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はじまりはじまり。小さな冒険?
147、獣人。
しおりを挟むエルネストも可愛いけど、カイルザークはさらに小さくて、まさに幼児!といったあどけなさが強いもんね。
幼児の特徴というか……3歳と4歳ってやっぱり違うんだなぁって思う。
まぁ、精神は…サバ読んでるやつがいるけども。
あのぽよぽよお腹の、ぽっこり具合がたまらない。
体型で言うと、それに限るっ!
あとは並ぶと、微妙に4歳であるエルネストの方が脚が長くて、ちょっとだけお腹がスマートになってる。
……個人差が結構あるんだけどね、5歳くらいまでぽよぽよの子もいるし。
あの可愛さと、この外面がカイルザークの本当であったなら……可愛すぎるんだけどなぁ。
ちょっとジト目になりそうになっていると、背後から同じような考えだったのか、ふう。と、深い溜息が聞こえた。
「名はカイルザークという。セシリアが、助けた……身寄りは、無い。エルネスト君と同じ…種族の子だ」
「エルネスト?……あ!ねえさまが襲ったっていう」
にっこりと可愛らしい微笑みを浮かべながら、とんでもないことを言うカイルザーク。
訂正をするために、そのとんでもない紹介をされてしまったエルネストを見ると、顔を真っ赤にして俯いて……いや、ちょっとまって、何もしてないからね?
「お、襲ってないからね?!」
「あれは襲ってたでしょ……」
「ねえさまって……」
ふっと背後から笑い声が聞こえ、周囲を見るとルークとユージアにやにやと笑っていた。
あ、意外に似てる…さすが親子!……じゃなくて、母様まで笑っているし、父様に至っては眉間を抑える手が、ぐりぐり、ぐりぐりと止まらない感じになっていた。
なんか私が変な子みたいになっちゃってるから!やめてあげてください……。
頭を抱えたくなる勢いであわあわしていると、私の背後に隠れるようにしていたカイルザークが、エルネストの前までひょいっと出てくると、思いっきり観察をするようにじーっと見つめ始めた。
「エルネスト…君って、この子だよね?……すごい!同じ髪の子がいるっ!」
「く、来るなっ!来るなってば!」
突如、カイルザークは、エルネストの髪をわしゃわしゃと触り出す。
カイルザークの急襲に、どう対応して良いのかわからずに髪を隠すように手で押さえて振り払おうとするが、どうもカイルザークの方がすばしっこいようで、避けられない。
「……珍しいの?」
「うん、僕の里では、稀に生まれる……出来損ないって言われてたけど……」
私の問いに、カイルザークが声のトーンを落として、エルネストを気遣うように見ながら話す。
確かに昔、『カイルザークはちょっと珍しい種類の獣人』って話は聞いてたけど、何がどう違うのかと聞かれると、ちっともわからなかったので全く気にしたことがなかったわけだが。
「……僕もだよ。不幸を呼び寄せる象徴だから、出て行けって」
「あ……同じだね」
エルネストまで、しゅんとしてしまったように静かになりながら、答える。
カイルザークは髪をわしゃわしゃするのをピタリと止めて、エルネストを覗き込むと、にこりと笑う。
そんな事、誰が決めたのかと怒りたい。
しかもこんな小さな子に『出て行け』だなんて普通、言う?!
怒りに思わず手をぐっと握りしめたのを気づかれたのか、ルークに腕をつつ。と、突かれて、握った手の力を緩める。
「……それは迷信だ。カイルザークとエルネストは彼らの群れの上位種だ」
「「え……」」
上位種。その言葉にきょとんとエルネストとカイルザークの動きが止まる。
二人とも上位種と言う話は初耳、というか、予想外だったような反応をしている。
例えばだけど、エルフの上位種がルークのようなハイ・エルフ。
カイルザーク達は…狼の獣人の上位種?ってことになるのかしら?
上位種って何が違うのか?って考えると、ハイ・エルフだと長命種であるエルフよりもさらに長命である、ということくらいしか正直見分けがつかない気がする。
そもそもこの情報だけでは、人間には確認しようもない。
普通のエルフより魔力が高いって話もあるけど、それだって個体差があるだろうから、ハイ・エルフ並みに魔力が高いエルフだっているだろうし。
長命といっても、エルフの場合、そもそもが測りようもないほどに途方もなく長いわけで、普通のエルフでも里の歴史を誰よりも深く知り、古参である『長老』と呼ばれる者もいるように、エルフの中でもずば抜けて長寿なものもいる。
そう考えてしまうと、明らかに何かがずば抜けて優秀!の見分け方も実はよくわからない。
同族すらもわかってなかったことを、ルークはどうやって調べあげたのだろうか?
「……群社会の獣人から見たら、1人だけ毛並みが違うのは、嫌悪の対象だったようだが」
「二人とも素敵な色なのに?」
……こんなに素敵な毛並みなのに!
エルネストは淡い藤色の髪。
カイルザークは一見すると銀髪に見えてしまう程に淡い藤色。
どちらも、昼下がりの日の光を浴びてキラキラと輝いている。
「セシリア、僕の里の……きっとエルネストの里の人達もだけどね、彼等の毛色は、茶系なんだ。体格も……全然違うんだよ」
「そういうものなんだ?」
「僕の所も、そうだったな」
ユージアも小首を傾げている。
そもそも獣人自体を見る機会が……ってか、そもそも今世に至っては、獣人は君たちしか見た事ないからね?
魔導学園にいた時だって…いや、むしろ獣人自体が少なかったからかもだけど、赤青黄色とそれぞれ鮮やかな人達ばっかりで、茶色が混ざってたらむしろ、地味過ぎて目立つような雰囲気だった記憶がある。
「セシリアには、聞かれた事、無かったもんね」
「……」
カイルザークは寂しそうな笑みを浮かべる。
エルネストは、秘密にしていたことが暴露されてしまったような……きっと、まさに今がそうなんだろうけど、顔を真っ青にして完全に下を向いてしまっている。
学校でのいじめのように、自分の生きていた世界の全てからの拒絶を受けていた。
こんな幼い頃から。
(完全にいじめだ。しかも村ぐるみで、ですか……最悪だ。彼らの親はどうしたのだろう?守ってくれたのだろうか?それとも……)
一気に考えが頭を駆け巡ってしまい、視界がじわりと歪みはじめてしまう。
学校でのトラブルやいじめですら、子供の立場としては、なんとかしようって頑張って、必死に我慢もするけど、こういう事って、親や大切な人達には話せないんだよね。絶対に話したくない。
(……親の立場からすれば、どんな些細なことでも話してもらいたいのにね)
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