魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第2章 血の追求者

2-15:VS東雲菫 パート1

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 昨日に引き続き捜査に臨むメンバーたち。
 状況悪化を想定して変更点を上げるとするならば、まず綾菜と歩果は早朝から医療機関に行って絵実の支援という流れをとっている。
 搬送される人の数が思っていた以上に多く、それ以上のペースで増加すると治療するペースが追い付かなくなるだけではなく、絵実の負担もそれに応じてのしかかってくることが目に見えているため、少しでも医療機関にかかる負担を軽減させる目的でもある。
 また症状が軽い人には医療機関ではなく救急医療シェルターという医療機関ほどではないが、その場所に向かわせるように伝達してある。
 そのシェルターにも絵実に近い医療技術を持つ人を配置している。
 捜査するメンバーの方で時光は変更なしで吉祥寺エリア、新宿エリアに舞香、渋谷エリアに恵とそれぞれ一人で捜査する流れとなった。
 その理由として志穂と美穂から今の自分たちが捜査に参加したのでは足を引っ張ると申告してきたため、その2人はオペレート室から各エリアの様子を観察する形をとっている。
 不測な事態はもちろん、自分たちに出来る最大限の対応を用意して遅れをとらせないため準備を整えてきた。
 気にしていないと言えば嘘になるが志穂と美穂の2人が数分の間とはいえ菫との関係に何があったのか、2人の気持ちが普段より沈んだ原因についてもメンバーはわからない状況である。
 そのことばかり考えているわけにもいかないので捜査に集中しようと思った矢先に真奈からの念話が来る。
『時光、言われずとも薄々感じ取っているかもしれないけど悪い知らせよ』
『ああ、どうせ昨日よりも注意レベルになっている人が増えているんでしょ?雰囲気でひしひしと伝わってくるのがわかるよ。それでどのくらいの割合で悪化しているの?』
 その問いに苦い口調で答える。
『少なく見積もっても半数、下手すれば7割弱の人が注意レベルを観測しているよ。また1割強が警戒レベルに達していることも事実よ』
『なんだそれ⁉』
 思わずツッコミを入れる時光に、続いて修助から念話が来る。
『時光くんのところだけではなく、舞香さんや恵さんのエリアも吉祥寺エリアと同じくらいの割合でやられているよ。まるで相手はこちらの動きに合わせて先を見越している感じだね』
(一体どれだけ手札があって達観しているんだ⁉)
 内心そう呟き少しずつ焦りが滲み出てきている。
 自分たちに出来る最大限は相手から見て「最小限」、進行して「標準」という感覚なのだろう。
 まだまだ手の内を全部見せていない間は余裕があり、その気になればすぐにでも時光たちに襲撃出来ること、また周囲にいる一般の人を巻き込ませて時光たちに何らかの方法で足止めをさせることだって可能だろう。
 余程自分にとって不都合なことが起きない限り、止めることが非常に難しくなることが容易に想像出来る。
『色々考えているところだけど相手が現れて来ない以上、立ち止まっている間にも道行く人の説得をお願い出来るかしら?』
『わかった』
 真奈が念話で時光にそう伝えると警視庁の方で手配した捜査官たちに混ざって警戒を維持しつつ説得を始める。
 根本的にそもそも現れる保障がなければ何故このような事態を起こしたのか追求することも出来ない。
 更に掘り返してみれば事態を起こしたきっかけ、動機に該当する部分も今もハッキリしていないのも事実である。
 説得していて聞き入れる人がいれば、抵抗する人もいれば、説得している間に喧嘩が勃発しそうな事態と、昨日とは違って少しずつ滲み出てきている。
 説得を続けて数十分経とうかとするところ、
(本当に現れてくるのだろうか…。それとも…)
 集中が切れて諦めかけたその時だった。
「っ!」
 昨日に感じた気配と同じだった。
 今度は後ろからではなく前から昨日よりも濃く読み取れて目を凝らして見るとそこには、
(いやまさかこんな形での登場とは…)
 思いもよらない出現に焦るが、取り乱すことなく構えを取る。
『時光、何があったの?』
 応答しない時光の目線の先をオペレート室にいる真奈が画面を拡大して見るとそこにいたのは東雲菫だった。
 高等部だった時と比較して姿こそあまり変わりはないが成人の女性という雰囲気がビシビシ伝わってくる。
 志穂と美穂に会った時の着物姿ではなく今はクリーム色のジャケットに白いシャツとやや長めのソリッドの入っているミントグリーンのスカート姿である。
 道行く人々の中に紛れ込んでその場から動く気配が今のところない。
 涼しい顔して余裕ある態度で時光の出方を伺っている様子である。
 対して時光も菫がどう仕掛けてくるのか構えをとって牽制する。
 達人の時とはまた違った緊張感がその場を支配している。
 達人の時はジワリと押し込めつつ不気味な勢いであったが、菫の場合は足の裏にワイヤーで括りつけられて動けない感覚である。
(さてどうするか…。人も多いし下手に騒ぎを起こすわけにもいかない…)
 僅かながら目だけで確認出来る範囲で時光は周囲を見て考えをまとめようとする。
 無意識に力が入ってしまいジリッと前に足を踏み込んでしまった瞬間だった。
「っ!」
 目の前から菫の姿がフッと消えてしまったのである。
(しまった!…)
 ここへきて焦りと動作が大きくなり菫を探すが、なかなか見つからないと思った時だった。
『時光後ろ!』
 念話で真奈が叫ぶように伝えると即座に後ろを振り向くと、何事もなかったかのように菫が立っていた。
 それだけではなく15~20メートルあった距離のところを10~15メートルと距離を詰めて時光に近づいてきたのである。
 時光は更に警戒を高め構えを取り、対して菫はコツコツと歩き5メートル前後のところで止まり間合いを測る。
 時光から切り出そうとするよりも先に菫から先手を打つように話かける。
「そのご様子ですと私のことは既に存じているようですが、改めて東雲菫と申します。お見知りおきを」
「ご丁寧に、森園時光です」
 互いに自己紹介から入りそれから時光が遅れをとられないように切り返す。
「単刀直入に伺います。東雲さん何故今回このような騒動を起こしたのですか?」
 その質問にやんわりと返す。
「さあそれも既に想像出来ているのでは?」
「いいえ、ご自身の口から説明していただきたいのですが何か不都合なことでもあるのですか?」
 逃さないように包囲網を張るように問いかけると、菫はフウッと軽く息を吐き答える。
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