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燃え上がり連鎖する絶望と、眩しくも醒めぬ眠り
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アーミリム大陸の西部、ゲッヘン丘の奥い位置するガーゼンテンル巨大集合墓地。
異世界転生者タケルによってアンデットの王国となっていた墓地の地下深くの巨大な空間。
そこは、許可された者以外が入れぬようにタケルのスキルによって隠蔽されていた。
おまけに、地下から地上までの高さゆえ、分厚い土や石の層で天井が覆われている…はずだった。
今や、天井は瓦礫となって崩れ去っていた。
天井に空いた穴から後光を背にした人外が、宙に浮いて見下ろしていた。
それは、”光の悪魔”と名乗った。
「契約…だと…?」
「そうだ、悪魔の契約だ」
タケルと悪魔が対峙する。
周りの者達は固唾を吞んで見守る。
光の悪魔、明光はパーカーの喉元の紐を片手で弄りながら続けた。
「貴様の願いを叶えてやる。代わりに服従を誓え」
命令をするかのように明光は言い放った。
その物言いに、周りのアンデット達が殺気立つ。
特に幹部の4人は戦闘体制に入るほどだった。
「願いに服従だと?いよいよもって意味が分からんぞ?」
タケルの言葉に明光は溜息をついた。
そしてやれやれと首を左右に振るった。
「この世界においてお前は神を殺せる可能性を持った存在…だから声をかけた」
神…という言葉にタケルは反応した。
「…お前は神…女神ラーフェラに恨みがあるようだな…女神への復讐に協力してやる」
明光の着たパーカーの被ったフードの中で三つの眼が怪しく光った。
その眼を細めると、明光は続けた。
「復讐の協力の代償として、お前達には我ら悪魔への完全なる復讐を要求する」
「…復讐に協力なんぞ必要無い!」
タケルは大声で叫んだ。
神への復讐はあくまで自分個人の恨み。
そこに他者の介入を許すつもりは微塵も無かった。
自分の力でけじめをつけるべきだと考えていた。
明光は首をかしげた。
「そうなのか…?…ならば別の褒美だ」
「元の世界には帰りたくないか?」
その言葉に、タケルは心の中で眼を見開いた。
タケルは初めて、骨の体に感謝した。
これほどまでに動揺を悟られない姿はない。
「人間の姿に戻って、今一度暮らしたくはないか?家族や友人と?」
タケルの心が揺らぐ。
後ろに視線を移動させると、心配そうに自分を見つめる幹部達や、仲間のアンデット達と目が合った。
ここにいるアンデット達は最初に出会った時、仕える相手も目的も無い正に”生ける屍”だった。
しかし、自分が王として君臨したことで、ここもアンデット達も生き生きとしてきた。
笑顔や、笑い声を耳にすることも増えてきた。
クラスメイトに裏切られ、神を憎んで心が荒みきっていた自分の心の支えとなっていった。
彼らは、魔王も人間も、全てに属さない自分達だけの国を作りたいと、夢を語った。
タケルは、絶望のどん底にいた自分を救ってくれた仲間達に恩返しがしたいと思い始めていた。
だから…
「私は…この者達の王となって導くと決めている。そして、幸せになってほしいともな」
アンデット達の顔が明るくなってゆく。
その目には、やる気や決意が満ち溢れていた。
タケルは胸を張った。
「悪魔の囁きに惑わされる私ではない!すぐにここを立ち去るがいい!」
「わあああああああああああああ!!イモータル・キング様、ばんざああああああああああああああああい!!!」
アンデット達の歓声が地下に木霊した。
その声は、遠く離れた他国にも聞こえんばかりに辺りの空気を揺らした。
大地が避けんばかりに響く歓声。
明光はその光景を見ると、溜息をついた。
「はあ…やはりこうなるか…」
一人のアンデットが悪魔へと声をかけた。
それは、幹部の一人である死体男爵アゼットであった。
「逆に聞くが悪魔さんよお…あんたは我らが王の傘下に入る気はないのかあ?」
「プッ…アゼット…悪魔の戦力なんかたかが知れてる…」
「そうですわ、人間や魔族なんて私達だけで十分ではなくって?」
「無論だ…」
他の幹部達も声を発する。
賑やかになるアンデット達を見下ろしながら、明光は手を動かした。
一閃
「『栄光の羽:絶えず輝き眩かん』」
