私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
72 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

72、お姉さん。

しおりを挟む




まぁ、私の気分がすでに、七五三なのだけど。

ドレスの袖先がフレアになって広がっているのが可愛くて、腕を上げ下げしたり、胸元がリボンで編み上げになっているのは可愛くて触ったら、少し緩んでしまって注意されたり……楽しくてしょうがない。


(可愛いなぁ。ドレス嬉しいなぁ)


……こういう服、実は初めてなんだよね。
日本で転生していた前世では、ウエディングドレスを着たけど…それ以前の更に前の前世達は、残念ながら着飾る様な立場には居なかったし、そういう機会があったとしても、基本的には制服着用で間に合っちゃってたし。

動きにくそうだし、コルセットとか苦しそうだしさ……。
あんまり良いイメージがなかったのよね。
それでもこうやって着飾らせてもらうと嬉しいものだね。


(これで食事とか、うっかり汚したら泣いてしまう)


あ、これから食事か……。

この袖、絶対に何かくっつけそうだ。
でも、そうか。そこそこ成長したから、自分で大人の椅子に座れるし、食事も頑張れば普通程度には食べれるはずだ。
マナーは……自信ないなぁ。


「さぁ、出来ましたよ~。正餐室せいさんしつへ参りましょうね」

「せいさんしつ?」


お着替えセットと、化粧品やらアクセサリーやら、手際よく片付けて、にこりと笑顔で部屋の外へ誘導されていく。
いつもならセリカがしてくれている事なのだけれど…今日は、母様の専属メイドの後ろに控えて、彼女の手伝いと、これからの動きを教えてもらっている感じになっている。


「いつもお食事をされているお部屋ですよ。皆様お揃いの様ですので少し急ぎましょうね」

「あ、食堂の事ね!」


手をぽん!と納得。と思ったのだけど、周囲は少し不思議顔。
あれあれ?とセリカを見ると、同じく母様の専属メイドにも不思議な顔で目配せをされていて、首を横に振っていた。
うん「食堂」はセリカに教わった言葉じゃないよ。


「食堂は……。セシリア様、食堂というのはこのお屋敷では、使用人しか使いません。正餐室せいさんしつとはまた別のお部屋となります」


あ、はい、食堂じゃないんですね。
ずっと食堂だと思ってたよ。
だって食べる所でしょう?
前前世むかしの学園で食事をとっていた部屋も、食堂だったはずだし、食堂ってつまりダイニングだよね?
って事は、正餐室せいさんしつもダイニング?


(あれ……そもそもダイニングってなんだっけ?)

「食堂、という言葉自体も、どこで知ったのかしら?セシリアはお利口さんなのね。あとで、お話が楽しみだわ」


ふふふっ。と母様が楽しげに笑っている。
なんかその素敵な笑顔とともに囁かれる言葉が、ピンポイントに何かの的をえている様な気がして、最近得体のしれないものに見えて怖いです。
のほほんとした、優しさからだけの笑顔じゃないよね?きっと。

これはちょっと……王城でもだけど、いつも以上に言葉遣いを気をつけないと、無意識に墓穴を掘りまくりそうな予感。
浮かれてる場合ではないかもしれない。






******






「父様、皆様、おはようございます」


カーテシーをして…背筋を曲げない様に…笑顔で顔を上げる…っと。
多分出来た!
笑顔がドヤ顔になっていそうな気もしなくはなかったけど、ちゃんと出来たよ!


(大人の身体!前世ひさしぶり!)


そう思いながら、顔を上げた先を見渡すと、父様とセグシュ兄様……そして、表情に「動揺」というものを持ち合わせていないんじゃないのかと常日頃思っていた家令すらも、ぽかんとした、呆気?びっくり?鳩が豆鉄砲をくらってしまったかの様に、表情どころか、時すらも、止めていた。


「セシー……かい?これはまた一気にお姉さんになっちゃったね」

「起きたら、この姿でした。お姉さんに見えますか?」


一早く復帰した父様に……これは褒められたのかな?にこり、と笑みで返事を返しておく。
まぁ、でも、ちょっと……じゃない、見事に眉間がしわしわだ。これは、困ってるよね。


(振り回しまくってしまってごめんなさい、と言いたい所だけど……)


ここのところのトラブルって、基本的に私が引き起こしたというより、巻き込まれてるものばかりだから。
今回も、起きたらこの状態だったから、自分ではどうしようもなかったから!
……子供らしく、この状況を楽しむ様に、にこにこしておくことにした。


「素敵なお姉さんになったね、セシー。……僕より、背があるんじゃないかな?」

「えっ…?あれ?」


セグシュ兄様が、呆れ笑いを浮かべつつ私の隣へと並び立つ。
兄様との視線が同じ高さでびっくりなんだけど!って事はつまり身長近いよね?


「少しだけ、セグシュの方が高いわね?これくらい」

「……頑張らないと、抜かされそうだね」

「えへへ」


「これくらい」と母様が親指と人差し指とで、見せてくれている。
いやいやいや……兄様、まだまだ成長期でしょう?
これから伸びますよ!

セグシュ兄様は成人したての15歳だから、まだまだこれから伸びますよと。
もともと、大体165以上、もしくは170センチになりそうな高さに見えてたんだよね。
そこから考えると、今の私は160センチと少しあるくらいになるのかな?
かなり背の高い感じがする。


(……これだけ身長あったら、ヒールのある靴じゃなくても良さそうだよね?)


ヒールのある靴は苦手なのですよ。
私の席はセグシュ兄様の席の隣、と言ってもかなり間が空いてるんだけどね。
席に着くと、ちゃんと大人の椅子!そしてちゃんと座れるのが嬉しい。

座って前を向くと、正面にはエルネストが座っていた。
怯えの色が混じる警戒の眼差しで、私を凝視している。


「エル、おはよう?」

「……おはよう」


……挨拶したら、思いっきり目を逸らされてしまった。
私、怖いかな?
もふもふしようと考えていたのがバレてしまったのだろうか?

確かに異常事態だけど……って、あれ、ユージアがいない。
あ、使用人だから、食堂で食べるのかな。
一緒ならよかったのになぁ。

あれ?じゃあエルネストは使用人じゃないんだね。
どういう扱いで、ガレット公爵家うちで暮らすんだろう?
貴族ってこういうの細かくて、面倒だよね。

そうこう考えてる間に、食事が始まり、父様と母様の仲良し会話をBGMに気づけばお茶まですすんで。
うん、やっぱり手や腕が長いって便利だね!
いつものカトラリーと食器、食事との格闘が嘘の様だったよ!


「父さん……セシーをこのままお城に行かせるの、凄く怖いんだけど」

「俺も不安なんだが、初日があれで、今日も駄目ってわけにはなぁ……。まぁ、ユージアと同じ様なものだから」

「……そうなんだけど。ユージアはしっかりしてるからね?」


にこにこ、うきうきとしているとてもご機嫌な私を眺めながらセグシュ兄様が父様に呟き、父様は頭を抱える様に唸っていた。

あ、そうか、中身が幼いって意味ではユージアも一緒なんだね。
でも父様も兄様も、そんなに心配しなくても大丈夫だよ!
私はそこまで幼くないよ!多分…ね。
……今日の登城が、ものすごく楽しみでしょうがないのは事実だけど。
ちゃんとお行儀良く出来ますよ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...