3 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
3、父様と母様。
しおりを挟む私の上の兄弟達は、みんな成人済みだ。
そもそも同居していない者がほとんどだ。
それぞれが、それぞれの予定で動いているから、基本的に一緒に食事をとるのは、父様と母様の2人。
たまに長期休暇などで兄姉たちの帰省が重なると、賑やかになる。
「セシー、おはようございます。ご挨拶えらいわねぇ」
「おはよう、セシリア!今日も可愛いね」
自分の席まで近づくと、メイドが幼児用に作られた椅子に座らせてくれる……んだけど、大抵はその道中で父様に捕獲されて、ほっぺをむにむにぐりぐりと、がっつり頬ずりされてからの着席、食事となる。
燃えるような赤髪で、切れ長の翠の瞳のとても知的な美貌を持つお父様。
とても若々しくて美形なので目の保養となるのだけど、至近距離すぎて……。
向かい合って座り、こちらをにこにこと見つめている、淡い桜色のような銀髪で、青い瞳の溢れるような艶かしさを持つ母様も…これまた麗しく。
自分の親とはいえ、一挙一動に見惚れてしまう。
さらに、習ったばかりのテーブルマナーはうまくいかないし、ぷくぷくぷにぷにの手は、頭ではわかっているような動作をするにも一苦労で、食事が全く進んでくれない。
これはもう、身体の成長に期待しつつ、慣れていくしか……ないよね。
転生したことに気づいたこれからは……見惚れてしまう回数が極端に増えてしまう自信がある。
(今後の食事の時間は、平常心を鍛える場とも、なるんだろうなぁ)
正直この両親ってば、成人した子供が5人もいる夫婦には見えないのよね。
まだ20代前半と言ってもバレないと思うんだ。
すごく若々しい。シワとかクスミとか、目のクマとかね!全くの無縁のように見える。
母様に至っては体型的にも、母性がものすごい。
セシリアも母性あふれる体型……というか、美女になれるといいな。
……今まで、ささやかだったから。
「セシリア、今日の魔力判定会でお友達ができると良いね」
「そうね!お友達を呼んでのお茶会とか楽しいわよ!」
「そうそう、お茶会と言えば、北の辺境伯が遂にね……」
習いたてのテーブルマナーで食事を口に運ぶことに必死な私を横に、両親の話は流れていく。
この夫婦はよく喋るから、この朝の会話を聞いてるだけで家に居ながらにして情報通になれる気がしてくる。
「……セシリアは無事オムツ卒業できたし、そろそろお呼ばれのお茶会の参加もいいかもしれないね」
「そうねぇ、そろそろ王子様達のお披露目のお茶会があるそうですし、その日に合わせて準備していきましょうか」
……前世の記憶では「1歳になったら、トイレトレーニング」と育児書にはあったんだよなぁ。
私は「1歳になれば、自然と出来るようになるから」と思っていたのだけど、我が子は頑張っても、完了したのは3歳ギリギリだった。
義理母にもずいぶん嫌味を言われたし。
子は子で「魔のイヤイヤ期」に突入してたから、全く言うこと聞かないし反抗的だしで…。
どうしようもなくなって、実母に助けを求めても「あんたの躾が悪い」とバッサリだったし。
あの頃は楽しいはずの育児が、地獄だったな。
息子の嫁達が私のような苦労しないように、私が傷つける存在にならないようにと、孫のトイレトレーニングについて先に考えを聞いておこうと思って話を振ったら
「子供がその気になるまで、そのままで良いんですよ~」
「そんなことより、今しかできないことをいっぱい楽しみましょう」
「大丈夫ですよ!いずれは自分でも恥ずかしくなって、勝手に外れますよ」
彼女らが孫の検診に行った時に貰ってきたという小冊子にも
「3歳を目標に外しましょう」
「それでも外れない子も中にはいるけど、5歳までには自然と外れます」と、あった。
……自分の子の育児は地獄だったけど、義理娘達がいっぱい関わらせてくれた孫の育児は、凄く楽しかった。
義理娘達、良い子ばっかりだったなぁ。
私には息子しかいなかったから『息子達のお嫁さん』という御縁で、関わらせてもらえた。
とても良い娘達だった。
──突然視界を奪われるように浮かんだ記憶と感情に、ぐっと喉を詰まらせて、涙目になりかけてしまったのをスープごと飲み込むようにごまかした。
(今の私は「育児される立場」だった)
今の「私のお母さん」が私の育児で辛くならないように、楽しめるように頑張ろう。
……そう考えると、今世での子供の失態って、状況によっては家名にも傷がついちゃったりするわけだから、子供は子供で、意外に大変なのかもしれないね。
話しがずれたが、私のオムツは本当につい最近、外れた。
私の心情的には、オムツは速攻で外したかったのだけれど、部屋が広すぎてトイレまでが遠くて、どうしても無理だった。
自分の部屋なのに、私では開けられない大きな扉もたくさんあるし。
そのうえ歩幅の関係もあってね、尿意に気づいても、よちよち歩きではどうしても間に合わなくて、オムツ完全卒業はついこの間。
こちらの世界にもオマルがあればいいのに…と何度思ったことか!
