私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

180、私の相棒。

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ユージアは杖を傾けてみたり、片手で持ち上げてみたりと、使用感を確かめている。
杖は傾く度に、儀礼用のアクセサリーをつけるカンが揺れて、しゃらしゃらと音を立てる。


(……そういえばアクセサリー持ち出してくるの忘れたなぁ。また作ろうかな?)


あ、今の杖ってアクセサリーをつけるカンってついてるのかな?
女性用のは特に、普段使いの杖が儀礼用を兼ねる事が多かったから、お洒落も兼ねてカン付きが主流だったけれど……今世いまはどうなんだろう?


「うん、少し重いけど……なんとか使えなくはないかな?」

「良い杖だね……女性用…かな?何の木だろう?」

「ユージア、この杖は……?」


父様が不思議そうにユージアに問いかける。
父様もセグシュ兄様も視線は杖に釘付けになっている。

シシリーわたしの杖なんだけどなぁ……誰かに譲ったりはしたくないし、かといって今は体格的にも使えないから、使えるようになるまで、このままこっそり保管しておこうかと思ってたのに。
貸す分には良いのだけれど……魔法を使う者にとって高性能の杖は魅力的だから、誰かに披露するという状況はあんまり嬉しくない。


「えぇっと……」

「これは『セシリアの杖』なのかい?……使えてないようだけど」


父様の問いに、ユージアはちらりと私を見た後、目が泳ぐ。
……これはシシリーわたしの杖だと知ってるな?
さっきの『精霊からの呼び出し』で、それをルークから聞いてきたとかだったのかな?

って、知ってるって事は…もしや、この杖はシシリーわたしと運命を共にしたのではなくて、いや、したのだろうけど、シシリーが亡くなった後にルークによって回収されてたって事でいいのかな?

それなら、後でルークにもお礼を言っておいた方がいいのかな?


「……この杖は親父おやじの古い友人の『形見』として辺境伯邸に保管されていた物です。昨日、セシリアの手へと飛んでいってしまったとの事で……今はセシリアの杖だと『杖が認めて』いるとの事なので……でもセシリアはまだ使えそうにないみたいだから、貸してもらえたらなと思って」


何故かあわあわとしながら、ユージアが説明を始める。
ユージアって……もしかしてもない程に、嘘とかごまかしが苦手なのかな?
教会でのイザコザの時はさらっと嘘吐いてたり誤魔化しの言葉を言ってたような気もしたんだけど。
長く精神への影響がある魔法を受けてたものは、自分の感情を取り戻すのにも時間がかかるから…ってのを考えると、こっちが本来の性格なんだろうか?

それにしても、杖の今までん所在に関しては、あたりだね。
行方不明や、壊れてたとかそういう結末よりは…良かったのかな?


「いいよ」

「ありがとう!……でもちょっと、イヤそうだね」


にこりと即答してあげたのに、ユージアは私の眉間をつつきつつ悪戯っぽく笑うと、杖を大事そうに抱え込んだ。

無意識にでも考えてることって表情に出ちゃってるんだね。
眉間にしわ、出てたんだろうか……。


(まぁ実際、体格的に使える状況じゃないのはわかってるんだけどね)


ただ、メインとして長く使っていた杖だから、できれば他人の手に渡ってしまうことは避けたい。
……シシリーわたしが亡くなった時に運命を共にしたんだろう。と一度は諦めてたものだけど、それでもやっぱり存在しているのがわかったのなら、手元においておきたいし、いずれは自分で再び使えたらと思ってる。

今はどう考えても使えないから、まだまだ何も知らない子供だからと言って、第三者に預けておくという選択肢は私の中にはない。
そのままどさくさに紛れて、存在を見失ってしまう事が怖いから。

それに、そう考えてしまう時点で、公爵家このいえの家族やスタッフたちを信用できていない、何かあれば簡単に疑えてしまえるという状況になってしまうのが怖い。

それならば、セシリアわたしが使えるようになるまでの期間、多少の事情を知っている者の手にある方が安心だと思った。
返してもらえる約束付きだし。

むうぅ…。と唸りそうになっている私の頭をユージアはポンポンと撫でて「それにね」と話を続けていく。


「……何か問題があった時に、セシリアがこの杖を呼んでくれたら、きっと、この杖は一目散にセシリアの元へと飛ぶのだろうから……そうすれば命の危険以外でもセシリアの身に何かあった事が僕にもすぐにわかるでしょう?」


ふわりと私を覗き込むようにして優しく笑っている。
玄関フロアの天窓からの淡い朝日に照らされて、エメラルドの髪が透けるように輝く。

私に命の危険があった場合には、私との契約で胸に刻まれた奴隷紋が強い痛みをもって知らせる……本当は外してあげたいのだけれど、何度話してもユージア本人に拒否をされてしまう。
私の危機に気付ける利点が大きいと言い張って契約を外すのを嫌がるだけではなく、さらに杖の存在での安全確認まで考えられてしまうとか、どれだけ私は誘拐されやすくてトラブル引き寄せ体質なのかと、悲しくなってしまう。


「……しかし、辺境伯ハンスの大切な物なら、返却すべき物なのでは?かなり高価な物にも見えるが」


父様が眉間をしわしわにしている……。

はい、かなり高価なものです。
シシリーわたしから見れば。じゃなくて、杖に使われている素材だけでも集めるのに手間がかかるものが多い。
杖としての価値も、当時のランクで言えば……あ、うん、特注品だったから……高級か最高級あたりなんじゃないかな?
シシリーわたしの自慢の逸品ですからね。


「確かに高価な杖らしいのですが。……この杖、主人と認めた相手しかまともに使わせてくれないらしくて。そんな杖が自ら飛んでいくほどにセシリアを気に入ってるなら、セシリアにあげるって。その代わり、セシリアが使えるようになるまででいいから、僕に貸してもらえないかな?っていうお話なんですけど……セシリアが許可してくれたら、最低限の機能としてなら……使えるらしいから…良いかな?」

「うん。いいよ!がんばってきてね?」


最低限…というか多分それ、普通の杖と求めているものが違うから、まともに使ってもなんとか使えているようにしか見えないだけなんだよなぁ……。
あぁ、求めているものってね、例えば剣であれば切れ味とか軽さ、長さとか、持ち主によっても、何を重視するかって分かれるよね。
魔法を使う人たちが一般的な杖に求めるものは、魔力の増幅……と、おまけ程度に魔力の微調整。

シシリーわたしが杖に求めたものは、一番に魔力の調整。
微調整じゃなくて、がっつり調整、ただそれだけ。

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