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第1章 始まりの壁
1-23:それぞれの想い2
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「そっか…」
「会議室で見てわかっていることが以上だよ」
本部の屋上で時光から話されたことを聞き舞香は複雑な顔をして短く答える。
「今の話を踏まえて、権藤さんを捕獲出来る割合はどれくらいと考えているかな?」
その質問に時光はすぐに答えられず少し間をおいて力量を考慮して答える。
「どんなに高く見積もっても五分がいいところだね。相手は間違いなく俺らよりも力のある人だから簡単にいかせてくれないだろう。でも…」
「でも?」
険しい表情から少しずつ緩んできたように見えて舞香は更に時光の言葉に耳を傾ける。
「ここにいる皆と一緒なら何とかなりそうだと思うから負ける気がしないよ」
「キミって人は」
心擽られた感覚がして舞香も自然と頬が緩む。
「根拠なしに言っているように聞こえたけど本当に勝算はあるの?」
「さあどうだろう。本音を言えば総監の任務に出向いているアイツの力を借りたいところだよ」
「時光クン、そこは自分を信じてついて来いって言い切ってくれた方が助かるなぁ」
「アハハッ。ごめん、まだまだ力不足なもので」
話しているうちに雰囲気はいつも通り穏やかになり冗談を交えつつある。
「普段話をすることはあるけど、改まって2人でゆっくり出来たのは久々だね」
「言われてみれば確かにそうだね。中途半端になってしまうことが多かったからね」
時光の言葉に舞香がやんわりと返す。
普段は途中で志穂と美穂が割り込んで時光に群がっては恵がそれを注意することが多く、落ち着いて話すことが出来なかった。
「昔と変わらず困ったことや苦しいことがあると、こんな感じだよね」
「それは言えているね」
「俺の方で、もう少し気の利いた話が出来ればと思っているけど、なかなか出来なくてごめん」
「ううん、気にしなくて大丈夫だよ。時光クンがいつも一生懸命なのはわかっているから。もう少し肩の力を抜いて自分を労うことも忘れないでね」
「そう言ってもらえると助かるよ。ありがとう」
「どういたしまして」
互いに穏やかに話を進ませると、舞香が何か思い出したようで時光に質問する。
「苦いことを思い出させるようで申し訳ないけど、恵ちゃんが医療機関に運ばれた後に本部に戻って彼との手合わせはどうだった?」
「ああ、その時ボロボロになった俺の姿を見た通りだよ。全くじゃないけど歯が立たなかったよ」
「そうだったんだ。そこまで…」
肩を竦めて感想を述べる時光に思わず息を飲むほどだった。
時光が弱かったのではなく、時光にそれほどの感想を言わしめる相手が強すぎたのだと解釈すると、時光が付け加えて述べる。
「それに利き腕ではない右手で相手をされたものだから、精神的に堪えたものはあったけど負けて気付かされたことの方が大きくてスッキリしたよ」
「それはまたどうして?」
理由をハッキリさせておこうと思い舞香は尋ねる。
「全然悔しくないと言ったら噓になるけど、自分に足りないものや大切なものを守り続けることで自分の在り方を証明することが出来るから。それに」
「それに?」
聞き返すと、時光は迷いのない目で舞香に答える。
「自分よりも強い人が高い壁となっているおかげで目標として頑張っていける、そんな気持ちにもなれるから」
「それなら私も遅れをとられないように頑張らないとね。すぐにおいていかれそうだから」
「舞香さんならそんな遅れをとられるようなことはないと思うけど」
「それでもだよ時光クン。困った時はよろしくね」
「ああ。俺でよければ」
そう話しているうちに自分たちに近づいて来る気配がして振り向くと勢いよく扉が開き時光に向かって来る。
「「助けてー!」」
「おわぁ!」
声を揃えて志穂と美穂が時光の胸元に飛びつき、2人を追ってきた恵の姿が見られた。
「志穂さん、美穂さん逃げないでください!練習になりません!」
時光に縋りつく2人に厳しい言葉が飛ぶ。
「恵さん、これは一体どういうことかな?」
察しはつくが時光は恵に詳しい状況を求める。
「先輩⁉お見苦しいところすいません!」
ハッと我に返り慌てて謝る。
「それはいいんだ。それで皆は何をしてここまで勢いよく来たのかな?」
「それは…」