アゼットの上半身が吹き飛んだ。
アンデット達は崩れ落ちるアゼットの下半身だった物を呆然と眺めていた。
アゼットが立っていた場所の背後の床から煙が上がる。
地面が黒く焼け焦げていた。
明光の背後に浮かぶ左右に3枚ずつ、羽のように並んでいた板の内の一つが、その先端をアンデット達へと向けていた。
「俺は”火山”の馬鹿ほど短気ではない…これより後三回、服従を誓うか聞いてやろう」
明光が腕を下に降ろす。
空中で、その身を委ねるかのように構えた。
「そして、一度断る毎に貴様らの仲間を殺す…最初の1回目だ、サービスで犠牲者は一人だけにしてやった」
アンデット達が戦闘態勢に入る。
死者ゆえに、仲間の死による涙は出ない。
いや、今は出さんとしていた。
悲しみを抑え込み、怒りを原動力として目の前の敵を撃たんとしていた。
それはタケルも同じことであった。
しかし一つ違う点があるとすれば、この場の誰よりも心の内で怒り狂っていることであった。
『栄光の羽』が、下に群がるアンデットへ向けて照準を合わせる。
「再び問う。服従せよ…然もなくば…死ね」
戦況は一方的に見えた。
アンデット軍の幹部達の攻撃は、もはやこの世のものとは思えないほどに激しく、鋭く強大だった。
アンデットの最上級魔法職のデッドカオスソーサラー、そこに生前の魔法の知識が加わり、神の域にまで達すると言われる幹部が一人、リーシャの魔法が天を舞う。
幼い見た目からは想像もできないような魔力量。
炎、水、風、土の四大魔法に加え、光と闇の魔法が明光へと襲いかかる。
その魔法の間を縫うようにして避ける明光を、コウモリの形をした黒い影が襲いかかる。
バンパイアクイーンゾンビであるフィーレットのスキル『影の下僕』。
それによって生み出された影を媒介とした使い魔達は、それ一体で王国の上位騎士を相手度れるほどの力があった。
バンパイアクイーンが不死者として蘇ったバンパイアクイーンゾンビは、バンパイアとしての魔族の力にアンデットの力が加わり、滅ぶことのない身体に尽きぬ魔力を手に入れた。
その美しい美貌はあらゆる男を虜にした。
追い込むようにして明光を攻撃する影の使い魔達。
対応の遅れによる隙を突いて、一つの人影が空中へと飛び出した。
刀を構える武士骸骨、ガシャラが名港へ接近するとともに抜刀する。
「『黄泉居合斬り』…!」
ガシャラは元は人間で、東国の武士だったが、仲間に裏切られてアンデットとなった。
着物を着て、草で編まれた笠を被っているその姿はまさに武士。
人間だった頃の技術はそのままに、体が不死者となったことでリミッターが外れ、その剣速は音速を優に超えた。
特にその居合斬りは、これを防いだ者はたけるただ一人だった。
その居合斬りを明光は6枚の『栄光の羽』のうちの一つで防ぐ。
防がれたことにガシャラは眉をひそめるが、すぐに意識を戻すと斬撃の乱舞を放った。
「『花散らし四式』!」
なんとか斬撃は防いだものの、ガシャラの放った乱舞によって明光は地面へと叩き落とされた。
起き上がる明光へとタケルが迫る。
その手に持つ剣は黒いオーラを纏っていた。
「喰らえ…『万死一閃』!!」
タケルの一撃が辺りの空気ごと地面を切り裂いた。
明光は間一髪空へと回避するが、そこへ再びリーシャの魔法が襲いかかる。
「…先ずは…面倒な魔法使いに消えてもらおうか」
明光の背後に控える『栄光の羽』のうち2枚が、先端をリーシャへと向けた。
そのままそこから縦に長い光線が放たれた。
「…!『結界術Lv X』!!」
リーシャの張った結界に光線がぶつかる。
高音を発しながら光線が結界に容赦無く照射される。
ピシピシと、ヒビが入る音が結界から鳴る。
「『短距離転移』!!」
結界が割れる寸前、リーシャはテレポートの魔法によって空中へと回避する。
直後、結界は割れて粉々になる。
リーシャはすぐに反撃せんと魔力を高めた。
その小さな胸を、光が貫いた。
地面から光り輝く光の柱が生えていた。
それがリーシャの胸を貫き、天に向けてそびえ立っていた。
『栄光の羽』のうち1枚が地面へと突き刺さっていた。
「『光殺:召滅の柱』」
明光のつぶやきとともに、光の柱は輝きを増していった。
リーファが助けを求めるようにしてタケル達へと手を伸ばした。
その口がかすかに動く。
「た…たす…」
