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しおりを挟む「リツコちゃん、ずっとコンビニにいたでしょう? マンションを出るハルくんを見たんじゃないかと思いまして」
「見てないですよ」
「裏の非常口を使ったんでしょうか」
「電話は繋がらないんですか?」
「スマホもお財布も、車の鍵も置いたままだったみたいです。ノブおじさんは『そう遠くまで行っていないはず』と言ってました」
ハルが倒れた原因は、心に大きな負担がかかったこと。
そんな状態で行方をくらませたとなると……嫌な予感しかしない。捜しに行かなければ。
スマホはジーンズのポケットに入っている。
あとは移動手段――徒歩で捜すのはあまりにも効率が悪い。お金が必要だ。アンズに「ちょっとだけコンビニの様子を見てて」とお願いし、部屋に戻って財布を掴んだ。
駆け足で階段を下りてコンビニへ。アンズはエントランスに面した陳列棚の前で、スマホを耳に当てていた。あたしが駆け寄ったところで電話を切る。連絡先を知っている住人に電話を掛け、ハルの行方について訊ねていたそうだ。
しかし有益な情報を得ることはできなかった――そんな報告を受けている最中、甲高い女性の悲鳴が聞こえた。
「ななな、なんですか、今の声!」
怯えた様子のアンズがあたしにしがみついてきた。おそらく非常口の方からだ。アンズの手を引っ張って駆け出す。
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