87 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
87、正体。
しおりを挟む「そうねぇ……知りたいけど、物凄く知りたいけど!……さっきの事もあるし、あんまり意地悪するなら、休憩の時は廊下で過ごしてもらおうかしらね?」
「流石にそれは……嫌かな」
寒いよね、きっと。
一応だけど、この学園は地下施設である。
地下施設って言っても疑似的な日光が入るようになっているし、時間ごとにその日照レベルも季節感込みでしっかり管理されているので、学園に籠るように暮らしていてもゾンビのように青白い人間にはならないし、お肌のケアを放置するとしっかり日焼けまでする。
ただ、今は非常事態というか、機能を押さえての運転にしてあるので、廊下の気温調整は少し低めになってる。
室内に関しては生命維持の関係からか、しっかり暖かいのだけどね。
「大丈夫よ。ベッドもちゃんと二つあったからルークの分は廊下に運んであげるわよ」
「二つ……という事はユージアはどうするんだ?」
「私と一緒だよ、子供は放置できません~」
にこりと笑みを浮かべて、ベッドくらいは貸してあげるわよと優しさを見せたつもりなのだけど、ルークの柳眉が唐突に上がる。
「ユージアだって子供じゃないだろう……」
「今は子供だもん。良いのよ。お風呂も一緒かな?幼児の1人お風呂は心配だし~?」
「それは……ユージアが泣くと思う」
「そう?可愛いから良いのに。あはははっ」
身体と心の年齢にギャップがあると色々面倒よね。
まぁ私としては、ユージアを子供(孫かも?)として見てるけど、きっとルークは自分の息子だけど、子ではなくて成人した大人と扱っているんだろうね。
そんな感じの反応に見えるよね?
「あ、そういえばだけど、ユージアのいつもの姿のサイズの制服と下着、準備してなかった。探してくるね」
「あぁ、それは私が探しておこう。それより……そろそろ昼過ぎくらいになるが、食料を見てきてくれないか?……1000年も保ってるものがあるのか怪しいところだが」
「1000年もののワインとかならともかく、サンドイッチとか?あははっ!見てくるね」
「ジャムとか保存食なら……でも1000年は厳しいか」とか考え始めながら、くるりと踵を返したところで、ふわりと白檀の香りに包まれる。
体格差もあって、ルークに背後からすっぽりと包まれるように抱きしめられていた。
髪に顔を埋められているのだろう、方頬にあたる息が熱い。
「やはり、良い香りだ…おかえりシシリー」
……子供としてなら、こういう状態は好きだ。すごく安心する。
けど、自分が異性として見られているだろう相手からの、この状況は嫌だ。
顔が見えないし。逃げられないし。
「私はシシリーでは無いよ。シシリーの記憶は部分的にあるけど、今はセシリアとして生を受けてここに居るの。私はセシリアだよ」
肩の前で組まれたルークの腕をぽんぽんと触れると、力が緩んだので解くと、その手を頬で触れる。
大きくて、でも細くてしなやかな指の長い、綺麗な手。
白檀の香りも相まって、すごく落ち着く。
……さっきからやたらと接触されて気づいたんだけど、私より少し体温高いんだよね、それがすごく安心するんだけど、基礎代謝の違いとか、やっぱり若さからだろうか?……あれ、今は私の方が若いのか。あれ?まぁいいか。
「……でも、シシリーを覚えていてくれて、ありがとう……まさか、また逢えるとは思ってなかったから、すごく嬉しかったのよ」
頰で触れていた手を離し、抱擁から脱出すると、振り返りルークを見上げる。
俯き零れ落ちる長い黒髪で、表情ははっきりと見えなかったけど、琥珀色の瞳潤み、形の良い口元が悲しげに歪んでいて。
「あれ。ルーク、泣いてる?……もしかしてシシリーってば、かなり惨たらしい死に方だったとか……?」
「……教えない」
「死因だけ、というか亡くなる付近の記憶が曖昧なのよね……ルーク、もしかして何か知ってる?」
「知らない。あんなもの、知らなくていい」
覗き込む私の視線を遮るように、悲しげに歪む顔を、片手で覆い隠してしまった。
……これは絶対に何か知ってる。
やっぱりグロかったんだろうか。
魔物の氾濫の時だと思うから、グロか。
魔物には恐竜レベルの巨大なのもいたし、グロ以前にぺちゃんこだったとか?
あ、でも、魔物だもんなぁ。
食べられちゃった?もしくは吸われちゃった?ううううーん?
ダメだ、気になり始めるとキリがない。
ルークがその端正な顔に感情をはっきりと出すのが珍しくて、まじまじと見つめてしまいかけて、はっと我にかえる。
(もう、こんな悲しそうな顔でさえ絵になりそうなほどに素敵なんだから、美形ってずるいわ)
俯いたままのルークの、さらさらと零れ落ちる艶やかな黒髪に両手を差し込み、後ろに流すと、そっと頭を引き寄せ……頬に、キスをする。
……本当は、背伸びをして頑張ったけど、ちょっと高さが足らずに顎になっちゃったけど。
「ま、いいや。ルーク、せっかく逢えたんだから、笑って?……これからも改めて、よろしくね」
「あ、あぁ……」
ルークから離れると、にこりと笑って見せる。
悲しい顔、止まったかな?そう思い改めて見上げると、少し呆けた顔から徐々に頬が赤く染まっていくのが見えた。
表情が豊かすぎて、ルークがなんだか可愛く見えてしまった。
「じゃ、食料見てくるから、ユージアの制服よろしくね~」
「そうだ……『花』でも、君がフリーなら、良いのかい?」
「ん?フリー、ならね…?」
「なるほど」
ふっと浮かぶ笑み……いや、何か含みのある顔だなこれは。
嫌な予感しかしないので、条件を付け足す。
正直、ルークと知恵比べのようなことで勝てた試しがないから、避けれるべき事はちゃんと避けれるように考えておかないとね。
「ただし!どんな理由をつけようが、今はダメ!成人するまではダメ!3歳児に一生の選択をさせないで」
「……考慮しよう」
「じゃ、また後でねっ!」
さっさといろいろ準備しなくちゃね。
流石に寝てるとはいえ、ユージアを1人で待たせるのも怖いし。
ていうか、ユージアが本当にあの見た目そのままの幼児であれば、1人でお留守番とか私としては言語道断なんだけど。
寂しさとかじゃ無い、自宅では無いから火事とかの心配はない。
……その他の事故や怪我が怖いから。
小さな子供って思いもよらないようなトコで、とんでもない大怪我をしてくれるんだよね……。
2
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~
結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』
『小さいな』
『…やっと…逢えた』
『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』
『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』
地球とは別の世界、異世界“パレス”。
ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。
しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。
神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。
その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。
しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。
原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。
その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。
生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。
初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。
阿鼻叫喚のパレスの神界。
次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。
これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。
家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待!
*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈
小説家になろう様でも連載中です。
第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます!
よろしくお願い致します( . .)"
*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる