私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
88 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

88、調達。

しおりを挟む




食堂へは、迷わず向かう事ができた。
やっぱり懐かしさでいっぱいだね。
そういえば、学園内の衣類とか書類なんかを見て思ってたのだけれど、保存状態がすごく良い。良すぎる。

紙なんかは劣化するほど湿度管理が難しくなるのに、変色も割れもないというか、劣化を考えるレベルでは無かったし、むしろ準備したばかりと言った状態だった。
学園内のシステムが非常時モードだし、何か保護の魔法的なものが作用してるのかな?

案の定だけど、食品は無事で…冗談で言っていた通りに1000年モノのサンドイッチを食する機会を手に入れてしまった。

3人分のサンドイッチとコーンスープ、フルーツの盛り合わせを注文すると、食事カートに乗せられた状態で目の前に現れた。


(懐かしいを通りこして、これは驚愕だわ)


スープを少し味見してみたら……ただただ懐かしいだけで、匂いも味も特に異変は無かったし大丈夫そう。
そして、注文した料理を載せたカートは、自動で部屋へ向かって移動を始める。

ついでにこれ、部屋からも注文できたんだよね。
まぁ異常がなければだけれど。
……腐敗どころか、とんでもない料理が部屋まで運ばれてきても怖いので、直接確認に来たわけだけれど。

部屋の前に着くと、カートはゆっくりと止まり、ドアに付けられたベルがカランと鳴った。

ドアを開けようとすると、ドアがゆっくりとほんの少しだけ開き、その隙間から小さな手と緑色の頭が見えた。
その表情はひどく怯えていて……。


「あ、ユージア、起きちゃったの?」

「……セシリア?…お、おかえり」


私の声に気づいたのか、大きくドアが開く。
そこには……金の瞳を大きく見開き、大量の涙を溜め込んだ幼子…いや、ユージアがいた。
今にも泣きそう、というか泣いてたよね?


「寂しかった?ごめんね」

「……そうじゃない!なんなのここ!」


私の姿を確認すると、ユージアがドアから転がり出すように飛び出てくる。
ソファーのそばに置いておいた初等科の制服を着けていて可愛らしい。
ていうか、初等科のサイズでも袖をまくって、着てる時点でかなりぶかぶかなのだけど……。
やっぱり見立て通り、3歳か4歳の小柄なタイプで……身長90センチ後半ってところかな。

なんだろう、もう、どんな仕草や格好を見ても、小さなユージアには可愛いという言葉以外が出てこない。

脚にぎゅっと抱きついて来たので、そのまま抱き上げてドアを大きく開くと、カートが動き出して応接のテーブルの横まで進んでいく。
ユージアは勝手に動く食事の載ったカートを凝視したまま、怯えているのか私の首にしがみついていた。


「ん?食事は……確保できたんだな。制服、あったぞ……?」


ドアの前で首を傾げながら、ユージアの様子を不思議そうに見ているルーク。
抱っこを嫌がってたはずなのに、がっしりと私にしがみつくように抱っこされてるからね。


「ルークも戻って来たし、ご飯の準備もできたから、とりあえず食べようか?」


応接のソファーで作った、即席の子供用のベッドは解体されて、起きたユージアによって元の位置に戻されていた。
ひとまず応接のテーブルの上にサンドイッチとスープと果物とを置いていって……あ、小皿も欲しいなと思ったら、カートに3人分の小皿も一緒に置かれていた。
ついでに水差しとグラスも。
なかなかに準備が良い。

じゃなかった、学生の時むかしはこれが当たり前だったんだよなぁ。
メイドこそいなかったけど、かなり恵まれてたよね。


「2人ともおかえり……で、なんでこんなところでゆっくりしてるの、色々とちゃんと・・・・説明して?」

「こんなって、あ……ユージア、部屋覗いたね?……親子揃って乙女の部屋を無断侵入するとか、言語道断ですよ?」


まぁ、自分の身の安全を確保するという意味では当たり前か。
隣の部屋がラスボスの部屋だったりしたら、ゆっくりしてられないもんね。


「……あれが乙女の部屋とか……無い。怪しすぎだから!」

「乙女、ね…ふふ」


ルークの反応も……というかあれか、汚部屋…じゃなかった、ルークも学生時代に自室に研究資材を運び込み過ぎて怒られてたし、あ、ルークの自室ってのは寮ね。
そういう意味では、想像ついたのかな?


