133 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
133、もふもふ。
しおりを挟む人懐こそうににこにこ笑いながら、ユージアが近づいてくる様子をカイルザークはじーっと見つめている。
ユージアもカイルザークのケモ耳やしっぽを観察するように見つつ、私のそばにしゃがみ込む。
そうだった、絨毯張りの床とはいえ、そこにぺたりと座り込んでいたのだった。
「セシリア、また泣いてたでしょ?何か辛かった?……夢、みちゃった?」
「……痛かった?ごめんね、でも大丈夫」
「うん」
笑って返事を返す。大丈夫。
ユージアには心配そうに覗き込まれたけど、むしろ謝るのは私のほうだよね。
胸、痛かったよね。
お風呂行ってたのに、胸の痛みで呼び戻すような状況になってしまったのだろうか?
それにしても……と座り抱っこのままのカイルザークの頭をぽんぽんと撫でながら、不思議そうに話を続ける。
「セシリアって、もふもふが異常に好きだから……いきなり襲いかかるくらいに。本当にこの子を造っちゃったのかと思ったよ」
「好きだけど、襲ってないよ?!」
襲うとか……心外なんだけど!
確かに隙をついて触ろうとはしたし、ていうか触っちゃったし……堪能もしちゃったような気もしなくはないけどっ!
襲ってないよ?!
首をぶんぶんと振って否定してみたけど、ユージアは自信たっぷりに頷きながら、カイルザークにも教えるかのように返事をする。
「いや、あれは襲ってた」
「え……セシリアって、そういう子なの……?」
カイルザークにまで遠い目をされてしまった。
そういう子って、どういう子ですか……。
何かを警戒するかのように、そろーっと、膝から逃げ出してるし。
「誤解だからねっ?エルが……あ、カイみたいな獣人の子がいるんだよ、その子が可愛くてついつい」
「ついつい捕獲して全身撫でまわしてたよねぇ……」
ユージアがにやーっと悪い笑みを浮かべてる。
全身とか!撫で回してません!
全力でひたすらに首をぶんぶん振りながら否定するも、カイは私から少し離れた位置にしっぽと耳を隠してちょこんと正座している。
……警戒してる?
「可愛かったから……でも、そこまでは、してないからね?!」
「……そうか『子供なら許される』なるほど……うん、この姿も悪くはないね」
カイルザークがにこりと、可愛らしく微笑みながら『悪くはない』と何かを納得していた……何が『悪くはない』んだい?
ていうか、何を考えているんだ。
それを聞いたユージアは、遠い目をしつつ。
「うわぁ……セシリアの野郎版みたいなのがいるよ…」
「「それ失礼すぎっ!」」
「うわぁ……ハモるくらいに……うわぁ」
めちゃくちゃ引いてるよね。
ていうか、私そんなに悪い子じゃないはずなんだけどなぁ
ユージアから見た私って、どんな子に映ってるんだろうね。
「あははっ、僕はカイルザーク、よろしくね。さっき卵から生まれたとか言われてたんだけど……一応、普通の獣人のはずだよ?」
「あ、本当だ。卵なくなってる……ってあの血塗れの服、何?うえぇ酷い血濡れ…」
「僕の、だよ。もう着れそうにないけど、ね」
「そっか……僕はユージアだよ。よろしくね」
血塗れでぼろぼろのカイルザークの衣類を視界におさめると、驚いたような言葉とは違って、とても悲しそうな表情をしたユージア。
よろしく、と言う頃には、いつものにこにこに戻っていたのだけれど。
「ん~、そろそろ出発の準備したほうが良いよって起こしにきただけなんだけどさ、この子、どうするの?」
「……えっと、とりあえず帰ったら何とか……ならない?」
「ならないと思う」
思わずしょんぼりする私の隣に正座していたカイルザークが、ユージアをじーっと見つめ続けていることに気づいて、不思議そうに首を傾げると、ぽつりと呟く。
「ユージアは懐かしい…匂いがする……少し、臭いけど」
「えっ!?風呂上りなのに……」
臭いと言われて、反射的に自分の袖の匂いを嗅いでいるユージア。
そもそも、その服は新品でしょう……?
でも、やっぱりちゃんと洗えてなかったのかな?少し不安になる。
「ちゃんと洗えてる?やっぱり、教えようか?」
「だ、大丈夫、ちゃんと洗ったし!」
「でも、臭いらしいよ?」
必死に否定をされるけれど、また誰かに任せて、変な誤解が生まれるのは嫌だしね。
機会があれば必ず今度は私がっ!
嫌がっても確実に私がっ!
……ここまで張り切ると、本当に変態のような気がして自分にびっくり。
でも、知っておくべき事はちゃんと教えてあげたい。
がんばるぞ。
そう思ってたら、そうじゃないよとでも言うように、カイルザークが軽く首を振って、話を続ける。
「……毒の臭いがするよ。長患いのようだから…しっかり解毒した方がいい」
「毒……」
ユージアが思いっきり嫌な顔をする。
そうだよね、毒には思い当たることがありすぎるから。
「あ……そういえば『籠』でユージアだけ解毒してもらってなかったんだっけ?」
「僕には効いてないと思ってたんだけどね……死ななかったし」
「馴染んでしまっているだけだね、君はエルフ?だよね?耐性があるんだと思うよ。それでも毒が残ってるくらいだから、かなりきつい毒だったのかな?」
相変わらずカイルザークはユージアを観察するかのように、じーっと反応を待っている。
警戒心が強い子だからなぁ……。
昔から必ず、どんな会話でも相手の反応をしっかり吟味してからの、対応をする子だった。
だから、と言ってはいけないのだけど、研究所内の交渉役にはうってつけで、とても優秀で。
ただ、本人としては、人と接する事自体が苦手だったようで、褒めると嫌がってたけど、まさに適材適所という塩梅だった。
まぁ、警戒されなくなれば、ゆるーくお話ができるようになるんだけどね。
「……セシリア、この子、鼻良すぎない?」
「えっと……そうね、あの人体模型の共同研究者って言ったら納得してくれる?」
「あ~……うん、変態仲間っ!」
今度はユージアが思いっきり警戒の表情になった。
しかし……変態とか、酷い。
あの人体模型、そんなに衝撃的だったのだろうか。
でもちゃんと役に立つものだったんだよ?
作るにも、かなりの苦労があったんだからね?
「変態って…酷い……あ、でも多分、キミもそんなに変わらないと思うよ?」
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる