196 / 220
196
しおりを挟むユイカはあたしの眼を見ている。
心の中で「何か感じることはある?」と問いかけてみたが、ユイカが返事をすることはなかった。あたしの心を読んでいるわけではないようだ。今度は声に出し、同じ質問をした。
「……リツコの眼、綺麗だと思う」
「見た目の感想を訊いたんじゃないよ。あたしの眼を見て、何か思うことはない? ユイカ、あたしのことが気に入らなかったんでしょ?」
「……わたし、リツコとお友達になれたと思ってた。でも……リツコが兄さまのことを好きだってことに気付いて『遠ざけなきゃいけない』と思ったの。リツコはお友達だからそんなふうに思いたくなかったのに……。だから、すごく苦しかった」
ユイカがあたしに冷たく当たったのはAIチップの影響で、今もあたしのことを拒絶しているわけではないようだ。ひとまずホッとした。
「わたしは兄さまのことが大好きで、独り占めしたいって気持ちもあるけど、兄さまの幸せを壊したいわけじゃない。兄さまには好きな人と一緒になってほしい」
「……一応、確認したいんだけど。それってあたしのことでいいんだよね?」
心配そうに妹を見守っていたハルが、ふっと笑みを漏らした。「他に誰がいるんですか」と呆れた調子で言われてしまい、急激に恥ずかしくなる。顔に感じる熱を少しでも冷ますべく、冷たい麦茶を口に運んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる