私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

229、教会のナカミ。

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教会って慈善とか慈愛とか……『監獄』なんて言葉とは無縁の存在のイメージだったんだけどなぁ。
宗教という意味では、興味ないからわからないけど、前世にほんの教会・寺院、そういった建物って、どんな宗教のであっても色々と凝っていて素敵で。
テレビなんかでも、歴史の長い宗教系の建物が映ると思わず見入ってしまうことが多かった。

それだけ素敵って事はつまり、それだけ信仰されている、大事にされているのだよという証でもあるわけだけれど、逆にいえばそれほどまでの信頼を得られるほどの素晴らしいものの筈なのに……今世ここの教会は何しちゃってるかな…。
徳も何もあったものじゃないね。


「……つまりだ、盗まれた宝は盗賊の宝箱の中だが、盗賊自身もその箱の鍵をなくしてしまって開けることができない。という状況だ。なので、盗賊をどんなに痛めつけたとしても箱は開かない」

「そう…ですね」


しゅんとしてしまったレオンハルト王子の頭を撫でると、ヴィンセント兄様がふわりと笑う。


「それでも、何かできる事はないか?そう考えて情報を集めようとする姿勢はとても素晴らしい事ですよ。でも、どんな事でもこういう時は焦ってしまってはダメですよ。話をしっかりつめて、見落としがちな情報をヒントにご自身、そして仲間の閃きに期待しましょう」

「はい…っ」


ヴィンセント兄様を見上げるレオンハルト王子はくしゃりと泣き出しそうに顔を顰めると、次の瞬間には心なしかホッとしたような、嬉しそうな笑みへと変わっていく。

うーん、やっぱりレオンハルト王子、焦ってるように見えるよね。
でもそれは、急いで王様になるぜ!的なものでもないし、何なんだろう?

『笑う』に関してもよくわからない制約をつけられていたし、この焦りも何かの制約から起因するものなんだろうか?
そう考えてしまうと、何だかすごく嫌な感じだ。


「現時点では宝箱自体を壊すのが一番現実的ですかね?現状、鍵は存在していなさそうですし」

「しかし、古代の魔道具アーティファクトだ、しかも『監獄』と呼ばれているくらいだから、囚人達を『強制的に収容する拘禁施設』として作られたのだろう。壊すという事はつまり、古代の魔道具アーティファクト側に我々が『襲撃者』もしくは『脱獄幇助をする不届き者』とみなされた場合、壊せないばかりか、とんでもない反撃をされてしまう場合があるので……お勧めできない」

「あ……そう言われてみればそうですね。牢を壊しに行くとか、罪人の仲間くらいですもんね。どう言い繕ったって、そういう人間にしか見えないですね」


ではどうすべきなのだろうか?その答えがどうしても気になって、そっとベッドから降りるとソファーへと足を向ける。
ちなみにカイルザークとシュトレイユ王子は……思いっきり熟睡の様子で、すやすやと気持ちが良い寝息が聞こえてたよ。

そういえば、昼下がりのまさにお昼寝タイムから私は熟睡しちゃってたわけだけど、そのあとからカイルザークもエルネストも、レオンハルト王子にユージアまで寝ちゃってたって事は結構な時間が経っていると思うんだ。
さて今は夕方?夜?……まさか、夜中?


(事の解決は『大人に任せる』にしてもやっぱり、把握しておかなきゃいけない事は、しっかり聞いておかないとダメだわ)


……シュトレイユ王子なんて、かなり早いタイミングから寝ちゃってたし、起きてから色々話されてもパニックだろうな…なんて、状況把握の大切さを身を以て知ることとなってしまったレイにも同情してしまう。
ちゃんと謝ってくれたのに、実体験での反省みたいになっちゃったね。


「……以上の報告と『新たな管理者』に少しばかり心当たりがあってね、ここに来たわけだが」


ふと、ルークの言葉が止まり、視線がドアへと向けられる。
なんだろう?と思って同じくドアへ注意を払うと、廊下の騒がしさが耳に入ってきた。

ヴィンセント兄様は杖を構えてドアへ近づこうとして、ルークに制止される。
……若い男女の…言い争う声?


「……っ!!」

「…だからっ!そうじゃなくて」


ばん!と、大きな音を立ててドアが開くと、そこには母様と同じ銀の髪の女性と魔術師団のローブを羽織った赤い髪の青年……。


「にいしゃまっ!」

「……あ、セシリア!無事だったんだね!よかったぁ~!」


ソファーへ向かいかけていた足が、セグシュ兄様へと向かうダッシュに変わる。
セグシュ兄様は少し屈むと、そのまま私を抱き上げてくれて…どん!と兄様の背中越しに衝撃を感じた。


「ほらっ、はやく入りなさいよっ!!」

「あ…うん」

「セシリア、久しぶりね」

「はい…」


……セグシュ兄様の背に、見事な膝蹴りが当たっていた。
当たっている状態からの、満面の笑みでの挨拶に、私はどう反応したら…良いのかわからず、はい。とだけ返事をしてしまった。
良い子ね。と頭を撫でられたのだけど、あれ……この姉様って、こんなにアグレッシブだったろうか?


「セグシュ兄様のほうが無事じゃないような……」

「あ、いや…無事、だよ?うん…無事」


私を抱えたまま立ち上がると歩き出すのだけど、心なしかふらふらしていてエルネストも心配そうに声を上げていた。
大丈夫って本人は言ってるけどね、支給されたばかりであろう魔術師団のローブは大きく裾が裂けているし、肩口から胸にかけて、点々と血が付いているのだった。


「ち、ついてるよ?」

「怪我は、してないよ!……私の血では、無いから」


最後の言葉はとても小さく、ポツリと呟かれた。
同時にぎゅっと抱く力が強くなる。


「ふふっ。精神的に大怪我っぽいわよ?……この子ったら、自分で反撃したくせに相手の返り血を浴びて放心しちゃうんだもの!全く頼りにならないのよ?!」


ふん!と鼻息荒く怒りつつも、セグシュ兄様への視線は優しいフィリー姉様。
セグシュ兄様が毎度負かされてるというのも頷ける勢いの強さ。
でも、これって愛の鞭っぽいよね?
かなり痛そうだけど。

ただ、セシリアわたしに会いにきてくれたときは、色々とはっきりと言う人だな?くらいの印象で、基本的にはいつもにこにこしていて素敵なお姉様と言った感じだったから。
あとは私の一挙一動について、きゃーきゃーとテンション高くひたすら呪文のように『可愛い!』を連呼してたくらいの記憶しかない。


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