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しおりを挟むガチャ、とドアの開く音が響く。
事務所の入口に白衣姿の男性が立っていた。
まるで医者のようだが、白髪交じりの髪はぼさぼさで無精ひげを生やしている。歳は四十代後半くらいだろうか。
ハルは「ちょうどいいところに」と呟いた。
「こちらが僕の叔父、月下ノブユキです」
「……えっ、そうなんですか?」
白衣の男性――ノブユキは「やぁ」と右手を挙げた。
失礼ながら、ハルとはあまりにも雰囲気が違う。こんなだらしない風貌のおじさんがハルの縁者だなんて、説明されなければ絶対に分からない。
ノブユキは白い紙袋を手にしている。
袋に印字されている文字を全て読むことはできないが、病院で処方される薬のようだ。それをハルに手渡したノブユキは、こちらに向かって微笑した。
「俺はファミリアじゃ〝ノブおじさん〟で通っている。そう呼んでくれていいよ」
「分かりました。よろしくお願いします」
「こちらこそ。色々話したいところだが今は忙しくてね。またの機会に」
白衣をなびかせ身を翻したノブユキが事務所を出て行く。
ハルは苦々しい笑みを浮かべた。
「慌ただしくて申し訳ありません」
「別にいいですけど。それより、さっきおじさんに渡されてた袋って……薬?」
「いえ。ここのところ食事が偏っていると話したら、ビタミン剤を用意するから飲めと言われたんです。わざわざ来客中に渡さなくても良かったのですが」
ハルは薬袋をジャケットの内ポケットに突っ込み、契約関係の書類を挟んだファイルを片付けた。
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