恵が恥ずかしそうに答えようとすると、志穂と美穂がそれを遮り訴えるように時光に事情を話す。
「メグミちゃんが突然、私たちを引っ張り出して「トレーニングしましょう」と言ってきて最初から全力で向かってきて危ないと思って」
「その勢いに負けないようにと私たちもかかったんだけど、闘牛のように興奮してマズイと思って全力で逃げてきたんだ」
2人のそれぞれの感想を聞いた後に恵が気まずそうに口を開く。
「先輩、今回起きた工場の事件覚えていますよね?」
「うん、あまり良い結果とはいかなかったけどね」
苦い顔してありのままを答える。
「思い出させるような言い方をしてすいません。私がもう少し先輩の力になっていれば、円滑に解決出来たはずでしたからね。それでも…」
「それでも?」
押し潰されそうな気持に負けず時光の目を見て真っ直ぐに自分の想いを伝える。
「先輩の隣にいて一緒に捜査がしたいのです。たとえどんなに厳しくても辛くても先輩ばかりに押し付けるようなことはしたくないのです!」
あまりの勢いに目を見開き固まってしまうが、気持ちを落ち着かせて恵に返答する。
「恵さんありがとう。今回の事件もそうだけど、まだこの先に待ち構える事件も間違いなく恵さんの力が必要になってくる。だから俺と一緒に解決していこう」
「はい。こちらこそ」
その様子を見ていた志穂と美穂がジトーッとした目を向けて訴える。
「「メグミちゃん」」
「はい?」
「「それ告白のつもりかな?」」
「っ!」
2人の意図を察して慌てて答える。
「わ、私は決してそういった意味で告白したわけではありませんよ!」
「志穂、美穂あまり意地悪するな、そこまでだ」
咄嗟にフォローするも今度は時光にジトーッとした目を向けて訴える。
「その割にトキちゃん満更でもない顔していたよね?」
「どういうつもりかな?」
2人の視線が厳しくなり、いくら言っても聞いてもらえないと思い時光は舞香に助けを求める。
「舞香さんこの2人の説得をお願い」
「時光クン、これくらいは自分で乗り切ってもらわないとね」
「そんな…」
藁にも縋る思いの時光を見て舞香は一言でスパッと切り離す。
「「さあ説明してもらうよ」」
「勘弁してくれ」
「時光クン、ファイト」
「先輩本当にすいません」
2人の追撃に音を上げそれを見て楽しむ舞香に、改めて時光に謝る恵であった。
「会議室で見てわかっていることが以上だよ」
本部の屋上で時光から話されたことを聞き舞香は複雑な顔をして短く答える。
「今の話を踏まえて、権藤さんを捕獲出来る割合はどれくらいと考えているかな?」
その質問に時光はすぐに答えられず少し間をおいて力量を考慮して答える。
「どんなに高く見積もっても五分がいいところだね。相手は間違いなく俺らよりも力のある人だから簡単にいかせてくれないだろう。でも…」
「でも?」
険しい表情から少しずつ緩んできたように見えて舞香は更に時光の言葉に耳を傾ける。
「ここにいる皆と一緒なら何とかなりそうだと思うから負ける気がしないよ」
「キミって人は」
心擽られた感覚がして舞香も自然と頬が緩む。
「根拠なしに言っているように聞こえたけど本当に勝算はあるの?」
「さあどうだろう。本音を言えば総監の任務に出向いているアイツの力を借りたいところだよ」
「時光クン、そこは自分を信じてついて来いって言い切ってくれた方が助かるなぁ」
「アハハッ。ごめん、まだまだ力不足なもので」
話しているうちに雰囲気はいつも通り穏やかになり冗談を交えつつある。
「普段話をすることはあるけど、改まって2人でゆっくり出来たのは久々だね」
「言われてみれば確かにそうだね。中途半端になってしまうことが多かったからね」
時光の言葉に舞香がやんわりと返す。
普段は途中で志穂と美穂が割り込んで時光に群がっては恵がそれを注意することが多く、落ち着いて話すことが出来なかった。
「昔と変わらず困ったことや苦しいことがあると、こんな感じだよね」
「それは言えているね」
「俺の方で、もう少し気の利いた話が出来ればと思っているけど、なかなか出来なくてごめん」
「ううん、気にしなくて大丈夫だよ。時光クンがいつも一生懸命なのはわかっているから。もう少し肩の力を抜いて自分を労うことも忘れないでね」
「そう言ってもらえると助かるよ。ありがとう」
「どういたしまして」
互いに穏やかに話を進ませると、舞香が何か思い出したようで時光に質問する。
