私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
2 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

2、初めまして。

しおりを挟む




思い出したのは唐突だった。
何かを閃いたかのように、私は転生をしたと気づいた。
定められた通りに、転生したんだ。

多少、記憶に欠けがあるようだが、いずれ思い出していくだろうと思われる。
日々の生活でも、知らないはずなのに不思議と前から知っていたようなことがあったのは、ぽろぽろと転生前の記憶が戻りつつあったからのようだった。

大きく背伸びをしながら、ふわっふわの広いベッドから体を起こして周囲を見渡す。
さすがというべきか、子沢山で有名な公爵家の末っ子娘とはいえ、贅沢な部屋の作りだった。


「せしゃあ・あのん・ぎゃえっと…」


──噛みすぎでしょう…
3歳じゃしょうがないかな?そう思いつつも、やっぱり納得がいかない。

今の私の名前はセシリア・ハノン・ガレット
公爵令嬢、凄いでしょう?と自慢したいところだけど、跡取りでもなんでもない。
両親は結婚してからずっと、蜂蜜以上に甘い関係なおかげで子沢山。

兄は3人、姉も2人いるが全員成人済みだし、後継者はその長男で決定済みである。
婚約に関しても、全員問題なくクリアしているし、それぞれの婚約者とも仲がいいようで、結婚を心待ちにしているような状態。

私は6人兄弟の末っ子なので、権力や地位なんて微妙どころか言葉にすらかすることもないし、それどころか「私って両親の老後の楽しみとしての孫の代わり的な愛玩用じゃないの?」とも思える、甘やかし放題な環境で育った。

ちなみにこの国では一夫一妻である。
この国で一夫多妻が許されているのは、王家だけなんだ。

それでも三妃まで。
王妃以外は側室、という扱いではなくて全員平等な扱いで三妃まで。
それぞれ迎え入れるにも条件があって、二妃を迎え入れるには一妃との結婚後5年経過しても子が産まれる気配がない場合。
三妃に至っては、二妃との成婚後2年経過しても一妃と二妃に…といった感じで。

流石に、跡継ぎがいないとやばいもんね?という配慮からのものらしいけどね。






*******






さて、一気に流れ込んできた前世と、さらに昔の情報と、今現在の情報を整理しつつ気づいた。
それはもう、昨日のおやつはなんだったか、唐突に思い出すような、そんな感覚で。
私は『定めた通り』に転生したことに気づいた。

運命さだめ通り』じゃないよ『定めたさだめた通り』だよ。

……そう、これは自分で決めた事だ。
ある目的のためにずっと転生を繰り返している、という事。

まぁ、残念ながらそんな定めさだめ構築したつくった時点の私ですら、人より何かに優れているわけでもなかったし、ましてや何か崇高な使命を帯びている…わけでもないんだけどね。
そして、誰もがびっくりするような、チートなスキルを持っているわけでもない。

あえて言うならば、少し変わった部類の人間だった、と言うことかな?
地球での大学にあたるような研究施設で研究に没頭して、寝食忘れて施設が自宅になったような人間だったという事は、思い出した。

ちなみにこの転生も定めも、その研究の賜物とでも言っておけば良いのかな?
まぁ、副産物とも言えるんだけども。


(うわぁ、手!ちっちゃ!ぷにぷに!)


前世だとすっかり忘れちゃってたんだよねぇ、この情報。
今ならその原因も、漠然とだけど、なんとなく思い出してわかってきた。

前世はこちらの世界から見たら、異世界、地球の日本というところで生を受けたからだった。
異世界には魔法や精霊、ドラゴンなどのモンスターや魔物の存在がない、平和な世界だっ。た。
魔法がない代わりに、科学が異常に発達していた。

『魔法がない』つまり異世界では、魔力行使や維持ができない。
魔力とは魂に刻まれた素質、そして魂からの力である。
記憶も魂に刻まれていくもので……。

そう、転生のために魂にかけた、記憶復帰や転生条件の詳細な選別の魔法が発動しなかった。
ただし発動こそしなかったが、魂にはしっかりと前世の記憶が…死の浄化によって消される事なく、記録されていた。

