私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
160 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

160、視力。

しおりを挟む




『この度はユージア様の救命、解放していただき、まことにありがとうございました。お陰様で私も消滅せずに済みました』

「消滅って……」


そんなに酷い状況だったのね!
……まぁ、あの時はユージアを助けるのに必死で、それどころじゃなかったし、終盤はそのユージアに吹っ飛ばされて意識がなかったので、わからなかったんだけど。

びっくりしていると、水の乙女オンディーヌは軽く頷くと、ふわりと微笑みながら話を続けていく。


『私も、ユージア様を守るために力を使い果たしていましたので、あの時救命していただけなければ、私もそのまま消えてしまっていたでしょう。本当にありがとうございました』

「そんなに大変な状態だったのに、ユージアを助けるお手伝いをしてくれてたんだね……私の方こそ、ありがとう。もう、動けるの?大丈夫?」

『はい、おかげさまで。なので、こうしてご挨拶とお礼に』


あの時、必死だったってのもあるけど、正直、前世の記憶が今よりももっと曖昧で……しかも今も使い慣れてないけど魔法も触ったことがない状態。
ゼンと水の乙女オンディーヌのサポートがなかったら、きっとどうすることもできなかったに違いない。


「あなたは、ユージアの精霊なの?」

「違うよ。僕にも契約してる精霊がいたら、エルフっぽいんだろうけどねぇ~」


ユージアはおどけるように軽い笑みを浮かべながら、首を軽く振った。
エルフっぽいって言ってるくらいだから、エルフに対しての偏見ではあるのだけれど、エルフとしての成長段階をすっ飛ばしてしまったユージアには、欲しくてたまらないんだろうなと思う。
……だって目が笑ってないよ?


『確かに、違います……が、いずれは』


水の乙女オンディーヌはユージアの言葉を肯定するように、頷きながら返事を。
そしてぽつりと小さく続けた言葉に、ユージアが首を傾げる。


「ん……?どういう事?」

「ん~、さっさと契約できるレベルに育てって事」


呆れからか少しジト目になっているカイルザークが、ユージアに水の乙女オンディーヌがいわんとしている事を教える。
正解だったのか水の乙女オンディーヌは嬉しそうな笑みを浮かべると肯いた。


『今は誰にも仕えておりません』

「あ、はい……精進します。水の乙女オンディーヌもよろしくね」

「これだけ格の高い精霊に好かれるのって、エルフでも凄い事なんだよ?愛想尽かされる前に頑張るんだね」

「……水の乙女オンディーヌはそのつもりで、長い間…常にユージアの側にいたのだが…ユージアが気付いてなかった、というのが正解かな」


カイルザークとルークの呆れてる感が酷かった。
……でも、ユージアを助けるとき、私も姿を見つけることができなかったんだよなぁ。
そう考えると、ルナフレアとの契約ってシシリーむかしからの引き継ぎって事になっちゃってるのかしら?
そうだとしたら、シシリーの時以上に制御不可になっちゃったりしない……?


「見えなかったもんなぁ……あ!今は見えるようになったって事?!」

『本当に、見えますか?』


ユージアの嬉しそうな声に、ふわりと…悪戯っぽく水の乙女オンディーヌが笑った気がした直後、周囲をひんやりとした空気が顔を撫でると妙な違和感に襲われ始める。

急激に水の乙女オンディーヌの気配が消えていった。
そこにそのまま存在し続けているのに、いないような、そこに『いる』とわかっているのに、それを水の乙女オンディーヌと認識しにくい、なんとも言えない感覚に襲われる。


「……見えません。ぐぐぐ…」


直後に、降参!と白旗を上げるように両手をあげるユージア。
全く見えなくなってしまったらしい……。


「あら?見えるわよ?」

「私も、見えるよ」


母様には見えるようで、でも気配がないという違和感に妙な表情になっている。
私にも見えてる、けど気配がないのが何かすごく気持ちが悪くて、なんとも言えない。


「見えるね」

「僕も……見えるんだけど」


カイルザークも普通に見えているっぽい。
エルネストは見えていること自体が不思議な感じで、水の乙女オンディーヌを凝視している。


「僕は、なんとなく気配がある気がする」

「……私も気配程度だな」


父様とセグシュ兄様は姿を見失ってしまったらしく、キョロキョロしているが、それでも水の乙女オンディーヌがいるあたりをなんとなく見ている。


『……では、少し認識を上げましょう……これは、見えますか?』


水の乙女オンディーヌは愉しげに微笑みを浮かべると、口元へ当てた手を前へ差し出し、ふうっと息を吹きかける。

すると手から、小さな水のウサギが何匹もぴょこぴょこと飛び出し、部屋を跳ね回る。
あまりの可愛さに、触ろうとすると、群れを成して一斉に中央に集まりはじめる。
最後の1匹が、勢いよく群れに飛び込むと、その全てが弾け、飛沫の中から数匹の立派な牡鹿が飛び出してくる……。
牡鹿が正餐室せいさんしつを大きく疾走し、きらきらと雪の結晶を散らして行く。


「うっすらとだが姿が……これは…っ!見事だ」

「そうねぇ」


父様と母様は、目を見開きそのまま茫然とするように、夢現の光景にうっとりと見惚れている。
父様は不思議な光景は見えるけど、水の乙女オンディーヌの姿は薄っすらとしか見えていないみたいで、セグシュ兄様も同じ状況なのか、周囲の景色に目を見張りながら、こくりと頷いている。

『失礼』とフレアが淡く笑みを浮かべると、部屋に控えていたスタッフ達の肩を軽く叩いて行く。
すると、みんな同じ様に茫然となり、動きが止まってしまった。


『折角だから、楽しまないとね?』

「フレア、ありがとう」

『ううん、人間ってこんなのが面白いんだね?これくらいなら僕にも出来そう』

「そうね、悪戯よりずっと喜ぶし、誉められると思うよ?」


にこにこと嬉しそうに笑うフレアの場合は、水の乙女オンディーヌの作り出した幻想的な景色よりも周囲の人間の反応が面白いみたいで、その表情の変化を興味深げに見て回っている。
人間の、とにかくいつもと違う反応が見たい!と言った感じだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...