私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
262 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

262、診察なのかな?。

しおりを挟む




ルークは私たちを抱えたまま、手近な個室へと入ると中に設置してあったベッドにユージアを落とす。
……ユージアに抱えられていたカイルザークも一緒に転がり落ちたわけだけど。

先ほど入室した、姫の部屋ほどの豪華な作りでこそ、なかったが『使用人の部屋』という割には、シンプルではありつつもしっかりとした作りの調度品が置かれている。


「さて、私は今、片手がセシリアで塞がれているんだが……自分で脱ぐか、強制的に脱がされたいか選べ」


いや、あなた、片手塞がれてようが塞がれてなかろうが関係ないでしょ……。
と、思ったのはさておき、ルークはあからさまに怒っているといった表情で、ユージアを見下ろしていた。


「ユージア、キミの傷の痕を見たいようだから、素直に見せた方がいいよ?」

「えっ?あ……うん。セシリアに全部消してもらえたと思ってたのに。古い傷は戻ってきちゃうんだね……」


そう言いながら、ベストとタイを外し、ドレスシャツを寛げる。

私には、それだけで十分だった。
鎖骨より下、胸のあたりから腰のベルトの上まで、ミミズ腫れのようになった無数のケロイド状の傷痕が見えた。


「あら……結構はっきり戻ってきてるね、綺麗になってたのになぁ」

「うーん、これは……深いし、古い傷だね。かなり出血もあったんじゃないの?」

「……昔過ぎて覚えてない、かな」

「古いものほど、なかなか消えないから」


カイルザークの言葉に淡々と答えていくユージア。
深くなければ傷痕なんて残らない。
それこそ縫わなければならないほどの傷、もしくは放置されて悪化した傷。
……その、両方か。

あの『籠』の環境からして、衛生状態は最悪だった。

最悪だったからこそ、同じ境遇にあった子達を看取る…何人も、みおくる事になってしまったのだし。
魔導学園で洗いまくったユージアの身体の、あのとんでもない量のよごれから考えても容易に想像がつく。

不意に私を抱き上げていたルークの腕に力がこもる。
そりゃそうか…日々のユージアへの態度が辛辣!とか思っていたけど、それでもやっぱり息子なんだね。
自分の子じゃなくても、これは許せないけどね。


「……全部、脱げ」


ルークの唸るような低い声が聞こえて、びくりとする。


「全部は……セシリアもいるし…」


ユージアはこちらを見て、困ったような笑みを浮かべつつ、頬を染めている。

あ、そうだった。
恥ずかしいよね!というかいろいろ差し障りがあるよね。


「全部脱がなくても、大体見えるよ」

「ちょっと!見えるって何?!」

「ん~臭い?かな?ルーク、傷は古いが切創……刺創が無数にある」


カイルザークの説明に、怒りがふつふつとこみ上げてくる。
切り傷と刺し傷の事で……刺し傷が無数にあるとか『籠』ってどんな環境だったのよ。

ルークの私を強く抱えている腕に、もぞもぞと動いて『降りたい』アピールをしてみる。
するとすんなり気づいてくれたのか、そっと降ろしてくれたので、そのままユージアの元へと近づく。


「ね?僕は、汚れてるって言ったでしょう?」


ポツリとユージアの悲しげな声が響いた。
汚れてなんかないのに。


「じゃあ、キレイにしてあげゆ。またうかんできても、ぜんぶ、けしゅ。ユージアはよごれてなんかないよ」

「この傷と同じだけ…人を傷つけてきたんだ」


……泣かないで欲しい。
その傷があるから泣いてしまうなら、全て消してあげるから。
そう、心から思う。

実際、泣いてはいなくても、ユージアの悲痛とも言える感情が私へと流れ込んできていた。
『花紋』の影響なのだろうか?
相手の感情がわかる、と言うのは結構大変なのかもしれない。


「それでも、ユージア……生きていてくれて、ありがとう」


ユージアは悪くないもの。
そしてその辛い環境の中でも、必死に生き抜いてくれて、ありがとう。
あの時『監獄』で助けることができて、本当に良かったと思う。


「けしゅよ」

「……今は、いいよ。これから出かけるんだから、魔力を使うようなことは控えておかないとね。……また動けなくなっちゃうよ?」


やっぱり困ったような悲しそうな笑みを浮かべられてしまった。
笑顔は、楽しい!っていう表情しか認めませんよ?


「しっかし、これだけ傷痕が酷いと、身体を動かした時に引き吊れたりとかはしてないの?」

「今まで違和感なくうごけてたから、そういうのは…なかったと思う。それに」


どんな言葉をかけていいのか分からずに、固まってしまっていた私を見ると、ユージアは手を伸ばして、私を抱き上げる。


「今は、痛いことなんて絶対ないもの。だから、大丈夫」


ぎゅうっと私を抱え込んでしまった。温かい。
私の視界は、ユージアの鎖骨あたりしか見えなくなってしまったのだけど、その体温が生きているという実感となって少し嬉しく感じる反面、少し違和感があって……。


「ユージアって……きんにくないね?あばらが、ういてる」

「ちょ……!どこ見てるの?!」

「いや、なんかゴリゴリしゅるんだもん」

「これからつく予定なのっ!しかも全然ないわけじゃないんだからね?!」


ないわけじゃない。そう言う割には、本当に何もないんだけどなぁと、思わず手で胸の辺りをぺたぺたと触っていると、腕を掴まれてしまった。


「っていうか、傷跡が見たかったんでしょ?筋肉は…って!ちょっと!やめっ…!!」

「……?なあに?どうし…えっ??」


私を抱え込んでいるユージアから布の感触が消えた。
いや、視界がシャツを寛がせているから、大きく広がった襟元から鎖骨が見えてたような状況だったのだけど、本当に一面肌色に……。

あれ?と思っているとユージアの悲鳴がこだまする。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...