光の柱とリーファの体が膨張。
爆発。
光が撒き散らかされた。
「…!リーシャ!」
フィーレットが消え去った仲間の名を呼ぶ。
ガシャラが明光へと刀を構えながら急接近する。
「音速を超えろ…『黄泉居合斬り』…!!」
「『光殺:果て無き光剣』」
ガシャラの手から刀が零れ落ちる。
明光の首元まで迫っていた刃。
しかし、それよりも先に『栄光の羽』からカッターの刃の如く伸びる輝く光剣が、ガシャラの身体を横に両断していた。
崩れ落ちるガシャラの体に追い討ちをかけるようにして光線を浴びせかける。
ガシャラは完全に消滅した。
「音速では光速には勝てるわけがないだろう」
幹部二人が死亡した。
明光はタケルとフィーレットの方を見た。
「三度聞こう…服従か、死か」
フィーレットは唇を噛む。
その顔は怒りで憎々しげに歪んでいた。
タケルが前に出た。
それについて行こうとするフィーレットを片手で制すると、タケルは口を開いた。
「…何故、我等を殺さんとする?何故我等を放ってはくれない?」
タケルの問いに対し、明光はパーカーのポケットに手を入れながら答えた。
「後で神に加担でもされたら面倒だからだ」
「…それだけか?それだけの理由で我等を滅ぼすのか?」
明光の目が鋭く細められた。
その目で睨まれ、タケルは蛇に睨まれた蛙のような気分になった。
「我ら悪魔の不利益となりうる存在は全て滅ぼさねばならん」
明光の後ろで浮いていた『栄光の羽』がその照準を一斉にタケルへと向けた。
高音を鳴らし、輝きを増してゆく。
タケル達はアンデットの本能から、あの光は自分たちを滅ぼすことができると感じ取った。
「…ならば私は闘わねばならん。仲間たちの為にも、自分の為にも」
タケルの持っていた剣が虚空に消える。
それと同時に、虚空から一振りの刀が現れた。
鞘から柄まで真っ黒なその刀からは、死のオーラが沸き立っていた。
その刀を鞘から抜き、切っ先を明光へと向けた。
「滅ぶのは貴様の方だ!悪魔よ!」
アンデット達の歓喜の声が辺りに響く。
フィーレットは恍惚の表情を浮かべる。
辺りの空気が熱を帯びたようだった。
「…やはり人間というものは愚かだな…」
明光が右手の人差し指をアンデット達へと向けた。
「ならば滅びて我らの糧となれ」
『栄光の羽』から光がほとばしる。
異世界転生者タケルによってアンデットの王国となっていた墓地の地下深くの巨大な空間。
そこは、許可された者以外が入れぬようにタケルのスキルによって隠蔽されていた。
おまけに、地下から地上までの高さゆえ、分厚い土や石の層で天井が覆われている…はずだった。
今や、天井は瓦礫となって崩れ去っていた。
天井に空いた穴から後光を背にした人外が、宙に浮いて見下ろしていた。
それは、”光の悪魔”と名乗った。
「契約…だと…?」
「そうだ、悪魔の契約だ」
タケルと悪魔が対峙する。
周りの者達は固唾を吞んで見守る。
光の悪魔、明光はパーカーの喉元の紐を片手で弄りながら続けた。
「貴様の願いを叶えてやる。代わりに服従を誓え」
命令をするかのように明光は言い放った。
その物言いに、周りのアンデット達が殺気立つ。
特に幹部の4人は戦闘体制に入るほどだった。
「願いに服従だと?いよいよもって意味が分からんぞ?」
タケルの言葉に明光は溜息をついた。
そしてやれやれと首を左右に振るった。
「この世界においてお前は神を殺せる可能性を持った存在…だから声をかけた」
神…という言葉にタケルは反応した。
「…お前は神…女神ラーフェラに恨みがあるようだな…女神への復讐に協力してやる」
明光の着たパーカーの被ったフードの中で三つの眼が怪しく光った。
その眼を細めると、明光は続けた。
「復讐の協力の代償として、お前達には我ら悪魔への完全なる復讐を要求する」
「…復讐に協力なんぞ必要無い!」
タケルは大声で叫んだ。
神への復讐はあくまで自分個人の恨み。
そこに他者の介入を許すつもりは微塵も無かった。
自分の力でけじめをつけるべきだと考えていた。
明光は首をかしげた。
「そうなのか…?…ならば別の褒美だ」
「元の世界には帰りたくないか?」
その言葉に、タケルは心の中で眼を見開いた。
タケルは初めて、骨の体に感謝した。
これほどまでに動揺を悟られない姿はない。
「人間の姿に戻って、今一度暮らしたくはないか?家族や友人と?」
