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第2章 血の追求者
2-18:VS東雲菫 パート4
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以前に達人の捜査をしていた時に廃棄工場を壊しまわっていた大山と野口が服用していた「筋力増強薬」というものとは異なる薬品である。
その薬品は違法薬に該当することで使用禁止になっているが、菫の服用している薬品がそれにあたるか、医療を専門としていない時光たちからしてみれば不明である。
「そう話をされていますが、危険な薬品だと判明すれば違法薬に分類されるのでは?」
「そもそも根本的に安全性が保障されていない薬品を投与すること自体が危険だと改めて思うのですが、どう解釈されているのですか?」
時光が切り込むように追求すると、続けて恵が捲し立てるように訴えると菫が反論する。
「森園さんに繰り返し申し上げますが、新薬というのは年数以上に完成するまで時間がかかるものです。危険性があるかそうでないか、ヒトや動物に投与することで初めて目に見えて結果が得られるものです。それに既存の薬や新薬問わず「安全性」なんて医療に携わる方でも判断が難しくなることがあります。確かめる術として今も現実的なやり方としてヒトや動物に投与して結果を見る他ありません。それをなしに一体どうやって「安全性」を確かめろと言うのですか?」
「そ、それは…」
最後あたりの言葉から恵を睨みつけるように言うと、恵は言い淀み何も言い返せなくなった。
その様子を無視して話を続ける。
「まあ別に話をした方全員に理解しろとは言いませんし、求めてもいないです。ただ誤解なさっている方が多いので間違った解釈をして欲しくないと考えています。それがたとえどんな薬品であっても!」
その瞬間にまた小瓶に入った少量の血と透明の薬品を取り出し、それを混ぜ合わせて地面に垂らし込んだ。
ものの数秒で魔法陣が描かれ今までよりも強く手をパンと合わせる。
時光たちが不信に思っているうちに、
「こ、これは!…」
「くっ!頭が!…」
時光と舞香が少しずつ苦悶の表情になり構えが崩れていく。
その隙を逃さず飛び交う鳥の形をした包帯の攻撃が迫る。
「先輩!舞香さん!」
もろに攻撃をくらう時光と舞香の援助に恵が入る。
「おや、「鈍痛誘導薬」をくらって立っていられるとは妙ですね。一体どのような訓練をされているのですか?」
菫が不思議そうに尋ねると恵が警戒心を緩めず突き放す口調で答える。
「さあ?それは自分で考えたらどうですか?強いて言えば少なくとも特別な訓練をしているわけでもなく、ただ幼少期に事故で大怪我した時にその行院先で治療していただいた以降、これといった怪我や病気にかかっていないだけです」
その答えを聞いた上でも菫は腑に落ちない様子である。
「だとしてもそれだけでは立っていられないはず」
「しかしこうして立っている以上それが事実です。諦めてください」
話に付き合うことなくスパッと切り落とすように恵が言うと菫はあっさりと引き下がる。
「不本意ですがまあいいでしょう。2人の動きを封じただけでも随分とやりやすくなりました」
菫からしてみれば1人に集中出来る状況になり、恵からしてみれば更に追い込まれた状況となる。
また周囲に僅かな靄がかかったような、それでいて空気も少しずつ重くなっていくことが感じられた。
その証拠に時光が負っている左腕の怪我もジワリと血が大きく滲み片膝ついて頭を抱え、舞香は苦しそうに息を切らして胸を抑え痛みを堪えていることが伝わってくる。
(早めに片付けないことにはマズイですね…)
現在3人でかかっても決定打を与えることが出来ていない一方で菫は連続攻撃で3人を翻弄し確実にダメージを与えている。
達人のような一撃必殺級の派手な技はないがその分、道具の組み合わせで状況を自分のものにしている。
「さて中野院さんでしたね。貴女にも個人的な恨みはありませんが、やられていただきますよ。私の計画を妨げるようであれば尚更」
「それを言われて素直に従う私ではありません。貴女こそ、これ以上周囲に被害を拡大するようであれば全力で止めます」
2人が宣言すると間を空けずほぼ同時に仕掛ける。
「涼静水鳥障壁!」
