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しおりを挟む今度はノブユキが沈黙した。
その面持ちは夜闇と同化するほど暗い。
ハルに選択権を与えておきながら、出された答えに納得がいかないのだろうか。それとも、最初からハルの意思に委ねるつもりなどなかったのか――。
「……お前さんのコントロールは既に崩れかけている。あとはユイカ側のコントロールをやめればいい」
ノブユキの発言に驚いたのはあたしだけではなかったらしい。ハルは訝しげな顔で「どういうことですか?」と訊ねた。
「お前さんと同じAIチップを、ユイカの頭にも埋め込んでいるんだ」
「そんな……そんな話は聞いていません」
「ユイカはお前さんの心を乱さぬよう、事実を黙っていたからな」
「黙っていたって……。僕は頭に穴を開けられてから一週間、絶対安静を余儀なくされたじゃないですか。ユイカにそんな期間は――」
「覚えていないのか? あの子が整形したときのこと」
ユイカと出会ったとき、彼女は美容整形していると言っていた。あたしは詳しく聞いていなかったが、ユイカは「術後の腫れた顔を兄さまに見られたくない」と言い、十日間ほどファミリアを出ていたらしい。その時期に被せ、AIチップを埋め込む作業も行っていたという。
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