私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

187、side エルネスト。名前。

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ボクの新しい生活。
ここはガレット公爵家あたらしいいえ
数日前からここで暮らすようになって、『身分』というものまで一緒に貰ってしまった。
『クソガキ』『忌み子』だったボクの呼び名も、これからは公爵の『令息』『子息』とか呼ばれるようになるらしい。

今までは身寄りのない孤児だったのに……そう、ボクに身寄りは…ない。
自己紹介では『親族がいる』と言ってしまったけど本当は、いない。

いたのだろうけど、生まれてすぐに養子に出された、ということになったそうだ。
──獣人の、ボクの里の、一族の汚点として。

実際は里にある孤児院のような場所で他の……両親が他の街へと仕事へ行っていて預かり手のいない子や、それこそ孤児の養育を一手に引き受けている施設で育った。

養母には『損したねぇ』と言われ続けた。
……ボクはそれなりに大きな裕福な家に生まれた子らしかった。


『こんな容姿でさえなければ、安泰だったろうに』


ボクを褒めるときに、必ずため息と共に哀しげに呟かれていた。

実際、ボクの容姿は一族のものとは全く違っていた。
同じ年頃の子供達ですら、ボクの一回りも二回りも体格が良くて、毛並みも全く違っていた。
猪や熊のような硬い黒の混ざる茶系がほとんどで、どんなに色素が薄く出ても銅のように少し明るい毛並みになるだけだった。


そんなボクを養母は他の子と分け隔てなく育て接してはくれていたが、それでも里の方針で5歳でこの施設を、里を出ていかなければならなかった。

『禍を呼ぶ子』だから。

養母は周囲へ『せめて10歳までは里におけないか』と掛け合ってはくれていたが、誰からも色良い返事はもらえなかったそうだ。
……3歳の誕生日に、養母から聞いた。


『だから、これからは厳しく接する』


本当なら、15歳ひとりだちまでに覚えていくことを、5歳までの2年間で覚えろと言った。
その日、養母から優しさが消えた。

施設のみんなでやるはずの作業も、ボクだけ量が増えた。
頑張って良い結果を出しても褒められることはなくなった。

養母のボクにだけ向けられる掌を返した様に否定的で厳しい態度は、一緒に養育されていた子供達にも移り、いじめや差別となって陰での嫌がらせが始まってしまったりもしたが、それを抗議しても『人族からの差別より可愛いもんだ、対処を覚えろ』と放置された。
……今までなら、ボクが引くくらいに相手に真剣に怒って、注意してくれていたのに。


(それでも、理由が分かってたから乗り越えられたんだ)


理不尽な事もかなりされたが、された後に『里ではこの程度だが、人族の街ではそれは忌避される行為だから、そうなる』等の理由も言ってくれていた。

4歳の誕生日を目前にして、このメアリローサ国の各地で一斉に行われる、魔力測定会に行く事になった。
これはメアリローサ国の住民の義務となっていて、対象の年齢にあたる子供は必ず受けなければならなかった。
もちろん、この獣人の里も例外無く、だ。

……獣人は人族には蔑まれている事が多い、と聞いていての魔力測定会の知らせ。
会場はこの周辺で一番大きな人族の街の、領主館で行われる事になっていた。

里を追われた獣人は人族に紛れて暮らす。
そう教わっていたので、この会を問題なく受けて帰ってくる事が当面の目標となった。

魔力持ちの獣人はまず、いない。
なので、測定で好成績を出す事はそもそも眼中にはなくて『人族の街に違和感を抱かれる事なく溶け込める行動が取れるかどうか』こちらが目的だった。

当日は『魔力持ちの獣人はお金持ちになれるんだよ』と、楽しげに話す子達に混じり、会場となる街へと移動していく。
途中、魔物に数度遭遇したが、付き添いの大人が出る間も無く、子供達だけで仕留める事ができた。

……仕留めた後、子供達はそのまま街へと歩を進めたが、ボクと養母はその場に残り、仕留めた後の魔物の処理を教わった。
本当なら付き添いの大人達が処理するものなのだけれど。


『いいか?魔物はココに魔石ができる。強い魔物ほど大きいと聞く。これを集めて生計を立てている獣人も多い。覚えておくんだよ』


そう言いながら、仕留めた後まとめられた魔物の遺骸の胸を切り開き魔石を取り出すと「持っていなさい」と一欠片を渡された。
遺骸は埋めるか、場所を覚えて早々に離れないといけないそうだ。
この量であれば、半日も時間をおけばまた通行可能だと判断しても良いらしい。
……遺骸えさの臭いにつられて集まる魔物との遭遇を避けるためだ。

そう説明を受けて、養母と共に先に行った子供達を追いかけ始める。
追いつく頃にはすでに街へと到着していたのだが。

朝イチに出発して、昼前には街に着いた。
そのまま測定会場へ向かうとすでに測定会は始まっていて、子供達は測定の列へと順に並んでいく。


(測定でボクだけ魔力があったんだよな……)


街から、さらに隣の大きな街へと向かう馬車の明かり取りから、ぼんやりと外を見ながら思う。

あの時の養母の顔、なんとも言えなかったな。
ほっとしたような嬉しそうな、哀しそうな……。
『よかった、よかったな…』としきりに頭を撫でてくれていた。

……とりあえず成人するまでは、路頭に迷う事はなくなったらしい。と、いうことだけは理解できた。

ただ、養母とはそこで永遠の別れとなる。その事も…理解した。
本当なら5歳まで、あと1年と少しは里に居れた期間を繰り上げて、このまま一度も里へと帰ることなく出ていく。
そして2度と里には帰れなくなった。

寮母は魔力測定会の役人と2、3の会話をして書類にサインをすると、なんとも言えない表情で、良かったな。と、またボクの頭を撫でた。


『これからおまえは…この街よりさらに大きな街にある孤児院で暮らすんだ』


魔力測定会が終了すると、付き添いの大人が他の子供達を引率して里へと向けて出発していった。
ボクの手続きのために、寮母だけがその場に残った。
そしてそのすべてが終わると、移動の為の馬車が到着するまでの間、ずっと『頑張れ頑張れ』と呟きながら、ボクを膝に乗せてぎゅっと抱えていた。


『孤児院で生活して、5歳からは国立の魔法学園だ。たくさん学んで…生きる力をつけなさい』

「はい」


3歳の誕生日を迎えてから、初めての膝の上。
抱っこも頭を撫でられるのも同じで。
こんなに甘えさせてくれたのがあまりにも久々すぎて、嬉しい反面、慣れなくてどうにも居心地が悪い。
どうしたのかと疑問に思って振り返るように養母を見上げると、顔を真っ赤にして俯いていた。


『少ししか…守ってやれなくてごめん』

「今までありがとう……先生かあさん


ボクは本当の両親を知らないけど、家族としての愛情をくれた人なら知ってる。
ボクの姿を視界に入れただけでも舌打ちしたり、わざわざ作業中のボクの近くまで来て足をかけてきたり、足蹴にしたりする大人が多い中、全力でボクを守って育ててくれた人を知っている。

養母なのだから、それが仕事だから、そう言われてしまえばそれまでなのかもしれないけれど、それでもボクの家族だと思えた大切な人だった。



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