まぁ、そもそもが異世界の科学技術というものに憧れて、次回の転生先に異世界地球を指定したのは私自身なのだけども。


(思っていた以上に、良い人生だったなぁ…)


前世の死因は多分、寿命だろう。
歴代の中では、一番幸せな旅立ち方だったと思う。
それまでの私は、毒殺や呪殺などの暗殺ってやつですね……ロクな死に方をしていない。


それにしても、と顔を顰めてみる。
……ま、幼児のぷくぷく顔では、顰めることすら難しいのだけども。

今回は公爵令嬢。
何をするにしても、行動に制約が多そうな環境だ。
なんかもう既に、知らぬ間に婚約者とかいそうな勢いだよね。
ただきっと、今後の転生先は貴族が基本になっていきそうな気はしてるんだ。

転生条件に「通常より強度の魔力所持とその魔力を行使した時に耐えられる身体」というのが、一番の優先事項になっているのが原因だと思ってる。

私が前回、異世界地球への転生で人生を謳歌している間に、こちらの世界では魔法使いはもとより、そもそもの選定基準である『魔力持ち』という人間が激減していたからだ。

比較的、貴族という人種は血統管理が厳しくて、貴族間での計画的な婚姻が基本だった事から、魔力持ちの血が濃く残っているってだけで、それでも全体的な魔力持ちの出生率は下がってるようだった。


(前前世むかしは何処にでも、いくらでも、むしろ誰でも簡単な魔法なら使えたと、記憶してるんだけどなぁ)


こういう状況で「人間である事」なんて条件はつけてないから、このままさらに魔力を育てていけば、来世はエルフか魔族にでも転生するのではないだろうか?

……今世では「魔力の強さが家を継ぐ判断基準に」という風潮も出始めているようだし。

少しづつ現状の把握と、立ち位置の把握をしていかないと……と、毛布をかぶり直して転がったところで、部屋のドアが開いた。


「セシリア様、おはようございます」

「おはよう…」


寝起きと、一気に思い出した大量の情報の整理中なのも手伝って、まだ頭がぼーっとしている。
ドアから現れた私の専属メイドは、慣れた手つきで私の上体を起こし、早着替えのように寝巻きからインナーの白いワンピースへ着替えさせる。


「さぁさぁ、お着替えいたしましょうね!」

「はぁい」


今日は大事な日だ。
着替えが終わると、蒸しタオルを顔に当てられる。

……これが結構気持ち良くて、そのまま顔をごしごしと拭いて、毎度怒られる。
本当は蒸しタオルと冷たいタオルとを順に顔に当てて、寝起きの浮腫みを取るものらしいが、子供には必要ないと思うんだ。


「今日はご予定が入っておりますので、可愛く仕上げましょうねぇ」


気持ち楽しげな専属メイドの声とともに、タオルを顔に当てられたまま、わしわしと髪を整えられる。
個人的には朝からプチエステ気分で「3歳児のくせに生意気な!」と思ってしまう。

あ、ちなみに、幼児の寝汗って、すごいんだよね…
寝てる時に、この小さな身体にある、大人と同じだけの汗腺を使って、発汗練習をしちゃうんだって!

だから、朝起きると、オネショでもしたかのように汗でびっしょりということも、ままあったりする。
そういう時は朝から「湯浴みしましょう!」と満面の笑みを称えた専属メイドに朝風呂コースに……。

朝から、ある意味で大運動会だったりするわけだけど、今日の寝汗はそんなに酷くなかったようで、ささっと着替えて髪も整えてもらって、仕上げに淡い水色のオーバードレスに袖を通して準備を完成させる。


「では、食堂へ参りましょうね」

「はぁい」


本来なら、そのまま1人で行けば良いのだけど、3歳児には立派すぎる大きなドアを自力で開けるのも無理な話なので、どうあがいても専属メイドと一緒の行動になる。
豪華なお屋敷のドアは無駄に重くて大きくて、ドアノブの位置も無駄に高いからね……。

さて、食堂へのドアを開けてもらったら、まずはご挨拶。


「おとしゃま、おかしゃま、おはようございましゅ」


ぽてぽてと歩いて、いっちょまえなカーテシーを披露する。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...