私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
15 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

15、巫女さん。その2

しおりを挟む




「こ、こんばんは?」

「作法は気にしなくて良いよ。無作法しているのは私の方だから」


アナステシアスと名乗った青い髪の美丈夫……というより美少年だね。やっぱり、セグシュ兄様より年下に見える。中学生くらいかな?縮んだのかしら?


「今日の目的はね、そこの、きゅうちゃん……の命名のお手伝いと、セシリア嬢に龍の巫女としての説明をしに来たんだ」

「おなまえ、ぜんなーしゅたとで、おねがい」

「セシリア嬢が決めて良いんだよ。ゼンナーシュタットというのは元々この子の母親と考えてた名前ではあるのだけどね、つける前に逃げてしまったから」

「うん、ぜんなーしゅたと、かっこいい!」


本当に良いの?と首を傾げて、こちらを覗き込む。
そして少し意地の悪そうな笑顔を浮かべながら、きゅうちゃんとセグシュ兄様に向き直る。
それにしても、セグシュ兄様は…いつまできゅうちゃんとくっついてるんだろう……。


「君も、良いのかい?私としてはきゅうちゃんでも……っふふ。なかなか斬新で良いと思うよ」

「ゼンナーシュタットで!」


必死なきゅうちゃんの声が響いた。
『きゅうちゃん』も可愛いのに。でも、お母さんが考えてくれた名前なら、断然、つけるべき名前だもんね!

お名前は両親からの初めて贈られる、大事なプレゼントだからねっ!


「わかった、今日からお前はゼンナーシュタットだ、精進しなさい」

『魂に刻み、歩み進めゼンナーシュタット』


歌うように唱えるように、アナステシアスがゼンナーシュタット、と名前を呼んで頭に触れると、きゅうちゃんの長くてふわふわの毛がぶわっと逆立ち、一瞬、光を帯びた気がした。


「さぁこれで、ゼンナーシュタットは1つ親離れしたね!おめでとう」

「ぜんなーしゅたと!おめでとう?」


「ゼンって呼んで。セシリア、よろしく」

「ぜん!よろしくね」


この獣もふもふは、名前がつくと一人前なのかな?
ぴゃーぴゃー言ってるきゅうちゃん……改め、ゼンも可愛いんだけど、喋れるとか!
楽しみすぎるね!

……人語を理解する知能があるなら、やっぱりこの子は霊獣や精霊の類なのかしら。
サイズや見た目の変化もして見せてくれていたから、相当賢いはず。
きっと高度な魔法も使えるようになる子なんだろう。

高ランクの霊獣や精霊は得てして長命だから、逆に考えれば、名付け前の出生直後や幼生を目にすることができるのは、とても珍しい。
とても興味深いことなんだ。

アナステシアスは慈しむような笑みを浮かべてこちらを見ていたが、他の要件を思い出したのか、腰に手を当てて父様母様に向き直り、会話を再開させる。


「……さて、と。龍の巫女についてなんだけどね……教会も王家もセシリア嬢に興味津々みたいなところで悪いんだけど、セシリア嬢が龍の巫女になるのは決定事項で拒否権はないからね。大聖女と同じで、生まれる前から決まっていた事だから」


一気にそう言うと、こちらに歩み寄り手をとり、私ににっこりと微笑みかける。
なぜかうっとりするように、見つめられている。


「セシリア嬢の魂に契約がかけられているんだ」

「……解除が可能なものなのでしょうか?」

「契約の内容を調べる術はありますか?」


即座に父様と母様が質問を返していた。
巫女の契約って何だろうねぇ?隷属とかだったら、嫌過ぎるんですけど。

解除は出来ないよ、と言うように首を横に振る。父様と母様が心配そうな面持ちで考え込むのを見て、優しい笑みを浮かべながら説明を続けていく。


「あぁ、心配するようなものでは無いよ!そもそも契約っていうから怖いんだよね、ごめんごめん。これは龍の祝福だよ。ただ、一般的な血筋への祝福ではなくて……セシリアの魂そのものへの祝福だから、生まれ変わっても続いていくほどに強いものなんだ」


──だから解除はできない。

そう言われても、だ。今まで真っ当な暮らし?をしてきたので、龍と関わったり、ましてや祝福を受けるなんて状況になった記憶はないんだよね。
うっかり毒殺される程度には、有名になったりはしていたが。

そもそも人語を理解できるような高ランクの龍って……転生を繰り返し始めた頃の魔導学園都市の守護龍しか知らなかったし、その守護龍すら、会話を交わすことはおろか姿すらまともに見る機会すらほとんど無かったのよね。

祝福なんて、欲しいと思ってたのなら、夢のまた夢という環境だったはず。

むうぅ……と考え込んでいたのが伝わってしまったのか、アナステシアスがセシリアの顔を覗き込むようにして、くすりと笑った。


「セシリア嬢、そんなに眉間しわしわにしなくても大丈夫だから。あ、そろそろ寝る時間かな?……という事で、準備しておくから、明日から巫女修行開始ね。王城に宰相と一緒に毎日通ってきてね」


ぽんぽんと、頭を撫でられてしまった。
眠いわけではないんだけどなぁ。


「宰相殿、大聖女殿には後日、改めて説明の場を設けますので、詳細はその時にでも……セシリア嬢も遅くまでごめんね?……では」


アナステシアスが、父様と母様に視線を向けて、すっと姿勢を正して礼をする。
彼の頭が上がる頃には、白昼夢でも見たかのように姿が消えていた。

その様子に呆気にとられつつ、セグシュ兄様が首をかしげる。


「守護龍様って、随分若く見えたんだけど、実際いくつくらいなんだろう?外見は僕より年下に見えたんだけど…」

「あのお方は少なくとも300歳は超えてるよ。個体差があるそうだけど、長命の種族は一定の年齢で外見の成長が止まるそうだ」


エルフや精霊もそうだよね、成人あたりで見た目の成長が止まって、寿命が近くなると一気に老け込むとか。
魔力の高い生き物はこの傾向が強いそうだから、父様と母様が若々しいのも、もしかしたら…!

ハッとなって顔を上げたら、母様と目があった。困ったように肩をすくませながら、微笑む。


「……龍の巫女について、判ったような解らないようなままなのだけれど…まぁいいわ。ひとまず教会対応は私に任せてね。貴方も王家の対応と、明日からの龍の離宮への対応もお願いしますね」

「離宮へは、僕も同行していいかな?初日くらいは同行して様子を見たいんだけど。まだ休暇も残ってるし」


セグシュ兄様も明日は同行してくれるらしい。これは心強い……。


「じゃあ、明日は早く出ることになるだろうから……」

「あっ…!(セシーが寝ちゃいそう…)」


これは父様の声と…兄様の声と…。
……ふわりと浮遊感がして、ゆらゆらと揺れて。


「頑張ったね、セシー……」


どんどん重くなる瞼に抵抗が難しくなってきたところで、父様の、甘く優しい声が耳元から聞こえた気がした。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...