私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
57 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

57、再会。

しおりを挟む


「セシリア…セシリア……ん?…そうか!君がユージアの新しい飼い主なんだね!うちの子をよろしくたのむよ」


さらりとこぼれ落ちる黒の艶髪の奥で、ふわりと口角を上げて笑みを浮かべている……が、目が笑っていない。
観察をするように、じーっと見つめられている。

……う、うちの子ですと?!ていうか、飼い主ってなんだ!
そうかぁ、ルークは結婚してたんだなぁ。
奥さん、どんな方なんだろう?

ユージアは奥さん似なのかな?ルークはキレイ系だったけど、ユージアは可愛い系?
なんだろう、将来有望な美形にはなるだろうけど少なくともルークとは系統が違う気がする。

一気に入り込んできた情報と、浮かんでは消える様々な昔の記憶との処理に目を丸くして固まってしまっていたのだろう、背後から呆れた声で、父様の声が聞こえてくる。


「セシリア、彼はスルーズヴァン辺境伯のハンスイェルク。魔術師団の研究部門の団長だよ。そして……ユージアの父親らしい…名乗り出てきたんだ」

「なるほど…ユージアの飼い主はアルフレド宰相の末娘で、花で…そうか……ふふふ。そうかそうか、王家の血もついに極まれけりと言ったところか…これは…」

「セシリア、行こう」


ユージアの抑揚のない声が聞こえて……機嫌が悪い、いや、汚いものでも見るかのような目でルーク見ると私の手を引き、抱き上げるとその場を離れるために歩き出す。
まぁ確かにルークの素行は怪し過ぎるけど、自分の父親を変質者か何かを見るような目で思いっきり警戒するのは、やめたほうがいいと思うんだ。


「セシリア嬢、花の香は一時的に抑えたが…すでに香の虜になってるものには、この…まやかしは効果が無い。気をつけるんだよ」


あいかわらずの呟き会話だったけど、去り際に言われた花と香。何の事だろうね?
そして、ユージアが絶賛ご機嫌斜めである。
ゼンに至っては、会場に入った直後に、部屋の隅に敷かれた柔らかそうな絨毯の上を陣取って、丸くなって寝てしまった。


「ゆーじあ、おこらないの。わらって?」

「笑えない~!再会を喜ぶどころか、いきなり襲いかかってくるのが親とか、しかも契約解除しろとか、絶対イヤだから!」


契約?私との奴隷契約のことだったら、もうユージアが悪い子じゃないのはわかってるし、警戒すべき事ももう無いだろうから、むしろ喜んで解除するよ?
ルークがいきなり襲いかかるってのは……うーん、何考えてたんだろう?

ひとまずだ、私の側にいてくれる人たちの機嫌が悪いってのは、すごく居心地が悪いのですよ。


「おけが、なおしゅ?」

「あ~してないっ!全然してないからね!?ていうか…そういうのじゃなかったから……うん、痛いところはないよ、大丈夫!」


即座にびくり!と体を身構えるように固くして、必死に否定をしてくる。
私の治療はそんなに嫌、というか痛いのかな……優しくしてるはずなのに。


「どういうの?」

「う~ん、あ~、そうだね…いきなり服奪われたりとか?……まぁ、とにかくあの変態には近づいちゃダメだよ」


ルークは研究バカだったけど、変態じゃなかったはず……何があったんだろうか…。
ユージアの微妙に言葉に詰まりながらの説明の様子が余計に気になって、うんうん唸ってる間に晩餐の席に到着してしまった。

席は大きな楕円のテーブルにそれぞれネームプレートが置かれているのが見えて、その通りに着席する事になる。

ユージアの席は案の定ではあるが、ルークの隣に準備されていた。
それに気づいたユージアは、凄い勢いで私の隣にネームプレートを置き直し、会場準備中のスタッフにプレート以外にすでに準備されていたカトラリー等の移動をしてもらっていた。

その作業を眺めつつも、常にルークが近づいてこないように警戒し続け……その整った端正な顔の眉間に不機嫌なシワを作っていた。
それはもう、父様と同じく眉間がしわしわになりそうな勢いで。


「ほら、わらって~」

「い~た~い~!今は笑わないよ!」


ユージアの両頬を摘み上げて、無理矢理笑顔を作る。
私を抱き上げたままなので、片手しか反撃に使えないのをいい事に、手を頰から外されても、しつこく摘み直…していたら、片手だけで両手を抑えられてしまった。くやしい。


「わらってよ~!こわいかお、いや~」

「じゃあ『私の物だから、契約も解かないし、返しません!』ってあの変態ルークに言ったら、笑ってあげる」


おい、それどこのフィアですかっ!絶対に嫌だからね?
そもそも契約で縛り付けてるってのも嫌なんだから。
奴隷契約は、用途上必要な場合があって、使うこともあるんだろうけどさ、今の私やユージアの状況では全く必要ないはずだし!

