私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
39 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

39、side ユージア 合流したい。

しおりを挟む




「えっ!うそ~……なんなのこれ……」


さっきから、この言葉しか口から出てこない。リアルで頭を抱えてしまった。

ゼンにも王家側としても「色々と考えがある」とのことだから、セシリアが怪我をしない程度であれば、という事で静観してるわけだけど~。
何やっちゃってんの、あの子たち。

俺は今も相変わらず森から、ちびっこの大冒険を観察中だ。
本当は同行したかったんだけどね。
流石に教会から手配中だろう俺の姿を晒すわけにもいかないし。

ちょっと寂しく思いながら観察というか、馬車の移動をひたすら見ているだけなんだけども。
あ~も~……。
迂闊というかなんというか……。

確かに王都へは向かってるけど、どうして奴隷商の奴隷として運ばれてるのかな?
しかも犯罪奴隷用の運搬馬車で~。
何を考えてるの?

辻馬車と勘違いにしても酷すぎるよ~?





******





『さ、頑張ってらっしゃい!』

「ありがとう!」


ぱし!と風の乙女シルヴェストルに肩を叩かれて、森を街道沿いにまっすぐ進んでいく。

俺は王都へ手紙を届けて、少し状況確認のような話をした後、とんぼ返りをするように風の乙女シルヴェストルに最初に出会った森まで送ってもらって、そこから聖樹の丘に戻るように街道に沿って森の中を疾走していった。

王都で思いの外長く話し込んでしまったため、2人のいる場所に到着した時はすでに陽は落ちていた。


(夜目は利く方だから、特に問題はないのだけど……子供達は動けないよねぇ~)


2人は聖樹の丘を抜けてすぐの野営地で野営をしていた。

違うな、2人が熟睡したところで、近くで野営していた奴隷商に荷馬車に放り込まれてるのを見かけた。

中に入れられてもまだ寝こけてる2人。まぁ同乗者も子供だったし、セシリアに危害が加わりそうな感じはなかったから、そのまま傍観したんだけど。


(このまま王都に着いちゃったら、奴隷にされちゃうよ?)


ソイツ、教会に出入りしてる奴隷商の筆頭だし~?
違法の奴隷契約どころか、俺みたいに首輪つけられちゃう気がするんだけどなぁ。


まぁ隙を伺いつつ、中を覗いたりしてみたけど、2人の他の同乗者にも衰弱してるような子供もいなかったし、食事に関してもゼンの荷物カバンが取り上げられていなかったために、分け合って摂っていたし。
というか俺の方が少し空腹だ。

森での活動は慣れてるし、自己調達という意味では……できなくは無いが、火は使えないし、今の季節は春なので……自然の果実もほとんどない。
そういう意味では少し……まぁ、ゼンから受け取ったカバンの中にパンが少し残ってるけどね。


(温かいスープがちょっとだけ恋しいなぁ)


途中、真昼間にもかかわらず、盗賊の襲撃があったんだけど……凄いねぇ。
なんと途中まで軍馬に乗って移動してきてた盗賊だった。
軍馬を森に乗り捨ててそれから襲撃。そして乗り捨てられた軍馬は後から来た騎士が回収するというね。

盗賊(?)によって護衛の冒険者が倒されているので、パトロール中の騎士団が商団の護衛を申し出る、という形にしたかったのかな?

狙いは王都までの護衛のつもりか?それとも違法奴隷商としての動きを把握するためか?
あ、でも内偵が、そういう動きはすでに暴いちゃってるような気はするんだよねぇ。
正直何がしたいのかよくわからないけど、少しでもあの2人が安全に王都に入れるなら、良いのかな~?

商隊は徒歩の護衛を失い、騎乗の騎士団の護衛がついたことによって、隊の移動スピードが上がった。
このままいけば「安全」そして予定より「早急」に王都に着く。

俺は…さて、どうするかな。
王都の検問をどうしたものか。
正式な奴隷契約をガレット公爵家と交わした事になっているはずなら、それをネタに小間使いっぽく、ちょっとしたアイテムと手紙の配達ってことでなんとか通れる…かな?
面が割れてないと良いけど。
薬草なんかも持ってたら、外にいた理由になるかな?森でしか採れないし。


「よし、そうしよう!」


商隊が王城手前の野営地に入るのを確認してから、木から降りた。
ちょっとしたアイテムを見繕う事にした。


(セシリアは聖樹にやたら反応してたから……適当な薬草が良いな。可愛いやつならそれっぽく見えるかな~?)


暗部の仕事で歩き慣れた場所だから、大体どこに何があるかくらいは、わかる。


(確かこの先に連翹レンギョウの木があったはずなんだけど…)


……残念ながらまだ開花前だったようで見分けがつかない。
もしかしたらすでに花後なのかもしれないけど、実がついてるっぽい枝もないしなぁ。

連翹は、枝が色づいたかのように大量の黄色い花を咲かせるんだ。
咲かせた後につく実が薬として使われる。


(あれは結構目立ってたから、覚えてたのに、他に今、花の時期の薬草って……あった!)


低木のような垣根のように横に広がった、躑躅のような葉っぱに、白い小さな蘭のような花。細い華奢な枝に、たくさんの白い花を咲かせて、重そうに風に揺れていた。


(金銀花だ。これで良いかな?切り傷によく効くんだよね、これ。大聖女様に渡したら子息へ使ってもらえるかな?)


使えるのは葉っぱと蕾だったかなぁ?
まぁ季節によっても効果の強弱はあるし、そもそも薬師の腕も関係してくるだろうし、なんとかなるかな?
カバンから少し飛び出る程度で枝を折り取って、束にしてしまい込んだ。


(これ、匂いがなぁ……薬草なんだから、もうちょい元気になりそうな良い香りしててほしいよね!)


結構な束になったのを確認して、満足し、そのまま森を出て街道を歩き始める。
商隊はまだ、野営地にいるのが見えた。……馬のペースで移動してたから、馬の休憩だろうなぁ。


(荷馬車引きながらだと、馬を潰しかねないだろうし)


タイミング的にはこのまま王都に着けば、ちょうど商隊が追いついて検問を抜ける頃には、俺も王都の入場許可を得てるはずだ。……多分ね。


──早くセシリアに、会いたい。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...