タケルの心が揺らぐ。
後ろに視線を移動させると、心配そうに自分を見つめる幹部達や、仲間のアンデット達と目が合った。
ここにいるアンデット達は最初に出会った時、仕える相手も目的も無い正に”生ける屍”だった。
しかし、自分が王として君臨したことで、ここもアンデット達も生き生きとしてきた。
笑顔や、笑い声を耳にすることも増えてきた。
クラスメイトに裏切られ、神を憎んで心が荒みきっていた自分の心の支えとなっていった。
彼らは、魔王も人間も、全てに属さない自分達だけの国を作りたいと、夢を語った。
タケルは、絶望のどん底にいた自分を救ってくれた仲間達に恩返しがしたいと思い始めていた。
だから…
「私は…この者達の王となって導くと決めている。そして、幸せになってほしいともな」
アンデット達の顔が明るくなってゆく。
その目には、やる気や決意が満ち溢れていた。
タケルは胸を張った。
「悪魔の囁きに惑わされる私ではない!すぐにここを立ち去るがいい!」
「わあああああああああああああ!!イモータル・キング様、ばんざああああああああああああああああい!!!」
アンデット達の歓声が地下に木霊した。
その声は、遠く離れた他国にも聞こえんばかりに辺りの空気を揺らした。
大地が避けんばかりに響く歓声。
明光はその光景を見ると、溜息をついた。
「はあ…やはりこうなるか…」
一人のアンデットが悪魔へと声をかけた。
それは、幹部の一人である死体男爵アゼットであった。
「逆に聞くが悪魔さんよお…あんたは我らが王の傘下に入る気はないのかあ?」
「プッ…アゼット…悪魔の戦力なんかたかが知れてる…」
「そうですわ、人間や魔族なんて私達だけで十分ではなくって?」
「無論だ…」
他の幹部達も声を発する。
賑やかになるアンデット達を見下ろしながら、明光は手を動かした。
一閃
「『栄光の羽:絶えず輝き眩かん』」
アゼットの上半身が吹き飛んだ。
アンデット達は崩れ落ちるアゼットの下半身だった物を呆然と眺めていた。
アゼットが立っていた場所の背後の床から煙が上がる。
地面が黒く焼け焦げていた。
明光の背後に浮かぶ左右に3枚ずつ、羽のように並んでいた板の内の一つが、その先端をアンデット達へと向けていた。
「俺は”火山”の馬鹿ほど短気ではない…これより後三回、服従を誓うか聞いてやろう」
明光が腕を下に降ろす。
空中で、その身を委ねるかのように構えた。
「そして、一度断る毎に貴様らの仲間を殺す…最初の1回目だ、サービスで犠牲者は一人だけにしてやった」
アンデット達が戦闘態勢に入る。
死者ゆえに、仲間の死による涙は出ない。
いや、今は出さんとしていた。
悲しみを抑え込み、怒りを原動力として目の前の敵を撃たんとしていた。
それはタケルも同じことであった。
しかし一つ違う点があるとすれば、この場の誰よりも心の内で怒り狂っていることであった。
『栄光の羽』が、下に群がるアンデットへ向けて照準を合わせる。
「再び問う。服従せよ…然もなくば…死ね」
戦況は一方的に見えた。
アンデット軍の幹部達の攻撃は、もはやこの世のものとは思えないほどに激しく、鋭く強大だった。
アンデットの最上級魔法職のデッドカオスソーサラー、そこに生前の魔法の知識が加わり、神の域にまで達すると言われる幹部が一人、リーシャの魔法が天を舞う。
幼い見た目からは想像もできないような魔力量。
炎、水、風、土の四大魔法に加え、光と闇の魔法が明光へと襲いかかる。
その魔法の間を縫うようにして避ける明光を、コウモリの形をした黒い影が襲いかかる。
バンパイアクイーンゾンビであるフィーレットのスキル『影の下僕』。
それによって生み出された影を媒介とした使い魔達は、それ一体で王国の上位騎士を相手度れるほどの力があった。
バンパイアクイーンが不死者として蘇ったバンパイアクイーンゾンビは、バンパイアとしての魔族の力にアンデットの力が加わり、滅ぶことのない身体に尽きぬ魔力を手に入れた。
その美しい美貌はあらゆる男を虜にした。
追い込むようにして明光を攻撃する影の使い魔達。
対応の遅れによる隙を突いて、一つの人影が空中へと飛び出した。
刀を構える武士骸骨、ガシャラが名港へ接近するとともに抜刀する。
「『黄泉居合斬り』…!」
ガシャラは元は人間で、東国の武士だったが、仲間に裏切られてアンデットとなった。
