私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

87、正体。

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「そうねぇ……知りたいけど、物凄く知りたいけど!……さっきの事もあるし、あんまり意地悪するなら、休憩の時は廊下で過ごしてもらおうかしらね?」

「流石にそれは……嫌かな」


寒いよね、きっと。
一応だけど、この学園は地下施設である。
地下施設って言っても疑似的な日光が入るようになっているし、時間ごとにその日照レベルも季節感込みでしっかり管理されているので、学園に籠るように暮らしていてもゾンビのように青白い人間にはならないし、お肌のケアを放置するとしっかり日焼けまでする。

ただ、今は非常事態というか、機能を押さえての運転にしてあるので、廊下の気温調整は少し低めになってる。
室内に関しては生命維持の関係からか、しっかり暖かいのだけどね。


「大丈夫よ。ベッドもちゃんと二つあったからルークの分は廊下に運んであげるわよ」

「二つ……という事はユージアはどうするんだ?」

「私と一緒だよ、子供は放置できません~」


にこりと笑みを浮かべて、ベッドくらいは貸してあげるわよと優しさを見せたつもりなのだけど、ルークの柳眉が唐突に上がる。


「ユージアだって子供じゃないだろう……」

「今は子供だもん。良いのよ。お風呂も一緒かな?幼児の1人お風呂は心配だし~?」

「それは……ユージアが泣くと思う」

「そう?可愛いから良いのに。あはははっ」


身体と心の年齢にギャップがあると色々面倒よね。
まぁ私としては、ユージアを子供(孫かも?)として見てるけど、きっとルークは自分の息子だけど、子ではなくて成人した大人と扱っているんだろうね。
そんな感じの反応に見えるよね?


「あ、そういえばだけど、ユージアのいつもの姿のサイズの制服と下着、準備してなかった。探してくるね」

「あぁ、それは私が探しておこう。それより……そろそろ昼過ぎくらいになるが、食料を見てきてくれないか?……1000年も保ってるものがあるのか怪しいところだが」

「1000年もののワインとかならともかく、サンドイッチとか?あははっ!見てくるね」


「ジャムとか保存食なら……でも1000年は厳しいか」とか考え始めながら、くるりと踵を返したところで、ふわりと白檀の香りに包まれる。

体格差もあって、ルークに背後からすっぽりと包まれるように抱きしめられていた。
髪に顔を埋められているのだろう、方頬にあたる息が熱い。


「やはり、良い香りだ…おかえりシシリー」


……子供としてなら、こういう状態は好きだ。すごく安心する。
けど、自分が異性として見られているだろう相手からの、この状況は嫌だ。
顔が見えないし。逃げられないし。


「私はシシリーでは無いよ。シシリーの記憶は部分的にあるけど、今はセシリアとして生を受けてここに居るの。私はセシリアだよ」


肩の前で組まれたルークの腕をぽんぽんと触れると、力が緩んだので解くと、その手を頬で触れる。
大きくて、でも細くてしなやかな指の長い、綺麗な手。
白檀の香りも相まって、すごく落ち着く。

……さっきからやたらと接触されて気づいたんだけど、私より少し体温高いんだよね、それがすごく安心するんだけど、基礎代謝の違いとか、やっぱり若さからだろうか?……あれ、今は私の方が若いのか。あれ?まぁいいか。


「……でも、シシリーを覚えていてくれて、ありがとう……まさか、また逢えるとは思ってなかったから、すごく嬉しかったのよ」


頰で触れていた手を離し、抱擁から脱出すると、振り返りルークを見上げる。
俯き零れ落ちる長い黒髪で、表情ははっきりと見えなかったけど、琥珀色の瞳潤み、形の良い口元が悲しげに歪んでいて。


「あれ。ルーク、泣いてる?……もしかしてシシリーわたしってば、かなり惨たらしい死に方だったとか……?」

「……教えない」

「死因だけ、というか亡くなる付近の記憶が曖昧なのよね……ルーク、もしかして何か知ってる?」

「知らない。あんなもの、知らなくていい」


覗き込む私の視線を遮るように、悲しげに歪む顔を、片手で覆い隠してしまった。

……これは絶対に何か知ってる。
やっぱりグロかったんだろうか。
魔物の氾濫スタンピードの時だと思うから、グロか。
魔物には恐竜レベルの巨大なのもいたし、グロ以前にぺちゃんこだったとか?

あ、でも、魔物だもんなぁ。
食べられちゃった?もしくは吸われちゃった?ううううーん?
ダメだ、気になり始めるとキリがない。

ルークがその端正な顔に感情をはっきりと出すのが珍しくて、まじまじと見つめてしまいかけて、はっと我にかえる。


(もう、こんな悲しそうな顔でさえ絵になりそうなほどに素敵なんだから、美形ってずるいわ)


俯いたままのルークの、さらさらと零れ落ちる艶やかな黒髪に両手を差し込み、後ろに流すと、そっと頭を引き寄せ……頬に、キスをする。
……本当は、背伸びをして頑張ったけど、ちょっと高さが足らずに顎になっちゃったけど。


「ま、いいや。ルーク、せっかく逢えたんだから、笑って?……これからも改めて、よろしくね」

「あ、あぁ……」


ルークから離れると、にこりと笑って見せる。
悲しい顔、止まったかな?そう思い改めて見上げると、少し呆けた顔から徐々に頬が赤く染まっていくのが見えた。
表情が豊かすぎて、ルークがなんだか可愛く見えてしまった。


「じゃ、食料見てくるから、ユージアの制服よろしくね~」

「そうだ……『花』でも、君がフリーなら、良いのかい?」

「ん?フリー、ならね…?」

「なるほど」


ふっと浮かぶ笑み……いや、何か含みのある顔だなこれは。
嫌な予感しかしないので、条件を付け足す。
正直、ルークと知恵比べのようなことで勝てた試しがないから、避けれるべき事はちゃんと避けれるように考えておかないとね。


「ただし!どんな理由をつけようが、今はダメ!成人するまではダメ!3歳児に一生の選択をさせないで」

「……考慮しよう」

「じゃ、また後でねっ!」


さっさといろいろ準備しなくちゃね。
流石に寝てるとはいえ、ユージアを1人で待たせるのも怖いし。
ていうか、ユージアが本当にあの見た目そのままの幼児であれば、1人でお留守番とか私としては言語道断なんだけど。

寂しさとかじゃ無い、自宅では無いから火事とかの心配はない。
……その他の事故や怪我が怖いから。

小さな子供って思いもよらないようなトコで、とんでもない大怪我をしてくれるんだよね……。


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