色呆リベロと毒舌レフティ

雪銀かいと@コミックシーモア連載中

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 第一章 予定外の共闘@チーム振り分け試験

3話

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      3

 チーム・メンバーの読み上げが終わり、チームごとのミーティングが始まった。円になっての集合後、未奈ちゃんの命令で、俺たちは各々のサッカー歴を語っていった。
「ふーん。ちょっとマシな人で関トレの落ち零れかぁ。低レベルなチームに入っちゃったわねー。まあその分対戦相手が強いわけだから、楽しいっちゃあ楽しいんだけどさ」
 細い目で詰まらなさそうに毒突く未奈ちゃんに、空気が殺伐とし始める。俺の隣の奴なんか歯軋りまでしてるし。
 未奈ちゃんの口の悪さは想定外だ。だけど初日からの邂逅に加えて、チームまで同じなんて、運命の女神が微笑んでるとしか思えんね。
 古代ギリシャっぽい服装の未奈ちゃんの精巧なイメージを描いていると、耳に可愛らしい溜息が飛び込んできた。
「ま、あんたたちのチーム振り分けとかはどーだっていいんだけど? せっかく来てやった私に、無駄な時間だったって思わせないようにだけはしてよね。以上、終了。ほーら、散った散った」
 あっけらかんと言い放った未奈ちゃんは、蝿を追っ払うように右手を振った。俺たちは、もそもそと動き始める。
 チーム未奈は、全体の一試合目は休憩だった。
 試合で身体が動かなくなるので、軽くリフティングしていると、「ワラジモーン、ボールをちょうだーい」と、綺麗だが詰まらなさげな声が、前から聞こえた。
 リフティングを止めて顔を上げると、未奈ちゃんが俺の足元を見ていた。眼差しは依然として冷めている。
「……ワラジモンって俺? デジモンと妖怪のハーフみたいな渾名だけど、その心は?」
 自分を指差しながらゆっくりと尋ねた。
 腰に手を当てた未奈ちゃんは、何、当たり前のことを訊いてんの? と言わんばかりの面持ちになる。
「二足の草鞋の半端もんだから、縮めてワラジモン。なんか文句ある? 私、優しいからさ。一応、聞いたげる。たーだーし、二十字以内に纏めなさいよ」
 二十っすか? そりゃあ、ずいぶんな無理難題っすね。もしかして、かぐや姫の生まれ変わりだったりするのかい? 容姿的には、じゅーぶん納得がいくけどさ。
 俺は名誉挽回をすべく、声を大にして主張を始める。
「草鞋ってーとどーにも素朴な感じだよね。いや、俺をデジモンでたとえるなら、ウォーグレイモンとかオメガモンとか、もっと高貴な……」
「はーい。二十、超えたー。あんたの渾名はワラジモンでけってー」
 未奈ちゃんは口振りこそ愉快げだけど、顔はまったく笑っていない。
 会話の流れを呼んで表向きは黙り込む俺だったが、ひそかにテンションは上がり始めていた。
 未奈ちゃん。さっきの自己紹介で、俺の経歴だけはちゃんと記憶してくれてたんだね。大丈夫。俺はわかってるから。半端もんだなんて悪口が、愛情の裏返しってことぐらい。
 俺は、未奈ちゃんにパスを出した(もちろん、ありったけの愛を籠めて)。左で止めた未奈ちゃんは、すぐさまイン・サイドで蹴り返してきた。そのまま、俺と未奈ちゃんとの間で初めての共同作業、もとい、パス交換が続く。
 未奈ちゃんのタッチはとにかく柔らかい。ときどき俺のパスを足の内側で引き摺るように引いて身体の後ろを通し、逆足に持ち変える。男子の誰にも真似できないってぐらい動きがスムーズだ。
 十往復ほどパスが続いた。ボールを止めた未奈ちゃんは、「ちょっとストップ」と、俺たちのすぐそばのコートの試合を見始めた。俺もそちらに注目する。
 左ライン際の黄色ビブスの6番が、フェイントを掛けてボールを縦に持ち込んだ。
 相対する緑ビブスの3番は、素早く反応。身体をぶつけて6番を吹っ飛ばしてからボールを確保し、大きく前に蹴り出す。
「ね、ワラジモン。あの3番ってどーゆー奴か、知ってる?」
 興味深げな未奈ちゃんは、俺をまっすぐに見ながら緑ビブスの3番を指差した。力強く輝く瞳はさながら、新作ゲームを買ったばかりの小学生のようである。
諏訪薫すわかおるだよ。最近は呼ばれてないけど、中一の時にはナショナル・トレセンの候補にもなってたはず。スピードは平均的だけど、ディフェンス能力には定評があるって話だよ」
「へー、いいじゃんいいじゃん。チーム分けはがっかりだったけど、ちょっとは来た甲斐があったわね。どう潰してやろっかなー。ぱっと見、メンタル豆腐っぽいし、一発目でかましとけば案外チョロかったりしてねー」
 諏訪とマッチ・アップするだろう左ウイングの未奈ちゃんは意地悪い笑みを浮かべた。パワフルな眼差しに、俺は目を奪われる。
 俺は、こういう時のスポーツ女子に超惹かれる。競技に没頭する顔は、他のどんな表情より美しい。
「よし、再開」と、俺に向き直った未奈ちゃんがボールを蹴ろうとする。そこで、後ろからがやがやと声が聞こえてきた。
 振り返ると、竜神、と胸に文字のある水色のジャージを着た十五人ほどの生徒が校舎のほうから歩いてきていた。皆、体格が良く、スポーツ選手に特有の威圧感を醸し出している。
 俺たちが、「こんにちは」と、ばらばらに挨拶すると、先頭の人がこちらに向かって軽く手を挙げた。
「Aチームのお出まし、か。ま、今のうちにデカい顔してなさいよ」
 力強い声色で呟いた未奈ちゃんは、今度こそ俺にパスを出した。
 Aチームの先輩たちは、マネージャーが用意したベンチに座り、俺たちの試合を見始めた。
 俺と未奈ちゃんは先輩たちの後ろで、短い距離でのパス交換をし続けた。未奈ちゃんの顔付きはどんどん鋭くなり、試合に向けて集中を高めている様子だった。
 先輩たちは、ほとんど動かずに新一年生の試合を観戦していた。が、時折、周りの人に何かを告げたりもしていた。
 新一年生を品定めしているのだろう。高校のサッカー部って感じがしてきたね。
 試合終了を告げる笛が鳴り、新一年生は移動を始めた。次は、俺たちチーム未奈も試合がある。
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