私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
273 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

273、痴話喧嘩を観察してみる。

しおりを挟む



「やだ!なんなの…羽のように軽いってやつじゃないっ!」


予想外に軽かったのか、セグシュ兄様が抱き上げたときのように、同じくタタラを踏みかけていたが、フィリー姉様は軽々と、フレアをお姫様抱っこにして、ヴィンセント兄様の後へと続いて移動を始めた。


「この子なら片手でもいけるわ」

「フィリー姉さん……なんかすごい力持ちに見えるよ」

「それ良いわね!…どう?強そう?」


眠ってしまったかのようにピクリとも動かないフレアを、軽々と持ち上げてダンスのステップを踏むかのように優雅にくるりとまわってみせる。
セシリアとよく似た柔らかな銀髪がふわりと広がるって、教会の天井付近から差し込む、ステンドグラス越しの色のついた光を受けては、キラキラと不思議な遊色をする。

そんな2人のやりとりを、少し呆れて見つめつつ、ため息混じりにヴィンセント兄様が呟く。


「それにしても…この二人に何があったんだろうな」

「ヴィンセント兄様がわからないのなら、私に分かるはずがないじゃないですかっ」

「そこ、胸を張っていう所じゃないから……」


セグシュ兄様まで、周囲を警戒しつつ、呆れた視線を送っていた。
そんな大人たちの会話の中、背後からクスクスと笑い声が聞こえる。
シュトレイユ王子だ。


「エルのお兄ちゃん達は面白いね。……兄弟が多いってだけで賑やかだよね」

「……だな、2人だけだと流石にここまで賑やかにはならないからな」


そしてニコニコと、セグシュ兄様がフィリー姉様に、とても自然な動作で足蹴にされてるのをみてさらに笑う。

そんな子供たちの笑い声をBGMに、ヴィンセント兄様がぶつぶつと考えをこぼし始めた。


「ああ、フィリー、すまない。弱音を吐いたわけではないんだ。ユージアはエルフとは言え生身の人間だ、突然倒れるにしても、いろいろな要因が起因しての…という考えが浮かびはするんだが、フレアは精霊だ。いわば魔力の塊が人の姿をしているようなものなんだよ。それが倒れて反応がないっていうのはどういう事なんだろうねって思ってね。……あくまで魔力の塊であるなら、倒れるのではなくて、姿を維持できなくなるのでは?と思ってたんだよ」

「……そういう事。まぁそうよね、つまり、精霊フレアとユージアという条件の全く違う2人が同時に身体に異常を起こしてしまったことに対しての違和感ってことね?説明としては理解できたけれど……やっぱり、理解できないわ」


フィリー姉様の足取りは、人を一人抱えてるとは思えないほどに軽い。
気づけばカテドラルの天井から差し込む、色とりどりの光が無くなり、いつの間にか所々には魔石のランプが揺れる、レンガ敷きの廊下を歩いていた。


「なんだそれ……まぁ、実際何があったのか聞こうにも、2人ともこれじゃ、どうしようもないし」

「……セグシュ。あんた本当に単純なのね。びっくりだわ」

「?」

「フィリー、いちいちセグシュに絡むのはやめなさい……」


一向に呆れた顔が抜けないヴィンセント兄様が、目の前に現れたドアを開けると、そこは既に『避難所』の室内だった。
ヴィンセント兄様は、そのまままっすぐベッドへと向かうと、ユージアをそっと寝かせた。


「それにしても…エル、よく2人の異常に気づいてくれたね。王子達も。状況の説明がとても上手にできていたよ。えらいね」


そう言うと、ヴィンセント兄様は目を細めるように笑い、気軽にそれぞれの頭を撫でる。
レオンハルトは少し恥ずかしそうに俯いてしまったが、広角は上がり……表情はとても嬉しそうに見えた。
シュトレイユはそのまま、嬉しい!とニッコリ。


「しかし、本当に反応がないわね…」

「姉さん……急病人にいたずらするのは、止めようよ」


ユージアに続いて、隣にフレアを寝かせていたフィリー姉様が、意識のないフレアの顔を指で突きまくっていた。
セグシュ兄様の制止の言葉に何故か、フレアへの悪戯が激しくなり、必死に止められていた。


「ここまで反応がないと思わず…」

「ダメっ!……というか、この精霊がダウンしたままだと、ハンス先生やセシリア達とも連絡が取れないんじゃないかな」


フィリー姉様の悪戯をしたい手と、それをやめさせたいセグシュ兄様の手とが、何かのゲームのように素早く攻防戦を繰り広げているのを見ていると、背後から小さなため息のような音が聞こえた。

その音に、フィリー姉様も気付いていたようで、セグシュ兄様の腕を派手に払い除けると、ベッド前から立ち上がりまっすぐレオンハルトとシュトレイユの前へ立った。


「もう…夕方近いものね。眠いなら少し寝てて良いのよ?お昼寝の時間よね?」


セグシュ兄様を前にした時とは全く違う優しげな表情で、声で、話しかけると有無を言わさず抱き上げて、ベッドへと連れて行ってしまった。


「ほら!あなた達も!レイ1人じゃ寂しいから、一緒に寝ちゃって?」


そう言うと、僕たちも問答無用でベッドへと誘導される。
誘導しながらも、先ほどの会話が続いていて……。


「まぁ、緊急ならハンス先生の精霊だっているんだから、大丈夫でしょ?」


……大人たちの会話を聞きながら、ベッドに寝かされて毛布をかけられると不思議と急激に眠くなっていった。
セシリアとカイルザークが戻ってきていないけど、先生と一緒なら大丈夫だよね?と思いながら……。

完全に意識が途切れる本当に直前、部屋に轟音が響き渡った。
そして目の前にはセシリアを咥えた、大きな……。
大きな獣がいた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...