ここへ来て恵が初めて先制を取ることが出来て鷲の如く大きな水の鳥を召還すると同時に自分を含め時光と舞香の周囲に水の壁を展開させる。
この比較的大きな技には菫も手は出せず飛んでいる包帯の鳥で大きな水の鳥を牽制するように様子を見る。
「さあどこまで耐えられるか見させていただきますよ!」
念を込めて包帯の鳥の攻撃速度と威力を高める。
その攻撃を迎え撃つ水の鳥も負けず叩き落とす勢いで攻撃を仕掛ける。
資質の違う鳥同士の空中戦が繰り広げられている中で恵は菫に直接攻撃を狙うタイミングを見計らっている。
しかしその菫は水の本質を確かめ、ある程度自分の中で把握した途端に目に止まらない速さで動き水の壁を削りにかかっている。
(っ!…このままでは…)
自分が思っている以上に壁の削りが早く、恵が対応に焦る。
展開された水の壁が決して脆いわけではなく、菫の仕掛けて来る攻撃が凄まじすぎるため恵の力が追い付いていないのである。
次の手をどうするか考えているところで、
「これで終わりです!」
「っ!」
道が開けてしまい間合いを詰められるが水の鳥が急ぎ援護に入る。
勢いよく菫を吹き飛ばし形がなくなってしまう間に恵は後方に凌ぎ、
「水落騎針!」
無数の水の針を菫に向かって降り落として動きの止めにかかる。
菫も態勢を崩されながらも躱し続ける。
隙が出来てまた距離を詰めて菫が攻めに入ろうとした時だった、
「っ!」
菫の表情が僅かに歪み動きもピタッと止まってしまった。
恵はその瞬間を見逃さなかった。
「水聖真空砲!」
先ほど放った砲丸サイズよりも一回り小さい弾丸だが、威力を凝縮して菫に放つ。
必死に躱し急所は免れたものの攻撃を受け後方に飛ばされる。
「くうっ!…まさかこんなことが…」
思ってもいなかった出来事に菫は整理することが出来ず苦しみながら困惑する様子である。
今までの戦況としては自分が優位に立ち時光たちに隙を与えず主導権を握っていたはずが、ここに来て立場が逆転したのである。
「流除至水!」
菫の動きが鈍っているうちに描かれている魔法陣を洗い流すように消し、少しずつ靄が解消すると同時に時光と舞香の状態も元に戻る。
「恵ちゃんありがとう。よくやってくれたよ」
「本当に助かった。1人で本当に頑張ったね」
「はい」
舞香と時光に労われると安心して短く返事する。
その薬品は違法薬に該当することで使用禁止になっているが、菫の服用している薬品がそれにあたるか、医療を専門としていない時光たちからしてみれば不明である。
「そう話をされていますが、危険な薬品だと判明すれば違法薬に分類されるのでは?」
「そもそも根本的に安全性が保障されていない薬品を投与すること自体が危険だと改めて思うのですが、どう解釈されているのですか?」
時光が切り込むように追求すると、続けて恵が捲し立てるように訴えると菫が反論する。
「森園さんに繰り返し申し上げますが、新薬というのは年数以上に完成するまで時間がかかるものです。危険性があるかそうでないか、ヒトや動物に投与することで初めて目に見えて結果が得られるものです。それに既存の薬や新薬問わず「安全性」なんて医療に携わる方でも判断が難しくなることがあります。確かめる術として今も現実的なやり方としてヒトや動物に投与して結果を見る他ありません。それをなしに一体どうやって「安全性」を確かめろと言うのですか?」
「そ、それは…」
最後あたりの言葉から恵を睨みつけるように言うと、恵は言い淀み何も言い返せなくなった。
その様子を無視して話を続ける。
「まあ別に話をした方全員に理解しろとは言いませんし、求めてもいないです。ただ誤解なさっている方が多いので間違った解釈をして欲しくないと考えています。それがたとえどんな薬品であっても!」
その瞬間にまた小瓶に入った少量の血と透明の薬品を取り出し、それを混ぜ合わせて地面に垂らし込んだ。
ものの数秒で魔法陣が描かれ今までよりも強く手をパンと合わせる。
時光たちが不信に思っているうちに、
「こ、これは!…」
「くっ!頭が!…」
時光と舞香が少しずつ苦悶の表情になり構えが崩れていく。
その隙を逃さず飛び交う鳥の形をした包帯の攻撃が迫る。
「先輩!舞香さん!」
もろに攻撃をくらう時光と舞香の援助に恵が入る。
「おや、「鈍痛誘導薬」をくらって立っていられるとは妙ですね。一体どのような訓練をされているのですか?」
