私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
185 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

185、巫女のお仕事。

しおりを挟む



「しんぱいしてくれてたんだね。ごめんね」

「怖くなかった?」


一通り撫でて満足したので少し離れると、心配そうに顔を覗き込まれる。
真白でふわふわな毛並みに、アメジストの紫色の瞳。
……猫には紫色の瞳はいなかったような気がするけど、綺麗だからいいや。


「ちょっとだけ。でもね、おともだちがひとりふえたのよ!かいるざーくっていうの。ぜんもなかよくしてね?」

「カイルザーク……うん。紹介してね」


みんなで仲良くできたら楽しいもんね!と思いつつ、ふと気付いた。


「あれ?ともだち、だとおもうんだけど…おとうと、かな?でも、ともだち?」

「どうしたの?」


あれあれあれ~?と首を傾げてしまった私に、不思議そうな顔のゼンナーシュタット。
多分私も同じように不思議な顔してるんだろうけどね。


「えっと『うちのこ』って、おとしゃまがいってたの。カイは、おとうとなのかな?」

「あぁ、ガレット公爵家で引き取った子がいるって聞いてるから、それがその子なら、弟なんじゃないかな?…もしくは兄かも?」


そうなんだよね『うちの子』って父様も母様も言ってたから、兄妹の一員ってことなんだろうし、弟か兄って事になる。

……弟だといいなぁ。脱!末っ子!
カイルザークにも『ねえさま』って呼ばれたいし!
以前むかしもそう呼ばれていた時期があって、とても可愛かったんだよ。
あー、でもあの頃のカイルザークは、本当に幼かったから可愛かったのであって、今のは……。

身体はともかく、中身は大人だもんなぁ。
もしかして、呼んでもらっても、わざとらしく聞こえちゃったりするのかな?


(今後だって年の差がないのだろうから、私を『先輩』って呼ぶ必要もないし、でも昨日の時点でセシリアって呼ばれてたし……うーん、でもやっぱり『ねえさま』って呼ばれたい!)


あ…発達とか、しっかり具合から言うと、私がカイルザークを『にいさま』って呼ばなければならない状況にもなってしまいかねないわけで……というか、カイルザークの方がどう見てもしっかりしてるから、一度そういう印象がついてしまったら、そのまま私の方が妹って事で確定しそうだね、困った!


「おなじくらいだけど…おとうとだといいなぁ」

「お姉さんになりたいの?」


むむむ…と唸りかけそうになって、取り敢えずは願望を言っておく事にした。
弟!って先に言っておけばなんとか姉として存在できるかな?
それくらいの感覚なのだけれど、ゼンナーシュタットは「おや、意外」という風に聞き返してくる。


「うん、おねしゃまはつよいからね!」

「強い…の?」

「うん!つよいのよ?」


強いんですよ。
弟を守るために頑張るからね?
そうだよ、お姉ちゃんじゃなきゃ、カイルザークを守るのに何かと難しい場面が出てきちゃうかもしれないもんね。
今度こそちゃんと守るんだ。

……で、守るで思い出したんだけど。


「ねぇ、これからみんなでおべんきょうなの。そろそろ…いっていいのかな?」


ゼンナーシュタットをもふもふと堪能し続けるのも幸せなのだけれど、勉強会もすごく気になってるし、というか、宿題も終わってないから、早めに行って終わらせたいところでもあるんだよね。

だけど、守護龍のアナステシアス様も現れないし、龍の巫女としてのお仕事の内容もわからないから……かといって、このまま勝手に行ってしまうのも気がひける。


「わたしね、しゅごりゅうさまにあいにきたの」

「あぁ、聞いてなかったんだね。僕もその勉強を一緒に受けるから、これからはセシリアは巫女として龍の離宮ここに来たら、あとは僕と一緒に王宮に行けばいいんだよ」


ゼンナーシュタットは嬉しそうに目を細めて、しっぽをふわりふわりと揺らす。
「歩きながら話そう?」と立ち上がると、ゼンナーシュタットが現れたドアとはまた別の方向にある大きなドアへと向かって歩き出すと同時に、その大きなドアが勝手に開きだす。


(自動ドアっ!……冗談ともかく、誰が開閉してくれてるんだろう?)


