魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第2章 血の追求者

2-14:蝕み始める新薬

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「さすがにこれ以上続けても数が多すぎてキリがないですね」
 エリアを拡大して捜査していた怜司がインカムを通して総矢と朱実に呼びかける。
『そうだな。それにさっきから搬送される人のペースが増えてきているのは気のせいか?』
 今までの捜査を通して感じてきたことを口にすると朱実が答える。
『気のせいではありませんよ岩方警視長。少なく見積もっても1・5倍速のペースで搬送されていますよ。このままのペースが続けば医療機関がパンクします』
 怜司の提案により拡大したエリアに朱実の設置魔法によって人々の搬送率が観測されるように簡単な数値で見たところ時間が経つにつれて増加している。
「岩方警視長、朱実さん、お二人に聞きます。明日も本日同様に捜査を続けるか、別の路線で街中にいる人々にこのような目に遭わせている首謀者を探すか、その考えをお聞かせ願えますか?」
 自分でも無茶苦茶なことを言っているとわかっていつつも判断を間違えてしまえば罪のない人たちの命を落とすまでもないが精神的ダメージが大きくなることを考えている。
『簡単に言ってくれるな。そんなすぐにホイホイ答えなんか出せはしない。考える時間がいるから待ってくれ』
『私も岩方警視長に賛成だよ。考える時間が欲しいから』
 強めに訴える2人に対して申し訳なく思い感謝する。
「2人ともありがとうございます。待っています」
 2人の考えがまとまるまで怜司も考えを整理する。
 これまでを通して今回の一連の流れは自分たちの組織を潰しにかかることが大前提にあり、それに至るまで罪のない一般の人々に予防注射という大義名分で薬の投与をした。
 投与された人々に副作用は見られるものの極端に命に関わる情報は今のところ出ていないようであること。
 年齢層を見ても20~30代の女性を中心にその効果と経過観察をしているようにも考えられる。
 何故その年齢層なのか、自分の中で想定外が起きたとしても対処出来る相手を選んで事故、事件いずれが生じても最小限に止めておきたいのだろうと推測出来る。
 目的はこの薬の効果で得た結果を何に扱っていくのか、最終的な使い道とは何か、着眼点をそこにあて深く考える。
(確か似た事例があったような…)
 怜司は頭の隅に置いていた記憶を辿り慎重に探る。
 40代前後の男性が仮釈放される際に注射による薬を投与をされ経過観察が行なわれた。
 それが行なわれた途中の出来事で突然、異変が起きて救急搬送されてすぐに長時間に及ぶ手術に臨むも結果として男性が亡くなってしまった。
 つたなくも辛うじて繋がった線に一つの仮説が浮上する。
(もしこれが改良されて現実になったりしたら!…)
 確信に近い答えが降りかかった時だった。
『怜司考えがまとまったから話すけどいいか?』
「ええ、どうぞ」
 内心焦っていることが総矢に悟られないように応答する。
『結論から言って明日も今日と同様に捜査を続けた方が一般の人の被害を最小限に防げるだけではなく今回裏で糸を引いている者の計画を崩せることくらい出来るかもしれないからだ』
「確かにそれは理に適っていますね。今日やっていた捜査が手薄になったところに隙が出てしまうことに懸念しているという解釈で間違いないですか?」
 怜司の的確な指摘に答える。
『ああそうだ。首謀者の方は森園君たちに任せるしかない。翌日になって俺たちが取りかかる捜査の方が今日の様子を見ていたら悪化している可能性が高い。そう考えると2つ同時の捜査は思った以上に厳しくなることが想定されそうだからな』
 その言葉に続いて朱実の方も結論がまとまり怜司に伝える。
『怜司君、私の方もいいかな?』
「うん、いいよ」
『岩方警視長の意見に私もほぼ同意見だけど、起きて欲しくないことが想定される前に手を打っておきたいことがあるからその考案を今からインカムに転送するよ』
 朱実の得意とする設置魔法によりインカム内にデータが送られてきた。
 真奈が得意とする精神念話とはまた違ったアプローチで精密性が優れている。
 改めて早速怜司と総矢はインカムを人差し指でトントンとタッチして内容を確認する。
 脳裏の中に流れ込んでくる内容の前半部分は総矢が言っていた内容と同じで後半部分を確認し終えて2人の背筋がゾッとした。
「朱実さん、これ本当になったらかなり厄介だよ」
『これは確かにおろそかにしていたことだった』
 2人の苦い感想に朱実は続けて伝える。
『あくまで私個人の考えだけど送った内容が現実となった時が解決により一層厳しくなることじゃないかと。今の私たちにとって言うまでもなく八方塞がりに近いです。大げさな言い方になるかもしれませんが、ここが大きな一つの賭けになるかと思われます』
 しばらく2人は言葉に詰まるがやがて、
「賭けか…。ではその賭けを持ってして相手の好きな土俵で臨むとしましょうか。当然こちらとしてはやりづらさしかありませんが、その中でも自分の優位に立てる要素が含まれているかもしれません。それを利用して今回の騒動を抑えていきましょう」
 怜司の無茶苦茶な発言に総矢が呆れ気味に言う。
『あのなあ一歩間違えれば命を落としかねないことを理解して言っているのか?』
「もちろん。そうでなければこのことは言っていませんよ」
 真っ直ぐにそう伝えると総矢も腹をくくり気持ちを伝える。
『わかったよ。この際とことん付き合ってやるよ。ただし自分以外で周囲に危険が及び被害が拡大しそうな状況だったら単独での阻止ではなく俺たちに伝えること。いいな?』
「はい。その時は力をお借りします」
『神城さんもそれでいいかな?』
『はい。それでお願いします』
 こうしてこの日の捜査を終え翌日に備えてあらゆる可能性を考慮した動きの確認を徹底したのであった。
 
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