おパンツになってからの、お尻周りの清々しさは格別だ!
──あ、いや、そうじゃなくて!
今日は3歳児健診、もとい、3歳児魔力測定日。
この検査で「魔力持ち」と判定されると、この世界ではその後の人生が大きく変わる。
平民の子であれば、5歳から国立の魔法学校へ通うことが決定するので、読み書きやマナー等の最低限の知識を得るために、教会へ通う。
もしくは教会内の孤児院に引き取られての、勉強が始まる。
貴族の場合は、読み書き等は家庭教師に教わっていくものだから、特に問題はないのだけどね。
そして、その貴族の子だった場合は、詳しく得意な属性が調べられた上で、さらに一歩進んで魔法の行使を教わったりもする。
「まほう、たのしゅみ」
おっと、考えが思わず口から出てしまったようだ。
私のポツリ発言がしっかり聞こえてしまってたようで、お茶会の準備のお話からいつの間にやら夜会と噂まで飛んで行っていた会話が止まり、父様と母様がこちらに振り向く。
「今度こそ君の出番だと良いね」
「あらあら。セシリアは貴方やお兄様たちと同じように火か風に好かれると思うわ」
母様は、少し寂しそうな笑みを浮かべている。
「セシリアは君に似てるから……もしかしたら光かもしれないぞ?」
「そうかしら?フィリーもセシリアと同じ髪色だけど、あの子は火だったわよ?」
「ほらほら拗ねないの、俺は1人くらい君と同じ光に好かれる子がいたら良いなってだけだよ、全員父親似ってのも……ね。1人くらい、魔法練習を君に押し付けたい」
──一般的には火、水、土、風といった属性がある。
……少し変わったところでは『派生』といわれる属性もあって、一般的な『属性を強化』して、氷や炎になったり『属性の複数持ち』が自分の属性を器用に組み合わせて使えるようになって派生した、樹や飛行等があったと記憶している。
その他に希少という意味で光、闇の属性がある。
国中から「魔力持ち」を集めた魔法学校内ですら光か闇の属性持ちは数人程度であり、実用レベルとなると学年に一人いるかいないかというレベルなのだそうだ。
ちなみに母は、その光属性の高位所持者であり、現在も「大聖女」と呼ばれている。
そう考えると、属性はともかくとして、転生指定先の『大量の魔力所持とその魔力に耐えうる身体』という意味ではやはり、この夫婦の子供で正解なのかもしれないね。
「おかしゃまは、まほうは、おきらい?」
「あらあら…魔法は好きよ。闇と…私の持つ光は、他の魔法と少し使い方が違うから…火や風を教えるには少し難しいのよ」
「そうだね、それに同じ魔法を使える人から習えた方が、上達も早いんだ。セシリアの兄様も姉様も光持ちではなくてね」
「……教えられる機会があれば、私は頑張るわよ?」
母様は少し困った、申し訳なさそうな寂しげな笑顔を浮かべた。
光持ちは少ないからね。
遺伝、という方法ですら、なかなか受け継がれないようだ。
11
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる