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はじまりはじまり。小さな冒険?
267、ダンジョン前につきました。
しおりを挟む「このドアだよ。ドアの先がさっきの避難所みたく『監獄』に繋がってたんだ」
先頭を歩いていたユージアがドアノブに手をかける。
カチャリ。と、金属の軽く擦れる音とともに、抵抗なくドアが開いた。
「やっぱりか~。入れる時のこのドアの先はレンガの道なんだ。入れない人だとこの部屋になっちゃうんだよ~」
ガッカリと肩を落とすユージアの背後から、それぞれがドアの先を覗き込むが……その先には何の変哲もない古びた応接セットが置かれているだけだった。
……秘密の入り口になりそうなクローゼットや、地下への入り口でもありそうな、一箇所だけ音の違う木の床も、子供心にワクワクしそうなものは何もなかった。
部屋の様子を隅々まで、とても丁寧に確認していたレオンハルト王子とシュトレイユ王子は、その古びた応接セットすら物珍しいのだろう、何も起きなかったことにガッカリしているユージアとエルネストと違って、古びた応接セットに触れてはニコニコと楽しそうにしている。
ま、どちらにしろ彼らの表情から『冒険だ!』という期待のようなワクワクの色は抜けてないわけだけど。
「本当にあの『避難所』みたいなものなのか…何も起こらないね」
「本当にここから行けたのかしら?」
フィリー姉様とセグシュ兄様が王子たちのように、部屋の隅々を探したが、特に怪しいものは見当たらず、探検早々に行き詰まってしまったかのような状況になってしまっていた。
「魔法陣式じゃないとなると…」
「想定内だな。……では、セシリア『管理者』の発動を」
カイルザークが呟きかけた言葉に重ねるように、ルークはふわりと涼しげに笑いながら私を覗き込むと、おでこにキスを落とした。
あまりに唐突なことだったので、は?と、思考停止して固まっていると、背後からフィリー姉様の声が聞こえてきた。
「えっと……セグシュ?…あれ何よ?」
「えっ……アレと言われても」
「いや、あんなハンス先生、今まで見た事なかったんですけど!?」
「うーん、私もだけど…でも、セシリアの前では、ずっとああだよ。それこそ初対面の時から」
「初対面って…まだ学園入学前よね?一体どこで…?」
「あー……えっと、…「お前たち?…ちょっとこっちに来なさい」」
「「あ、はい」」
ヴィンセント兄様に引きずられるようにして、フィリー姉様とセグシュ兄様が退場して行った。
彼らに続くようにしてユージアとフレアが部屋の外へ……。
ユージアとフレアは、他の部屋に入り口が移動してたりしてないかを確認に行ってくれたらしい。
残されたのはレオンハルト王子とシュトレイユ王子、そしてエルネストとカイルザーク。
ってそうだ、びっくりして固まってる場合じゃなかった。
「……降ろして?」
「ああ」
ルークの抱っこから解放されて、ちょっと伸びをしてから、床の凝視を始める。
この部屋に『監獄』へと出入りするための魔法陣があるのなら、発動こそしていなくても、描かれた痕跡は見つけることができる。
特に移動魔法のように長期にわたって使う魔法陣の場合は、簡単に消えないように、描くだけではなく、直接床に刻み込むのだ。
「セシリア、何してるの?」
「レイ…えっと、床にね、魔法陣が描いてないかなって…探してるの」
「わかった!探してみるね。兄様、行こう!」
「レオン、僕も行く!」
シュトレイユ王子に引っ張られるようにして、レオンハルト王子も移動を始め、そのレオンと並ぶように、エルネストもついて行く。
「ここはもう見たから、隣の部屋行ってくるよ!」
「うん!おねがいね」
「任せてっ!」
シュトレイユ王子のキラキラの笑顔で返事が返ってきた。
目的地がアレだけど、シュトレイユ王子にとっては大冒険なんだろうね。
とても楽しそう。
そして……解呪したばかりだから、身体が楽になったのかな?
楽しそうにしている姿を見れることが嬉しい。
さっさと呪いを吹き飛ばしちゃおうね!
******
「さて……っと。ねぇ?ここに魔法陣が無いのに、教会の人たちは、この部屋から『監獄』出入りしてたんだよね?」
「……ヤバい予感しかしないんだけど。それが本当なら、この『監獄』ってのは、国単位での施設か何かのはずだよ?心当たり、無い?」
カイルザークが幼児特有の可愛らしい顔の眉間をしわしわにして、ルークに訊ねるが、ルークは小さく首を横にふる。
……クロウディア様の嫁入り道具ではないって事だよね。
流石に、国単位での費用がかかるような嫁入り道具は…怒られちゃうか。
「中央公国から持ってきた個室タイプの魔道具は、私が知っている限りではあの『避難所』だけだ。あれ自体が中央公国の特注品だったはずだが」
「何のために、誰が、作ったんだろうね……ただ、このシステムなら確実に、学園に利権発生してるから、セシリアなら開けれるはずだよ」
エルフと獣人の幼児が、真剣な会話をしている。
2人にはとても失礼かもだけど、なぜか内容と似合わずに微笑ましい。
「えっと……ごめん、管理者モードの開錠って、どうやるんだっけ?」
「……キーに魔力を通して『開錠』って言えばいい、その石板、学園のマスターキーなんでしょ?」
「ありがとう」
魔導学園の研究室はある程度持ち回りで、学園と利権が絡む施設や設備の定期メンテナンスを行っていた。
私も何度か行ったことがあるんだけどね……すっかり忘れてたよ。
思ってたより簡単そうで安心する。
「あの『監獄』がここの地下に存在してたら良いのだけど……まぁ、まずは『開錠』……あ」
「あ。じゃ、ないっ」
解錠と命じた直後、足元の床が抜けた。
床が抜けて、真っ逆さまに落ち始める。
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