私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

68、庭園。

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「ここ!すごいでしょう?ここからね、セシリアがみえたんだよ!」


シュトレイユ王子に手を引いて連れていかれた先は、薔薇の素敵な庭園…が真上から見渡せる空中庭園。すごい。
しかもここ、蛍のような光がいっぱい舞っていたところ。
今もふわふわと光の球がたくさん舞っていて、めちゃくちゃ綺麗。

満面の笑みを浮かべて、興奮気味に説明するシュトレイユ王子のふわふわの髪も、そんな光の球に優しく照らされて、自らも淡く光を放っているように見えて、綺麗だった。

昨日、晩餐会の会場へ移動中で見かけたのは、月明かりと精霊の淡い光に照らし出される、美しく手入れされた草木からなる空中庭園。
そして今は、朝、というには少し遅いおやつくらいの時間なのだけど、それでもふわふわと舞う精霊の光の球はほんわりと存在感を示している。

神秘的ともいえる光景に見惚れていると、光の球達はふわふわと吸い寄せられるように、シュトレイユ王子とユージアに集まり始める。


「うわっこれ精霊だよね?やっぱ、姿は見えないんだけど……」

「あれ、ユージアはエルフなのにみえないの?」

「見えないなぁ~。修行不足らしいよ?」


さすがエルフと言うべきか!と思ったのだけどユージアにはエルフが見えていないらしい。このお庭は精霊が見えない人にも見えるような仕掛けがあって、見えなくても光の球としてなら視覚認識出来るようにはなっているって晩餐会の会場へ移動中にゼンが言ってたし、ユージアには私と同じ様に精霊が光の球に見えてるんだろうね。

集まられてる事に挙動不審になりつつも、シュトレイユ王子とユージアを取り囲む様に光の球がどんどん増えていく。羨ましい。


「みえないどころか、あつまってもくれない…」

「あ……それはね。なかよくなれば、きてくれるようになるよ。こえはきこえる?」

「「きこえない」」

「あれユージアも?……ここはね、せいれいがあつまるばしょ、なんだって」

「あぁ、本当だ。精霊樹があるんだね。セシリア、あの樹、精霊樹って言って聖樹が育った一つの姿だよ。精霊を生み出したり、住処となったり……そうだなぁ、精霊のお母さんみたいな樹」

「せいれいじゅ!」

(なんと!精霊樹が王城にあるとか……どうなってるのメアリローサ王国このくに
)


あ、精霊樹って聖樹よりは大きいけど、聖樹と同じでまだまだ、か弱い部類なんだよね。育てるのが凄く大変で、これもエルフの里でしかお目にかかれない。
エルフの精霊使いが他の種族の精霊使いと比べ物にならないくらいに腕が良いってのは、小さい頃からそばに精霊がいる環境で育つからってのがある。

他の種族の精霊使いがポンコツっていうわけじゃないんだよ?
エルフの里に住んでいたら、常日頃から精霊を目にするのは当たり前だから、精霊のその性質や性格なんかも把握しやすいもんね。
精霊使いっていうのは、精霊の力を借りたり、精霊自体を行使しての術が基本だから、契約をしてもらうためにも、仲良くできる環境やきっかけってのが凄く大事なんだ。

特に高位の精霊になると意思もあるし自我が強く…簡単に言えば人間臭いって感じかなぁ。
低位の精霊であれば「必要な魔力と報酬さえもらえれば働くよ?」ってのが基本だけど、高位になると「お友達価格にしてあげる!」とか、呼び出したタイミングが悪いと「あなた嫌いだからあんまり呼ばないで」とか……正規に契約していても素で言われる。悲しい。

まぁ、今世いまセシリアは精霊の相性はあんまり良くなさそうだから、気にしなくても良さそうだけどね。
そう思いながら、精霊樹に近づいて魔力を込めた声でカーテシーでご挨拶をする。


『はじめまして、よろしくね』


……いつもの癖で樹の根元の太さを見つめてしまう。
聖樹の丘の倒木となっていた聖樹より、二回りほど大きい。
あの聖樹も、倒れずに育てば精霊樹になってたのだろうか?新芽がいくつも見えていたから、頑張って復活して欲しいな。


(そうだ、精霊樹が聖樹の育った姿なら、一つだけお願いさせてもらおう)


