共に未来へ向かうのだ。
「お姉ちゃん! 準備できた?」
扉の向こうから、弾むような声。
アニーが、花びらを詰めた籠を抱えて飛び込んできた。
「アニー」
マーシャが目を細める。
「あ! ごめんなさーい! ──こほんっ。奥様、侍女長。会場の準備が整いました。お支度はお済みでしょうか?」
そう言って再び扉の外へ出ると、丁寧にノックをしてから入室の許可を取った。
マーシャは「今日のところは許しましょう」と微笑んで許可を与える。
アニーは目を輝かせた。
「奥様、まるで本物の人魚姫みたい!」
「ありがとう、アニー」
「先に行くなんてずりぃぞアニー! うおぉ……奥様、すっげぇきれい!」
「ふふ、ハリーもありがとう」
エリザベスはそっと膝を折り、二人の手を取った。
「わたくしは、初めから最後まであなたたちにお世話になりっぱなしね」
はにかむ彼女に、ハリーが慌てて声を上げる。
「は? 何言ってんだ、人魚姫さま。“これからも”だろ──痛ぇ!」
「ハリー! 女性の控え室に無断で入るとは何事だ! しかも奥様の前に!」
扉の陰から現れたのは、エドワードの執事ラウルだった。
その厳しい声にハリーは飛び上がる。
「申し訳ございません、奥様。私の教育不足です」
「ラウル。いいのよ。ハリーはこうでなくては」
「ラウル、いいのよ。ハリーはこうでなくては」
「ほら、奥様もこう言ってるし!──はい、ごめんなさい」
ラウルの冷たい視線に負け、ハリーは素早く頭を下げた。
「この調子では、ハリーは執事ではなく御者に転職かもしれませんね?」
「それは嫌だ! じゃなくて嫌です! 俺――私は、将来の領主様に仕えたいんです!」
ハリーとアニーが侍女と執事の見習いを始めた理由。
それは、将来的にヴァルメア侯爵家の子供に仕えたいからだという。
だから今から修行して、立派な執事と侍女になるのだと。
「楽しみにしているわ。ハリー、アニー」
「はい!」
「頑張ります!」
「それでは、そろそろ行きましょうか、マーシャ」
「はい。皆が、奥様をお待ちしております」
エリザベスはゆっくりと立ち上がった。
ヴェールの裾が床を撫で、朝の光が一気に差し込む。
彼女の姿は金色の輝きに包まれ――その瞬間、部屋の空気までもが祝福に変わった。
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