着物を着て、草で編まれた笠を被っているその姿はまさに武士。
人間だった頃の技術はそのままに、体が不死者となったことでリミッターが外れ、その剣速は音速を優に超えた。
特にその居合斬りは、これを防いだ者はたけるただ一人だった。
その居合斬りを明光は6枚の『栄光の羽』のうちの一つで防ぐ。
防がれたことにガシャラは眉をひそめるが、すぐに意識を戻すと斬撃の乱舞を放った。
「『花散らし四式』!」
なんとか斬撃は防いだものの、ガシャラの放った乱舞によって明光は地面へと叩き落とされた。
起き上がる明光へとタケルが迫る。
その手に持つ剣は黒いオーラを纏っていた。
「喰らえ…『万死一閃』!!」
タケルの一撃が辺りの空気ごと地面を切り裂いた。
明光は間一髪空へと回避するが、そこへ再びリーシャの魔法が襲いかかる。
「…先ずは…面倒な魔法使いに消えてもらおうか」
明光の背後に控える『栄光の羽』のうち2枚が、先端をリーシャへと向けた。
そのままそこから縦に長い光線が放たれた。
「…!『結界術Lv X』!!」
リーシャの張った結界に光線がぶつかる。
高音を発しながら光線が結界に容赦無く照射される。
ピシピシと、ヒビが入る音が結界から鳴る。
「『短距離転移』!!」
結界が割れる寸前、リーシャはテレポートの魔法によって空中へと回避する。
直後、結界は割れて粉々になる。
リーシャはすぐに反撃せんと魔力を高めた。
その小さな胸を、光が貫いた。
地面から光り輝く光の柱が生えていた。
それがリーシャの胸を貫き、天に向けてそびえ立っていた。
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「『光殺:召滅の柱』」
明光のつぶやきとともに、光の柱は輝きを増していった。
リーファが助けを求めるようにしてタケル達へと手を伸ばした。
その口がかすかに動く。
「た…たす…」
光の柱とリーファの体が膨張。
爆発。
光が撒き散らかされた。
「…!リーシャ!」
フィーレットが消え去った仲間の名を呼ぶ。
ガシャラが明光へと刀を構えながら急接近する。
「音速を超えろ…『黄泉居合斬り』…!!」
「『光殺:果て無き光剣』」
ガシャラの手から刀が零れ落ちる。
明光の首元まで迫っていた刃。
しかし、それよりも先に『栄光の羽』からカッターの刃の如く伸びる輝く光剣が、ガシャラの身体を横に両断していた。
崩れ落ちるガシャラの体に追い討ちをかけるようにして光線を浴びせかける。
ガシャラは完全に消滅した。
「音速では光速には勝てるわけがないだろう」
幹部二人が死亡した。
明光はタケルとフィーレットの方を見た。
「三度聞こう…服従か、死か」
フィーレットは唇を噛む。
その顔は怒りで憎々しげに歪んでいた。
タケルが前に出た。
それについて行こうとするフィーレットを片手で制すると、タケルは口を開いた。
「…何故、我等を殺さんとする?何故我等を放ってはくれない?」
タケルの問いに対し、明光はパーカーのポケットに手を入れながら答えた。
「後で神に加担でもされたら面倒だからだ」
「…それだけか?それだけの理由で我等を滅ぼすのか?」
明光の目が鋭く細められた。
その目で睨まれ、タケルは蛇に睨まれた蛙のような気分になった。
「我ら悪魔の不利益となりうる存在は全て滅ぼさねばならん」
明光の後ろで浮いていた『栄光の羽』がその照準を一斉にタケルへと向けた。
高音を鳴らし、輝きを増してゆく。
タケル達はアンデットの本能から、あの光は自分たちを滅ぼすことができると感じ取った。
「…ならば私は闘わねばならん。仲間たちの為にも、自分の為にも」
タケルの持っていた剣が虚空に消える。
それと同時に、虚空から一振りの刀が現れた。
鞘から柄まで真っ黒なその刀からは、死のオーラが沸き立っていた。
その刀を鞘から抜き、切っ先を明光へと向けた。
「滅ぶのは貴様の方だ!悪魔よ!」
アンデット達の歓喜の声が辺りに響く。
フィーレットは恍惚の表情を浮かべる。
辺りの空気が熱を帯びたようだった。
「…やはり人間というものは愚かだな…」
明光が右手の人差し指をアンデット達へと向けた。
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