菫が不思議そうに尋ねると恵が警戒心を緩めず突き放す口調で答える。
「さあ?それは自分で考えたらどうですか?強いて言えば少なくとも特別な訓練をしているわけでもなく、ただ幼少期に事故で大怪我した時にその行院先で治療していただいた以降、これといった怪我や病気にかかっていないだけです」
その答えを聞いた上でも菫は腑に落ちない様子である。
「だとしてもそれだけでは立っていられないはず」
「しかしこうして立っている以上それが事実です。諦めてください」
話に付き合うことなくスパッと切り落とすように恵が言うと菫はあっさりと引き下がる。
「不本意ですがまあいいでしょう。2人の動きを封じただけでも随分とやりやすくなりました」
菫からしてみれば1人に集中出来る状況になり、恵からしてみれば更に追い込まれた状況となる。
また周囲に僅かな靄がかかったような、それでいて空気も少しずつ重くなっていくことが感じられた。
その証拠に時光が負っている左腕の怪我もジワリと血が大きく滲み片膝ついて頭を抱え、舞香は苦しそうに息を切らして胸を抑え痛みを堪えていることが伝わってくる。
(早めに片付けないことにはマズイですね…)
現在3人でかかっても決定打を与えることが出来ていない一方で菫は連続攻撃で3人を翻弄し確実にダメージを与えている。
達人のような一撃必殺級の派手な技はないがその分、道具の組み合わせで状況を自分のものにしている。
「さて中野院さんでしたね。貴女にも個人的な恨みはありませんが、やられていただきますよ。私の計画を妨げるようであれば尚更」
「それを言われて素直に従う私ではありません。貴女こそ、これ以上周囲に被害を拡大するようであれば全力で止めます」
2人が宣言すると間を空けずほぼ同時に仕掛ける。
「涼静水鳥障壁!」
ここへ来て恵が初めて先制を取ることが出来て鷲の如く大きな水の鳥を召還すると同時に自分を含め時光と舞香の周囲に水の壁を展開させる。
この比較的大きな技には菫も手は出せず飛んでいる包帯の鳥で大きな水の鳥を牽制するように様子を見る。
「さあどこまで耐えられるか見させていただきますよ!」
念を込めて包帯の鳥の攻撃速度と威力を高める。
その攻撃を迎え撃つ水の鳥も負けず叩き落とす勢いで攻撃を仕掛ける。
資質の違う鳥同士の空中戦が繰り広げられている中で恵は菫に直接攻撃を狙うタイミングを見計らっている。
しかしその菫は水の本質を確かめ、ある程度自分の中で把握した途端に目に止まらない速さで動き水の壁を削りにかかっている。
(っ!…このままでは…)
自分が思っている以上に壁の削りが早く、恵が対応に焦る。
展開された水の壁が決して脆いわけではなく、菫の仕掛けて来る攻撃が凄まじすぎるため恵の力が追い付いていないのである。
次の手をどうするか考えているところで、
「これで終わりです!」
「っ!」
道が開けてしまい間合いを詰められるが水の鳥が急ぎ援護に入る。
勢いよく菫を吹き飛ばし形がなくなってしまう間に恵は後方に凌ぎ、
「水落騎針!」
無数の水の針を菫に向かって降り落として動きの止めにかかる。
菫も態勢を崩されながらも躱し続ける。
隙が出来てまた距離を詰めて菫が攻めに入ろうとした時だった、
「っ!」
菫の表情が僅かに歪み動きもピタッと止まってしまった。
恵はその瞬間を見逃さなかった。
「水聖真空砲!」
先ほど放った砲丸サイズよりも一回り小さい弾丸だが、威力を凝縮して菫に放つ。
必死に躱し急所は免れたものの攻撃を受け後方に飛ばされる。
「くうっ!…まさかこんなことが…」
思ってもいなかった出来事に菫は整理することが出来ず苦しみながら困惑する様子である。
今までの戦況としては自分が優位に立ち時光たちに隙を与えず主導権を握っていたはずが、ここに来て立場が逆転したのである。
「流除至水!」
菫の動きが鈍っているうちに描かれている魔法陣を洗い流すように消し、少しずつ靄が解消すると同時に時光と舞香の状態も元に戻る。
「恵ちゃんありがとう。よくやってくれたよ」
「本当に助かった。1人で本当に頑張ったね」
「はい」
舞香と時光に労われると安心して短く返事する。
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