私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

228、宝の在処。

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「妖精の暴走については、精霊フレアの報告によると墓荒らしへの報復という事で、彼らへ『宝』を返せばおさまる……のだが、その『宝』が回収不能な状態にあるようだ」

「回収不能って……武力でも難しい、ということでしょうか?」


ルークとヴィンセント兄様の声に耳を澄ましつつ『今回は守ってくれる大人が身近にいてくれるのだから、大人に任せよう!』と父様やゼンナーシュタット忠告通り、大人しくしていよう!と、ちゃんと考えてはいるけれど、でもやっぱり情報は必要だ!という思いもあって…会話はちゃんと聞いておきたい。


(うん、手は出さない。でも情報収集は大事。敵の姿が見えないままだと、何から守られているのかすらわからないから、うっかり敵陣に乗り込みかねないし)


眼を閉じたままベッドに上体を起こし、ゆらゆらと揺れているカイルザークのおでこをつんと押すと、そのまま後ろへ倒れ込んでしまった。
そして、そのまま毛布を掴んで抱え込むと丸くなって。


「なんだっ!?…何……今の」

「んん~にゃ~ぅ……」


代わりに、カイルザークの倒れ込んだ衝撃にびっくりしたのか、エルネストががばりと毛布を跳ね上げて、跪いた姿勢のまま両手は顔を守るかのように……それはそれは見事な防御姿勢を瞬時に取って見せていた。

そして、その姿勢の先には、カイルザークの寝言付き。
エルネストは何から身を守ろうとしているのか……。


「カイ、にゃ~んって、なぁに?」

「っ!ふっ…カイ、お前っ…狼、だろ…ははっ。なんで……」


なぜにゃ~んなのか。レオンハルト王子と私の疑問。
というか大人達の話を聞きつつ、レオン王子もこっちを見てたのね。
顔を真っ赤にして笑ってしまっていた。


「え…あれ?……おはようございます?」

「エル、おはよう。カイがどーんってしたら、えるがびっくりしておきたのよ」

「あの衝撃はカイか……レオン笑いすぎ」


すでに止まらなくなってしまっているレオンハルト王子の爆笑をBGMにエルネストは困ったように頬を赤くしていたが、照れ隠しのように頭をポリポリと掻くと、顔をふるふると振っていた。
少し落ち着いたのか、耳としっぽをしまい、シャツの乱れを直しながら跳ね飛ばしてしまった毛布をシュトレイユ王子とカイルザークにかけて、絶賛大人の会話中なソファーの方へといってしまった。


「カイは、寝直したか……さて、ハンス先生。命令は聞かない、武力でも解決できない。では魔法や精霊では?」

「ああ、そのどれも回収不能だ。何処にあるか?であれば、調べは…ついたのだがね……」


ヴィンセント兄様はエルネストを自分の隣に座らせると、テーブルのお菓子やお茶を勧めながらも会話を続けていた。
レオンハルト王子は…笑すぎて涙まで出てしまったのか、眼を擦りながらも会話に参加していた


「反乱はおさまったのでしょう?場所もわかるのなら、守護龍やとうさまからの命があれば」

「王子、それでも難しい事もあるんだ」

「レオン……?」

「1人で解決出来ないことを、国という団体の力で解決する。これは大切なことだけど、どんなに集まっても解決できないものだってあるんだよ」


大勢の力技でもダメ、知恵の出し合いでもダメ……そこで頼みの王様!ってなるのだろうけど、王の命で動く兵達の命を無駄に散らさせない判断と指示が…確実に出せるかといえば、八方塞がりな時点で王様が頑張ったって、ダメなものはダメ。

大量の資材や人材でゴリ押し出来るような案件であれば、多少結果は変わるのだろうけど。
というかそもそも、国民を守るための王様が無駄に兵の命を削るような指示は出せないよ。
兵だって国民だからね。
……そういう考えの国王であって欲しい。

にしても、どう難しいのか理由もなく難しい!と言っている風では無い感じのルークをじーっと注目しつつ、耳をすます。
まぁ、耳はすましながらも手は絶賛、カイルザークのケモ耳の生えた頭を撫でているわけですが。
柔らかくて気持ち良いんだもの……。


「教会管理の大型の古代の魔道具アーティファクトの中にしまい込まれていてね。『監獄』と言えばわかるだろうか?」

「げっ……」

「……ここには身をもって知っている者がいるな」

「2度と関わりあいになりたくない場所だね~」


エルネストへとお茶の給仕を頑張っていたユージアが、変な声を上げると、ルークがにやりと意地の悪そうな笑みを浮かべる。
まぁそうだよね、『隷属の首輪』をつけられて操られていた時はともかくとしても、最終的には自身が処分されて棄てられていた場所だ。

出るのも一苦労だったのよね……。
そもそもあれって、どうやって出入りしてたんだろう?


「セシリアが教会に拐われた時点では、教会の管理下にあったのだが、唐突に管理者が書き換えられて、今までの関係者は一切使えない状態になっているようだった」

「管理者、ですか?」

「ああ、主管理者マスター自体が唐突に書き換えられていて、主管理者マスターだった者は呆然としていた。もともとその『監獄』をアジトとして使っていたらしいのだが、管理者権限が書き換えられてしまった結果、中にいた者達はそのまま脱出不可能となっているそうだ」

「うわぁ……じゃ、今頃、ゾンビやスケルトン集団に延々と追い回されてるんじゃないかな?」


あ、遺体って……もしかしてそのゾンビやスケルトン集団になってしまってたり……してるよね。
むしろそのものっぽい。
自らが盗み出したもの達に襲われているのであれば、自業自得と言っても良いのかもしれないけれど、それでも怖すぎる。


「そんな…物が、教会に…あるんですか?」

「あるんですよ。私は入ったことがないのではっきりとは説明もできませんが教会の地下に存在するという事と『監獄』という呼ばれ方をしているという事は何かを収監するような施設であろう事、しかも魔物も出てる…と。その程度は、セシリアが誘拐された顛末をアルフレド宰相父さんから説明を受けたので」


レオンハルト王子の顔が、悔しげから、みるみるうちに青ざめていく。
一番安全なはずの王都の、しかも誰もが知っている教会の本部でもある建物の下に、魔物が跋扈する、しかも人を閉じ込めておくような施設が存在する。
とんでもないお話だものね。

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