「あぁ……そこの開かずの間…か?気になるな」

「開かずの間って……ひどい。大事な部屋なのに」


開かずの間扱いだった。
いや、開くよ?
普通に使える状態の部屋よ?
足の踏み場は……ある意味、有って無いけれど、汚れてはいないはずよ?
ゴミは落ちてないもん。

フルーツを口に運びつつ、くすくすと笑ってるルークは、放置でいいや。
今度、今のルークの自室をユージアと暴きに行ってやる。
きっと似たような汚部屋(!)に違いない。


「起きたら1人だし、ていうかあれ何!?すごい怖かったんだけどっ!」

「アレを見ちゃいましたか……」

「見ちゃいましたよ……」


ものすごく泣きそうな顔で、先ほど私も探索しなかった方の部屋を指差して訴えるように聞いてくるユージア。不謹慎かもだけど、可愛い。
……全部の扉に酷く警戒しているところを見ると、一番最初に一番やばい扉を開けたんだと思われる。
危険察知という意味では、感が鋭い子なんだろうなぁ。優秀だ。


「何を見た?」

「なんか変なひ…「黙ろうか」…はい」


笑いつつ興味津々に、ユージアから様子を聞き出そうとするルークを阻止して、とりあえず話を戻したい。
シシリーわたしの部屋を暴きに、ここまで来たわけではないんだからね?

サンドイッチもあらかた片付き始めていたので、お皿を少し端に避けて……魔力を込めて『地図』と呟くと、世界地図が浮かび上がる。
まぁ、世界地図と言っても、記載されているのは学園を中心とした大陸部分だけなのだけれど。


「……とりあえず今いるのはココ。ここは、メアリローサ国はこの地図だと右下の……ココ。王都はここら辺かしらね?」

「死の森?……もしかして迷宮内?」

「迷宮内とも言うかな?正確には魔導学園内だが」


ユージアの表情がみるみるうちに青くなっていく。
そうなんだよなぁ。
今ではここは死の森と呼ばれていて、文字通り、入ったら命の保証はない。
高ランクの冒険者ですら、神経質になるくらいに事前に装備や準備を整えて出発して、中央の外角にある城下町の壁にすらたどり着けないほどの魔物の数と強さ。

昔は大陸一、大きくて立派な国があったんだけどね。
大陸の真ん中に位置していたこともあって、周辺国から様々な商品や文化が運び込まれて、本当に賑やかで素敵な国だった。
……ま、私は学園内に研究で引き篭もってたから、外出なんて滅多にしなかったけどさ。
それでも、街のあの賑やかな喧騒は見ていて飽きなかった。


「ユージア、ひとまず落ち着こう。魔導学園内ここには魔物はいない。それと位置的には死の森のど真ん中の地下にいる」

「ど真ん中って……帰れるの?」

「まぁ、死の森といえば、高ランク冒険者でも踏破が出来てない未知の領域だからな……地上に出ない限りは安全だ」


大国があった跡地というか、時代の経過を考えると遺跡化してるよね。
それなのに『城跡』じゃなくて『森』と呼ばれる理由、それはそもそも魔物が多過ぎて、城下町にすらたどり着けていないからだった。
そして、大国を覆い隠すかのように大きな森が全てを飲み込んでいるから。


(手前の森が広大過ぎて、近づけないってのもあるか)


そう、その広大な森を抜けないといけない。
高ランクの冒険者が、この国の城下街まですらたどり着けないような高難易度の地域から。
出発の向きは逆だけど、そんな高難易度の中心部から脱出しないといけない。


「朝のうちに森を抜け切りたいから、昼をゆうに過ぎた今から出るのはまずい。ここで装備を整えて一泊してから帰る事になるな」

「ここに泊まるの……えぇ…」


ユージアが困惑、というかなぜか泣きそうになってる。
そんなに嫌がるとか、何を見たの……。
そこまで変なものは置いてなかったと思うんだ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...