そう思って、聖樹の種を取り出す。
ハンスイェルクルークに全て渡そうとしていたのだけど、こういうのはエルフの方が適任だと思うし、とても貴重で大事なものだから、今のセシリアこどもが持ってて良いものじゃないとも思ったし。そう思っていたのに種の一つがどうしても手に貼り付いて、まるで「イヤイヤ」でもするかのように渡されることを拒んだので、今もここにある。


『このこを、おうちで、そだててもいいでしゅか?わたしで、そだてられましゅか?』


精霊樹の根元に置こうとしたら、またもや手に貼り付かれて剥がれなくなってしまったので、根元に種を押し付けるようにそのまま私も根元に触れる。
聖樹が喋れてたし、精霊樹も喋れるんじゃないかな?と思ったんだけど、特に反応は無かった。

やっぱり、聖樹はともかく精霊樹となると……精霊の大事な母なる樹だもんね。
精霊と相性が悪いっぽいセシリアわたしじゃ、反応してもらえないのかな。
精霊樹の反応が全くなくて、しょんぼりと後ろを振り向くと、シュトレイユ王子とユージアが光の球にまみれて、2人でなにやら楽しそうに語らってる。


(あの2人に、精霊と仲良くなる秘訣から教えてもらってリトライかなぁ)


そう思いつつ、2人の元へ戻り始める。


「あ、セシリア~。精霊樹見れた?立派でしょう~?聖樹があれくらいに太く大きくなると、個性が出てくるらしいんだよね。セシリアの種は、なんの樹になるんだろうね?」

「セシリア!あのきにさわれたのなら、せいれいとおともだちになれるよ」

「でも、みえないし、きこえないよ?」

「きらわれてると、さわれないから。あのき」

「僕も触ってこよう~。見えるようになるかな?」


そう言って、精霊樹に向かって小走りに近づくユージアを見送りつつ、シュトレイユ王子に精霊と仲良くなるコツを教えてもらおうと、光の球にまみれたその姿に向き直った瞬間、シュトレイユ王子にぐいっと抱き寄せられた。


「セシリア、こっち!いそいで!」

「えっ!?」


何か危険なんだろうか?
ユージアは気づいていないのか、精霊樹へ向かって小走りからスキップのようになりながら、楽しげに歩いている姿が見えた。
シュトレイユ王子は私をぎゅっと抱き寄せたまま、片手を前に突き出すようにして、障壁を張った。
精霊の球達も、その障壁に溶けるように霧散していく。
……多分、障壁を張る手伝いを精霊がしてくれているんだろうか?


(障壁を張るような何かって何だっ!?)


私の視界には、何も認識できない。
何か飛んできてるようにも見えないし、人や生物の気配もないと思う。

シュトレイユ王子は夜とは違い、白く薄く見えている月の辺りの宙をじっと睨む様に、障壁を張り続けている。

そもそもここは王宮だ。こんな所に障壁を張らなくちゃいけない危険な事態になるのって何だ?


『見つけた……やっと、見つけた……!』


……どこかで聞いたことのある声が頭に直接、響いた。


「ユージアっ!ハンスイェルクハンスさまをっ」

「もう来てる。王子…大丈夫だ。これは……精霊の気配だ。とても珍しい…精霊だが」


視界を遮る様に、ふわりと姿を現したハンスイェルクルークは、目の前で起こっている事象を確認すると、シュトレイユ王子の横に立ち、危険はない、と頷いて見せる。

精霊樹の前で立ち竦むユージアの少し手前くらいに、黒い光が収束していく。
庭園を幻想的に舞っていた淡い七色の光とは対称的な漆黒。
しかし、光を放っているようにも見える不思議な光の球。

収束し、人の姿を取り始めると、シュトレイユ王子はより一層、警戒の色を強め、ユージアは固まる。

ハンスイェルクルークは眉を顰めつつ、その姿を認め、こちらに視線をやり、にやりと笑う。

……そして私はその姿に悲鳴を上げた。心の中で。


(──ぎゃあああ、なんて格好で出てくるのよっ!)


人型をとったその精霊は、ハンスイェルクルークと瓜二つ、そして、前前世むかし彼がよく使っていた、というか当時はむしろこれしか着てなかったね。学園指定のローブを着けていた。
その精霊は、周囲の反応なんて全く気にせず、まっすぐこちらへ歩いてくると、シュトレイユ王子が張った障壁を触れただけで霧散させると、その様子に呆然としてしまったシュトレイユ王子と私の前へ跪く。


『姫、契約通りに御迎えにあがりました』


……あれ、これ……えっと、どうしよう?
ていうか、もう…誤魔化しも、逃げ場もないよね?!

姫って何?!


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