私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

231、自己紹介をしよう。

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突然、主人あるじを失ったカートは…そのことすら気付くそぶりもなく進み続けテーブル横に到着すると、ティーポットやカップ、菓子達がふわりふわりと宙に浮きテーブルへと移動を始める。ルークのフォロー?かな。
その様子にレオンハルト王子が目をキラキラとさせて見入っていた。


「あら!レオンも久しぶりね?……お兄様っ!この子達が新しい弟?」

「あ、ああ……」


フィリー姉様はユージアを抱えたまま、すごい勢いでヴィンセント兄様へと近寄ると、ルークとレオンハルト王子へカーテシーをした。
そのままレオンハルト王子の向かいに座るエルネストをじっと覗き込んで、にこりと満面の笑みを浮かべた。

エルネストは……目を見開いたまま固まっているのが遠目にも見えて…。
緊張かな?恐怖かな?……私ならあの勢いでグイグイ来られたら恐怖かな。
そんなエル達の反応にはお構いなしに、フィリー姉様の暴走は続いていった。


「可愛い…凄く可愛いわっ!母様から中々のやんちゃ達だと聞いてたのだけど、こんな美人さん達のやんちゃなら、いくらでも許せるっ」


いや、そんな理由だけで許しちゃダメですよ……。
って、美人さんって……。
美人さん…か。ユージアはエルフだし、エルネストとカイルザークも獣人の…というかいまいちシシリーわたしには違いがわからなかったけど、魔道学園でカイルザークは少なくとも他の獣人よりも線が細い系の『綺麗』と言われる部類だった、と言われていた。

それがカイのコンプレックスでもあったのだけどね。
エルネストも同じ種族なのだと言っていたから、成長も似たようになるのかな?と思うと、双方ともにフィリー姉様の言う『美人さん』なのかもしれない。


「……セシリア、助けて」


ぼんやりと、エルネストは将来どんなふうに育つのかな?とか考え始めたところで、少しぐったりとしたユージアの声がした。
助けようにもね、私、セグシュ兄様に抱えられてるので何もできないですよ?


「ユージア、がんば「頑張って」」

「……えっ…酷いって、ちょっと!やめっ…!いやぁぁ…」


フィリー姉様に揉みくちゃにされて干からびかけのユージア。
素直に頑張れと言った言葉に重なるように、セグシュ兄様にも同じように言われ、ショックを受けていたのだけど、そんなユージアの様子なんて全くお構いなしに、フィリー姉様はさらにグリグリと可愛がりながら、今度はベッドへと移動していくのが見えた。


「やだ!こっちも可愛すぎ!しっぽまでついてる!」

「ぅん~……?」

「きゃー!しっぽ!耳!可愛すぎるっ」


どうやら、ユージアを抱えたままカイルザークにまでちょっかいを出しているようだった。
……って、しっぽ!って言ってる時点で毛布剥ぎ取ってませんか?


「うわっ…?…ん……え?なにっ?!…あれ」

「あら、この子オムツしてないのね?えらいじゃない」


カイルザークの半寝ぼけからの悲鳴じみた驚愕の声と、フィリー姉様のとんでもない一言が聞こえたような気がした。
するとその声に続くかのように、呆れた色のヴィンセント兄様が声をあげた。


「えっと……フィリー?まず自己紹介しようか?……ついでに言うと、今お前が襲って抱えてる子は、正確には弟じゃないぞ?ガレット公爵家うち預かりになっているが、ハンス先生のご子息だ」

「なんとっ!……可愛すぎでしょう……って、弟かと思って尻を見てしまったわ」

「いやああぁぁ!言わないでっ」

「……弟でも、いやです…」

「「……」」


フィリー姉様の呟きに、恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にして悲鳴を上げているユージアと呆然としているカイルザーク。
……どっちも見られちゃったのね。

その反応に無言で頭を抱えるヴィンセント兄様とセグシュ兄様。
フィリー姉様を見つめて、あからさまに怯えた表情になっているエルネストに「ぶふぉっ」とか激しく笑い転げてしまっているレオンハルト王子と。

何やら色々と収拾がつかなくなってきているような気がしてならなくて、辺りをきょろきょろしていると奥の部屋から、ひょこりとルナとフレアがこちらの様子を伺う様にしていた。
……ルナまで奥の部屋に行っちゃったのね。
いつの間に移動したんだろう?


「いや、おむつ有無の把握は大切な事なのよ?これから一晩お泊まりですからねっ!それに、可愛いお尻だったから私は問題ないわよ~」

「気にします……」

「僕は、問題あります。弟でも、ダメです……」


あります…ね。うん、大いにあると思います。
フィリー姉様の、フォローになっているのかどうかよくわからない、微妙な言葉を耳にしつつ、セグシュ兄様が眉間をおさえるようにして、ふらふらとソファーへと移動する。


「姉が……すみません」

「……いや。そろそろ良いか?」

「あっ…はい。まずは自己紹介…から…」


セグシュ兄様がそう言いかけかところで、フィリー姉様がユージアを抱えたまま、空いた片手をブンブンと振りつつソファーへと寄ってきた。


「あ!はいはーい!私からっ!ガレット公爵家の三女…じゃ、紛らわしいか。上から4番目のフィリーよ。よろしくね」

「……嫁入りしてんのにガレット公爵家名乗ってる方こそまぎらわ…いてっ!」


ビリっときましたぁぁっ!
あ、いや、セグシュ兄様に抱えられてるからね。
兄様の軽口への反撃だろう、電撃の刺激が……私にも。
思わずびくり!となったところで、そっとセグシュ兄様から解放、降ろしてもらいました。

ちょうどカイルザークも衣服、そして揉みくちゃにされた髪の乱れを直しながら、ベッドから降りてこちらへ歩いてきてるのが見える。
微妙に頰が上気していて、可愛らしかった。


「はいはい……2人とも落ち着いてね?カイも起きてきたみたいだし、ちょうど良いから双方の紹介をさせてもらうよ」


はぁ…と言う、小さなため息の後、パンパン!とヴィンセント兄様は手を叩くと、周囲が静まり返った。


「まず、上の2人は騎士団員として動いているからここには来ないからね…まぁ、かくいう私も治療院の仕事込みでここにいるのだけど。と、いう事で上から3番目が私、ヴィンセント。4番目がフィリー。5番目がセグシュだ。よろしくな」


そう言うと、エルネストとカイルザーク、そしてユージアへと視線を向けてにっこりと笑う。
その言葉に続いてにこりとセグシュ兄様。


「私も魔術師団としての護衛のお仕事込みで来てるよ」

「護衛失敗してたけどねっ」

「……2人とも、とりあえず、黙れ?」

「「はいっ」」


……ヴィンセント兄様の満面の笑みで、いや、なんか凄みのある満面の笑みだったけど、再度大人しくなる2人。
おかしいなぁ……セグシュ兄様は素敵なお兄様って感じだったのになぁ。
元々こんな感じだったのかな?それともフィリー姉様が強烈なだけなのかしら?

これはこれで好感持てるけど、セシリアわたしに見せていた『素敵なお兄ちゃん』像は音をたてて崩れ去ってしまったよ……。


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