私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

182、出発。

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「ん~、あの子、随分おっとりしてるけどあのルークの息子なんでしょ?案外すぐ帰って来るんじゃないの?」


心配そうに見送る2人に、カイルザークが…っていつのまにセリカの腕から抜け出したのか、またエルネストを追いつつ声をあげる。


「え?……言われてみればそうだけど」

「いや、しかし……」


って、セグシュ兄様…言われてみればって、もしかして、忘れてた?
カイルザークに追われているエルネストが、フェイントのように急な方向転換をした…と思った瞬間、姿が浮かび上がると父様に抱き上げられる。
そして追いついてきたカイルザークも「こら!」の声と共にセグシュ兄様に捕獲され抱き上げられる。
……なんかもう、エルネストとカイルザークの追いかけっこが子犬のジャレ合いにしか見えない。


あの・・ルークが探しても、今まで行方不明だったんでしょう?魔法が使えないって聞いてるけど、それなら尚更にそんな状況で無意識にでも、追跡から逃れられる手段を取れていた程度には、優秀なんじゃないの?」

「あっ……!なるほど」


妙な納得をしている、父様とセグシュ兄様。
でもね、とセグシュ兄様は腕の中に捕獲したカイルザークの頭を撫でながら…ふふっと笑う。


「僕には、ユージアよりカイの方こそ、ハンス先生の息子だって言われたほうがしっくりくるんだけど……実は親戚とか、そういうつながりはないの?」

「ありませんっ!そんな恐ろしい」


何をされてもあんまり動じない感じのカイルザークが、ありえないくらい必死になって首をぶんぶんと振って否定するのが面白くて思わず笑ってしまう。
今だって、セグシュ兄様に抱っこされてる状況での行動だからね?

でもね……ルークは元から優秀なんじゃなくて、しっかり努力してる人だよ?
いっぱい努力したから、今の位置にいるんですよ?


「ルークは、すごいがんばりやさんなんだよ?」

「頑張り屋……か、私からみればハンスは優秀を通り越して、完璧人間だがな」


父様だって同じ位置にいらっしゃるのだから充分に優秀かと?
ルークと父様と何が違うのかと首を傾げながら見上げていると、母様に頭を撫でられてしまった。
母様は、ぱんぱんと軽く手を叩くとにこりと笑う。


「はいはい。ユージアの次は私たちが出発よ~?忘れ物は、ない?」

「「あるっ!!」」
「ありますっ!」


母様の声に、一目散に宿題をとりに自室へと戻ろうとするエルネストとカイルザーク。
ま、2人とも抱っこされてるので、もぞもぞと父様とセグシュ兄様に降ろしてもらってからだけどね。


(っと、私も……終わらなかったけど宿題を持っていかないとね!)


2人を追いかけるようにして私も自室までダッシュで戻ると、魔導学園から持ち出してきた初等部用の革の鞄に、宿題のノートを詰め込んだ。
背後から父様の「走るな!」って声が聞こえたような気がしたけど…聞こえなかったことにしておこう。

さて、他に持っていくものってあるのかな?
まだ初日だから、分かり次第準備してもらったらいいのかな?

何もかもが初めてで、わからないことだらけで……でも、楽しいね。






******






「おはよう?」

「…はよ…う?」


……あれ?
目の前に、カイルザークの顔があった。
朝かな?明け方までお勉強がんばったもんね……?


「……昼だぞ?」

「へっ……?…ん?…」


私を覗き込んでいたカイルザークの頭を押しのけて、エルネストが顔を出す。
ベッドにしては硬いような気もするけど……もうちょっと寝たい。

毛布の上からゆさゆさと、カイルザークに揺すられていたけど、毛布をぐいっと引っ張って潜り込むように頭を隠す。


「あ、こらっ!また寝ようとしない!これからご飯だから、起きよう?」

「ごはんまで、ねゆ…」

「か…完全に、寝ぼけてっ…ふっ」


聴きなれない声が、笑いを堪えてもがもがいってる。
レオンハルト王子みたいな笑い方だな、とぼんやりと思った。

あれって、多少の失敗ならまぁ堪えてもらったほうがいいんだけどさ、笑上戸が顔真っ赤の涙目!みたいな状態で必死に堪えてたりすると、その状況こそがさらに笑いを誘うというか、馬鹿にされている気分になってくるんだよね。

毛布からそーっと声の主を探すと、案の定、顔を真っ赤にさせてふるふるしながら笑いを堪えている、幼稚園児くらいの金髪の男の子が見えた。
ていうか、こんな小さな子が笑いを我慢する必要なんてないじゃない。


「……わらうなら、ちゃんと、わらいなしゃい!」

「あっ…えっ?!……セシー?…おーい!……寝てる…のか?!」


毛布からがばりと身を起こすと、私を覗き込んでいた金髪の男の子の頬を思いっきりつまんで、無理やりに笑ってる口を作るように、むにーっと広げた。
何故か物凄く焦る父様の声まで聞こえたような気がしたけど……子供は特に、笑える時は思いっきり笑ったほうがいい!その方が可愛いもん。

うん、良い笑顔。
……それにしても可愛い子だな?
頰をつまんだ拍子に、耳にかかっていた金の髪がさらさらと前に流れてくる様子がとても綺麗で思わずじーっと見つめてしまった。


「わ…わかっひゃか……ぶっ…だめだっ…あははっ…」


男の子といえば、私が頰をつまんだ直後、顔を真っ赤にして笑いを堪えていた表情から一転、びくりと一瞬体を強張らせていたのだけど、それすらも我慢できずに一気に涙ぐむと爆笑を始めてしまった。

あまりの笑いの勢いに、私もびっくりしてそのまま固まっていると……傍から手が伸びてきて、頰をつまみっぱなしにしていた手をはずされた。

……カイルザークの物凄く呆れたという深い深いため息とともに。


「はぁ…ねぇ、セシリア……何してるの…」

「は?……あれ?」


えっと…なぜ私は、金髪の男の子に爆笑されているのか?
いや、そもそもなぜ私は金髪の男の子の頬を思いっきりつまんでいたのだろうか?
寝てたのも私の部屋のベッドじゃないし……見たことのないソファーだし!

ていうか、ここはどこなのか?


「おはよう?」


寝起きからの自分の状況が全く掴めずに呆然としていると、優しげな可愛らしい声に挨拶をされた。
ぼんやりとその声の方向を見ると、癖毛がちのふわふわな金髪のシュトレイユ王子がいた。

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