「苦いことを思い出させるようで申し訳ないけど、恵ちゃんが医療機関に運ばれた後に本部に戻って彼との手合わせはどうだった?」
「ああ、その時ボロボロになった俺の姿を見た通りだよ。全くじゃないけど歯が立たなかったよ」
「そうだったんだ。そこまで…」
肩を竦めて感想を述べる時光に思わず息を飲むほどだった。
時光が弱かったのではなく、時光にそれほどの感想を言わしめる相手が強すぎたのだと解釈すると、時光が付け加えて述べる。
「それに利き腕ではない右手で相手をされたものだから、精神的に堪えたものはあったけど負けて気付かされたことの方が大きくてスッキリしたよ」
「それはまたどうして?」
理由をハッキリさせておこうと思い舞香は尋ねる。
「全然悔しくないと言ったら噓になるけど、自分に足りないものや大切なものを守り続けることで自分の在り方を証明することが出来るから。それに」
「それに?」
聞き返すと、時光は迷いのない目で舞香に答える。
「自分よりも強い人が高い壁となっているおかげで目標として頑張っていける、そんな気持ちにもなれるから」
「それなら私も遅れをとられないように頑張らないとね。すぐにおいていかれそうだから」
「舞香さんならそんな遅れをとられるようなことはないと思うけど」
「それでもだよ時光クン。困った時はよろしくね」
「ああ。俺でよければ」
そう話しているうちに自分たちに近づいて来る気配がして振り向くと勢いよく扉が開き時光に向かって来る。
「「助けてー!」」
「おわぁ!」
声を揃えて志穂と美穂が時光の胸元に飛びつき、2人を追ってきた恵の姿が見られた。
「志穂さん、美穂さん逃げないでください!練習になりません!」
時光に縋りつく2人に厳しい言葉が飛ぶ。
「恵さん、これは一体どういうことかな?」
察しはつくが時光は恵に詳しい状況を求める。
「先輩⁉お見苦しいところすいません!」
ハッと我に返り慌てて謝る。
「それはいいんだ。それで皆は何をしてここまで勢いよく来たのかな?」
「それは…」
恵が恥ずかしそうに答えようとすると、志穂と美穂がそれを遮り訴えるように時光に事情を話す。
「メグミちゃんが突然、私たちを引っ張り出して「トレーニングしましょう」と言ってきて最初から全力で向かってきて危ないと思って」
「その勢いに負けないようにと私たちもかかったんだけど、闘牛のように興奮してマズイと思って全力で逃げてきたんだ」
2人のそれぞれの感想を聞いた後に恵が気まずそうに口を開く。
「先輩、今回起きた工場の事件覚えていますよね?」
「うん、あまり良い結果とはいかなかったけどね」
苦い顔してありのままを答える。
「思い出させるような言い方をしてすいません。私がもう少し先輩の力になっていれば、円滑に解決出来たはずでしたからね。それでも…」
「それでも?」
押し潰されそうな気持に負けず時光の目を見て真っ直ぐに自分の想いを伝える。
「先輩の隣にいて一緒に捜査がしたいのです。たとえどんなに厳しくても辛くても先輩ばかりに押し付けるようなことはしたくないのです!」
あまりの勢いに目を見開き固まってしまうが、気持ちを落ち着かせて恵に返答する。
「恵さんありがとう。今回の事件もそうだけど、まだこの先に待ち構える事件も間違いなく恵さんの力が必要になってくる。だから俺と一緒に解決していこう」
「はい。こちらこそ」
その様子を見ていた志穂と美穂がジトーッとした目を向けて訴える。
「「メグミちゃん」」
「はい?」
「「それ告白のつもりかな?」」
「っ!」
2人の意図を察して慌てて答える。
「わ、私は決してそういった意味で告白したわけではありませんよ!」
「志穂、美穂あまり意地悪するな、そこまでだ」
咄嗟にフォローするも今度は時光にジトーッとした目を向けて訴える。
「その割にトキちゃん満更でもない顔していたよね?」
「どういうつもりかな?」
2人の視線が厳しくなり、いくら言っても聞いてもらえないと思い時光は舞香に助けを求める。
「舞香さんこの2人の説得をお願い」
「時光クン、これくらいは自分で乗り切ってもらわないとね」
「そんな…」
藁にも縋る思いの時光を見て舞香は一言でスパッと切り離す。
「「さあ説明してもらうよ」」
「勘弁してくれ」
「時光クン、ファイト」
「先輩本当にすいません」
2人の追撃に音を上げそれを見て楽しむ舞香に、改めて時光に謝る恵であった。
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