そもそも、契約の維持に必死になっているユージアの考えがわからない。


「ゆーじあは、ものじゃないよ。ひろってあげるって、いっちゃったけど、ものじゃないよ」

「セシリア、今、気にするべきはそこじゃないよ!契約を解いたら、僕は側に居られなくなっちゃうんだよ。セシリアを助けに行けなくなっちゃうんだよ」


側に……いられなくなっちゃうってのは嫌だな。
でも、思ったんだけど、辺境伯の子息って事になるのなら母様の言ってた「書類上の出自の分からない人間」では無くなるのだから、やっぱり奴隷契約解除してもいいと思うんだよね?
奴隷よりずっとまともな身分証明ができたのだし、それ以外はそのまま……あ、側にいれなくなっちゃうってのは実はユージアが跡取りとかそういう関係なんだろうか?


「あれ、今日はレイはいないんだな」


再びうんうん唸りそうになっていると、背後から声をかけられる。振り向くとそこには、藤色の髪の少年がいた。
登城するにあたって、がっつり磨き上げられ、広がりっぱなしにされていた髪もサイドに流され、奴隷運搬用の荷馬車内にいた時とは全く違う印象でカッコいい。
ただ、用意されたかっちりとしたスーツといい、部屋の雰囲気といい、どうしても慣れないのか、とても居心地悪そうにしていた。


「える!」


両手を封じられてしまったので、脚をばたばたさせてユージアのお姫様抱っこから降ろしてもらい、エルネストの元へ近づく。

あれ、抱っこ移動が基本になってきて、ここのところまともに歩いてないぞ?


「セシリア、昼ぶり?ユージアさん、ありがとうございました。無事会えました」

「ユージアでいいよ~僕もエルって呼ばせてもらうし!」


深くお辞儀をするエルネストに対し、人懐こそうな笑顔で返すユージア。

あの時、奴隷運搬用の荷馬車で一緒に運ばれ、私たちより先に商館のようなところで降ろされて行った4人の子たちとエルは再会できたのだそうで。
私達より小さな子が多かったから、エルはすごく心配していたんだ。
教会についた時も、何とか抜け出して助けにいけないかとずっと考えてたみたいだったし。

そう言えば、教会でユージアとエルが内緒話してたのはこの事だったのかな?

どうやら既に先回りしていた内偵が、子供達が引き渡された直後に確保に向かったようだった。
ただ、そこの商館はあくまでも私達の行った教会のような目的ではなく、慈善事業の一環だった事がわかった。

孤児院から毎年数人の幼児を引き取って、読み書き全般を教え、そのまま商館の人材として、採用する。
希望すればそのまま独り立ちや、自分の好きな職につけるようにも斡旋していたとかで、孤児院自体が教会の影響下にあったために教会を通じて、幼児を紹介してもらっていただけのことであり、まさか人買いを介していたとは思ってもいなかったとの事、らしい。

そのために交わした書類もしっかり残っていて、確かに教会と孤児院相手に交わした事になっていた。
……実際のところは、少しは事情を知ってたんじゃないかとは思うけどね。

ただ、引き取った子供達は少なくとも過去5年以内の子の書類は全て揃っており、そのどの子供達も、それぞれの事情はありつつも、しっかりと教育を受け、それぞれの生活を手に入れていることがわかり、あくまで慈善事業である事、子に害のある団体ではない事が証明されたそうだ。


「あいつらは、そのままあの商館に引き取られる事になったんだ。だから、いつでも会える」

「えるは……?」

「──あら、皆さん揃ったようね。では始めましょうね」


エルに関してはどうなったのだろう?
聞こうと声をかけた直後に、母様の柔らかで良く通る声が、館内に響き渡る。
声の方向へ振り向くと、館の奥の扉からぞろぞろと人が入ってくるのが見えた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...