私もゼンナーシュタットの背後について、開いたドアへと歩き出すのだけど……目の前で真っ直ぐ上へとぴっと立っているしっぽが気になってしょうがない。
そもそも私の視界には、その立派なしっぽしか見えないんだけどね。


(猫のしっぽって、嬉しい時ほど真っ直ぐに立つんだよなぁ)


ぴっと立ったしっぽの、歩く度にそよそよと流れる真白で長毛を眺めて癒されつつ『龍の巫女のお仕事』が事前に聞いていたお茶会どころか、ゼンナーシュタットのお迎え?それだけ?と、半ば呆気にとられてしまった。


「えっと…みこのおしごとって、それだけ?」

「うん、それだけ」


まぁ、今のところは『セシリアわたしの安否確認が1番の目的であって、後は特にやることはないよ』なんて言ってたもんなぁ。
あれかな?これはゼンナーシュタットと会えるように配慮してくれたってことなのかな?
これから毎日登城して王子達とは一緒に勉強するからイヤでも会えるけど、ゼンナーシュタットの家はわからないもんね。
……まぁ分かったとしても、きっと王宮内だろうから、子供が許可なくふらふらとお散歩できるような場所じゃないし。

でも、こっちでも色々な宿題が出されたりって事じゃなくてよかったよ。
巫女の心得!的なマニュアルやら、滝行的な修行なんかあった日には…と思いほっとする。


「……よかった、たいへんだったらどうしようかと」

「大変だと、ダメ?」


長いしっぽが真上へと真っ直ぐ立っていて、真白で長い毛並みがふわふわと移動の風に流れるように揺れているのが綺麗でひたすらしっぽだけを見つめていたら、くるり。と、視界からしっぽが消えて、ゼンナーシュタットの顔が目の前に現れると、思わずびくりとしてしまった。


「う、ううん、がんばる。でもね、みんなとのおべんきょうもしたいから……」

「そっか。じゃあ急ごう!」


しっぽをぴんと立てて、少し跳ね気味に軽快にトコトコと歩き始める。
サロンと思われる部屋を出て、後ろを振り返ると、何もしていないのにあの重厚なドアが静かに閉まっていくところだった。
……誰が開閉してくれてるんだろう?

気になるのだけどそれよりも、もっと気になってる事が一つあって。


「ねぇ、ぜんはひとのしゅがた…に、ならないの?」


噛んだ……好調に喋れてたのに、噛んだあああああああっ!

勉強一緒に受けるのなら、人の姿になるのかなって?ちょっと期待してたんだよね。
シュトレイユ王子の姿を借りていた事があったのだから『人』としての姿をとれる魔力があるのだろうし。


「しゅ……あ、うん、勝手にシュトレイユ王子の姿を借りてしまったから、今は罰として人化禁止なんだ…」


残念!……て、今、噛んだとこ笑ったよね…。
以前よりは噛まなくなってきてるんだからねっ?!
怒ろうと思ったけど、ぴっと立っていたしっぽがしゅんと下がってしまったので、これは『罰』に結構落ち込んでいるのかな?と思い、ひとまずやめておく事にした。


「……ごめんね。でも、みてみたかったな」


魔力の高い生物の『人』としての姿って、男女どちらにしても美形さんが多いんだよね。
しかも魔力が高いほど、美人さんになるのですよ。
ゼンナーシュタットは、さらっと他人レイの姿を借りたり、魔道具マジックアイテムを齧って解除しちゃうほどの子だもの、きっと人としての姿は美人さんになるはず!
……と、密かに期待してたんだけどなぁ。

これは次回のお楽しみかな。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...