私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

9、会場と青い髪の人。

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セグシュ兄様が私を抱えて急ぎ足で会場へ戻ると、大人たちの視線がこちらに集中し、静まり返る。


「にいしゃま、おろして」

「大丈夫だから、もう少し我慢して?」


……3歳児の集まりとはいえ、お姫様だっこは少し、はしたなかったかな?
そういえば、さっき薔薇の庭園で派手に吹っ飛んで転がったんだっけ。
ドレスも汚れてしまっているんだろうか?

薔薇に夢中になってて、お友達も作れなかったな……まぁ、それはいい。作る気もなかったから。
夜会やお茶会では無いにしろ、王家主催の会場に獣を連れ込んでしまった。
これは公爵家としての失態になるのだろうか?

考えてるうちに、しゅんとしてしまった。


「セシー、泣かないで。測定の順番が来ただけだから、落ち着いて」

「はぁい……」


セグシュ兄様の少し緊張気味の笑顔が見えた。
いつでもセグシュ兄様は優しい。
その優しい言葉で余計に涙がじわりと誘われてきてしまって、我慢したら鼻がつーんとなった。

テンションだだ下がりの私を抱えたまま、セグシュ兄様は会場最奥にある、魔力測定の水晶がある場所まで一気に進む。


「お待たせしてしまい申し訳ありません、セシリア・ハノン・ガレットの測定をお願いいたします」


セグシュ兄様のいつもとは違う、キリッとした声とともに、やっとお姫様抱っこから解放された。
私は魔力測定に携わる職務の方と母様へカーテシーをする。

片手は白いもふもふが落ちないように支えてるので簡易になってしまったけれど。
……ていうか、白いもふもふが外れなくて困ってたわけだから、支えなくても良かったのかもしれない。

ごめんなさいの気持ちもこめて、しっかり顔を上げて


「よろしゅくおねがいしましゅ」


……やっぱり、噛んだ。

私が一番最後なので、ソフィア妃とレオンハルト王子まで測定を見学されていたようだ。

あぁ、こちらを見てソフィア妃がとろけそうな笑顔をされている。

レオンハルト王子は…肩をふるふるさせてる。
王子よ、笑いたけりゃはっきり笑え!……もうやだ。

なんだろう、あの笑い方は私の神経を逆なでする。
なんか凄くバカにされているような気がしてくる。


(王子なんて嫌いだ!)


水晶玉の近くにいる母様は「大丈夫よ」と言わんばかりの優しい笑顔を向けてくれている。
──頑張るよ!


魔力測定は赤いベルベットのクロスがかけられた台座に乗っている水晶玉で行われる。
『水晶に魔力を通して』なんてやりそうなものなんだけど、3歳児には魔力の意識や操作なんて無理だから、触るだけ。
そもそも、そんな操作ができるなら、魔力の有無を確認する測定会なんて必要ないもんね。

と、いう事で…みんなが見守る中、一人で水晶に触る。触りたい…んだけど。


「かしゃま、これとって」

「ぎゅう!」


胸に貼り付いたまま、ずっと私の頰にすりすりしてるもふもふ物体を指す。
なんかすごく不満な反応されたが、剥がれてくれないと検査できないんだから、しょうがないじゃないか。

水晶は触れた物体の全ての魔力量を測ってしまうから、こっそり魔石やマジックアイテムを隠し持ってた場合、それの魔力も測定されてしまうんだ。
そういう不正を避けるためにも、測定会を大々的に開いて、大勢の人の監視のもとで測定される。

つまり、この状況で水晶に触ってしまうと、この白いもふもふ生物と私の魔力量の総合計として反映されちゃう。

どうしたものかと母様に視線を向けると、母様の隣にいつの間にかに父様が来ていた。

父様だけ笑顔ではなく、ひどく驚いたような、怒ったような顔をしてた。
良い子に頑張るはずだった娘が、汚れたドレスで参加とは、がっかりだろうな。

ションボリしつつ、ただ、その視線は…私、じゃなくて白いもふもふを凝視しているようにも見える。


「私が外しましょう」


その声に、水を打ったかのように会場全体が静まり返った。
飽きて会場内を走り回っていた3歳児すらも、その場に固まってるように見えた。

声の主は青い髪にエメラルドグリーンの瞳のエルフのような…綺麗に整いすぎて、まるで人形のような中性的な美貌の…男性?がいた。
男性の官服だから、男性のはずだ、うん。

楽しげににこにこと白いもふもふに顔を近づけてくる。
つまりは私とも急接近な訳で、顔近っ!近すぎ!


「強制送還されたくなかったら、爪をしまいなさい。セシリア嬢を困らせたいのかい?」

「ぎゅきゅううぅ…」


強制送還とか、この子は軟禁でもされていたのだろうか?
会った時、目に涙っぽいものも見えてたし。
イジメられてたから、助けて欲しかったのかな?


「ちょっとだけ、はなれて?」

「ぴゃーぴゃああ、ぴゃ」


何か必死に訴えてるんだけど、どうしても私にはわからない。
前前世むかし、こうやって意思の疎通が難しいモノとの、言葉の壁を飛び越えちゃう魔法を研究していた友人がいたなぁ。
習っておけばよかったかも。


(それにしてもこの必死具合、やっぱりイジメられてたのかしら?)


官服の男性は、私の視線に合わせるように膝をつきながら、にこりと笑顔を向ける。


「セシリア嬢、お友達になりたいみたいなのだが、了承願えるかい?それなら離れると言ってる」

「おともだち?うん、いいよ!おともだちね!」


返事とともに、服に強く掛かっていた爪が抜かれて、白いもふもふがポロリと落ちそうになった。
咄嗟に手で支えようと胴を掴んだら、バシ!という音と風圧とともに、顔を左右から白いもふもふに挟まれた。


「ふぇ?」


落ちないように胴は掴んだはず……。
白いふわふわ尻尾のもふもふ物体は羽があったようで、自力で着地しようと広げた羽に顔を挟まれてた。
落ちないことがわかったみたいで、すぐ羽根はしまわれたけど……羽のある猫って何だろうね。

珍しい物ってよく王家に献上されるらしいし、この白いもふもふも、珍獣の一種なのかな?
羽しまっちゃったし、単なる毛玉にしか見えないけど…。


それにしても、えへへ……人外だけどセシリアの初めてのお友達だ!
ちゃんと今日の目標は達成できたと思う!頑張ったよ!


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