魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第2章 血の追求者

2-08:捜査・渋谷エリア

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「ふうっ、この人通りの多さ相変わらずだね」
「だねぇ、何とかならないかなぁ」
 渋谷エリアを回っている志穂と美穂、恐らく他のメンバーが回っているエリアよりも数多く注意レベルの人が観測されている。
 そのほとんどが自分たちと同じ年か4~5歳上の女性である。
『お疲れのところごめんね2人とも、若干の疲労感があるように見えるけど大丈夫?』
 念話で2人の安否を確認する真奈からだった。
「大丈夫も何もこのエリア搬送される人が多くない?」
「そうだよ。いくら何でもさすがにこの数はないよ!」
 2人して真奈に訴えかけるその姿はまるで好きなゲームを取り上げられた子どものようだった。
 その訴えに優しく宥める。
『都心だけあってさすがにこの数は滅入るけど無理しない程度でいいからね』
「「はーい…」」
 まだ不満があるだろうがこれ以上言っても仕方ないと諦める。
「そういえば他のエリアにいる皆はどうなの?」
「まさか私たちばかりがここまで嘆いているなんてことないよね?」
 ズズッと迫るような問いに真奈もさすがに答えづらかった。
『ええそのまさか、2人のエリアが今のところ圧倒的な搬送率よ。でも狙っているわけじゃないことだけは誤解しないでね』
「「そんなぁー!」」
 そんな盛大な嘆きの後だった。今までなかった奇妙な感覚が背筋をなぞる。
「「っ⁉」」
 2人はピタッと止まり呼吸を整える。
『2人とも何があったの⁉』
 僅かな動作で2人を見抜き事情を聞き出そうとするが数秒沈黙する。
 やがて2人は顔を合わせて頷き念話に切り替える。
『ねえマナちゃん、私たちから見て1~2km弱後ろに誰かいない?』
『まるで今到着して私たちの動きを観察しようと、それもあまり良い意味じゃなくて』
 その言葉に真奈が聞き覚えのある思いをそのまま伝える。
『そういえば時光も似た感じのことを言って修助に索敵を頼んでみたけど危険に至るか今のところハッキリわからなかったそうよ』
『それ絶対危ないよ!』
『間違いなくいたよ!』
 フワッとして確証が持てなかった時光に対して、自信ありありと答えてみせる2人の答えに落差があった。
 これには真奈も判断し難いものだった。
『2人の気持ちは痛いほど伝わるけど、仮にもし言っていることがあっていたとしても人通りの多いこの状況で騒動を起こしたら間違いなく被害が壮大なことになるかもしれないけど、それでもいいの?』
 半分脅しをかけたような言い方をするが事実、騒ぎを起こしたところで余計に解決から遠ざかることには間違いない。
 2人ともそれはわかっている。
 しかしわかっていて指をくわえて事態が起こるのを待ってから動いているようでは時として取り返しのつかないことも生じる事例を多く見てきているため、匙加減が難しいところである。
『わかったよ。でもいつまでも泳がせるわけにもいかない状況であることは忘れないでね』
『自分が思う以上に現状がひっくり返って、出来たことが出来なくなる怖さ、オペレート室で観測しているよりも惨い現実を見させられることもそうだからね』
 2人してこれまでにはない本気の切れのある言葉で真奈を問い詰める。
 さすがにこの言葉を受けて何も言えなくなったのか、真奈の代わりに修助が切り出す。
『2人の気持ちは最も。未然に防げるようであればそうするのが最善だと俺も考えている。しかしそれを全部こなすのは無理があり過ぎる。如何に魔力が高くても技術が優れていても俺たちは人間だ。命を落としてしまい何も出来なくなってしまってはそれこそ悲しみしか生まれてこない。そうならないためにも互いの考えを喧嘩させないように練り上げていくことが最大限の力だと思っているよ』
 少し長く語られた修助の言葉に自分たちの言動に気付かされる。
『ごめん少し言い過ぎた。自分勝手だったね』
『私も、何も悲しいのは自分たちだけじゃないよね』
 2人はうつむきながら言うと、
『志穂ちゃん、美穂ちゃん下を向くには早すぎるよ。まだ捜査が始まったばかりで情報が少ない中で動いているから気に病むことなんてないよ。今後について皆と話して固めていけば落ち着いていけるから。ね?』
 綾菜が優しく諭すようにすると、2人は顔を少しずつ上げて調子を取り戻す。
『『ありがとうアヤナちゃん』』
 気持ちが穏やかになったところに後ろから肩をポンッと触れられる。
「もしお嬢さんたち、何か困りごとでもありますか?」
 外見は舞香よりも背丈が少し高く肩よりも長めのつややかな黒髪で少し垂れ目ではあるがパッチリと目をした女性が2人の前に立っている。
 何処か行事に出向いていたのか、クリーム色の着物姿は性別問わず注目を集めていた。
「い、いえその少し喧嘩みたいなことをしてしまって…」
「はい、そのことで落ち込んでいた感じで…」
 あまりの姿に無意識に力が入ってしまう志穂と美穂に着物の女性は口元に手をあて上品に笑う。
「フフッ。そんなに畏まらなくて大丈夫ですよ。答えづらいことでしたら無理に言わなくていいですよ」
 何度見ても気品溢れる挙動に2人は言葉を失い見惚れてしまう。
「あの、私の顔に何か?」
「「す、すいません。失礼しました!」」
 口を揃えて慌てて謝る2人である。
 そんな2人を見て着物の女性が尋ねる。
「仲がよろしいのですね。いつもお二人で一緒にいるのですか?」
 その質問に照れながら答える。
「そうですね。何かと楽しいことをする時は美穂と一緒にいることが多いです」
「私も志穂と一緒になってやる時間が長いです」
「そうでしたの」
 羨ましむ眼差しで2人を見る姿も絵になっている。
「あの、お姉さんは何方かお出かけにでも行っていたのですか?」
 志穂が尋ねると、
「ええ、友人の祝宴会に出席していたもので慣れない着物でしたが良かったですよ」
 ニコッとやんわりと答える。
 ここで時間になってしまい2人に別れを告げる。
「そろそろいいお時間で盛り上がっているところ申し訳ありませんが私はここで。お話ありがとうございました」
「「いえ、こちらこそ」」
 着物の女性は丁寧にお辞儀してその場を後にする。
 2人はその後ろ姿を見送った後で互いに思ったことを言う。
「綺麗だったね」
「うん。親戚にいたら自慢出来るね」
「それ思った」
 2人はドップリ夢心地の気分になった。

 
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