私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
276 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

276、笑いが止まらない時ってあるよね。

しおりを挟む



大きな口?赤黒い洞窟のようにも見える一点に、ぎょろぎょろと動く目玉が房のように連なって揺れている。

怖い。気持ち悪い。
この二人だけでもなんとか逃がせないだろうか?
……なぜかこの目玉を見ていると、そんな死を目の前にした感情が全て吹き飛んでいった。

目玉の動きがコミカルだから?それとも目玉の位置?
……いや、そもそも何を見るための目玉なのか?
背にも赤く光る何か…と思っていたものが、全身に散りばめられた目だということにも気付いたが、それは外敵を察知する為だろうというのは察しが行く。
が、喉の奥に揺れる目玉の意味は?
しかも葡萄の房のようになって、ゆらゆら揺れている必要はあるのか?


(なんであんな…視界だけでも酔いそうなところに、わざわざ目玉を配置する必要が?そう進化を望んだ理由は?)


きっと、極度の緊張状態から来る精神状態の異常かもしれないとは思いつつも、どうにも気になるし、さらには笑いがこみ上げてきて抑えきれない。


「……ふっ…あははは」

「?!…セシリア?どうしたの?」


突然の私の爆笑に、カイルザークが杖を構えてドラゴン(?)を見つめたままに、ぎょっとする。
なんて説明すべきかよりも、それの何がどう面白かったのか?伝えようと思って困る。
えっと、何が面白かったんだろう?

そう困ってるうちにも、私とカイルザークを抱えているルナが寄りかかる壁ごと抉るように、大きく裂けた顎だったものが上下の壁に突き立てられる。
視界はすでにドラゴン(?)の喉の奥しか見えない。

そのままパックン、ゴックンで終了だ。

流石にそれは困る!そう思って両の手に集めていた魔力を、魔法として放出した。


『ふぁいやーぼーるっ!』

「えっ……いや、なんか違うでしょそれ……」


即座にカイルザークの突っ込みが入ったけど、気にしない。
炎のボールだもん。
ちゃんと飛んで行ったもん。

ていうかそもそも、私は攻撃魔法なんて専門外なんだから、完璧な魔法を求めちゃいけないのよ。
本業であれば限界まで威力や精度を高めるために、形状はこうあるべきだとか、イメージから魔力の込め方、量まで、こと細やかに調整していかなければならないのだけど、そもそもその魔法を私は間近で見たことがない。
名前は知っていてもイメージ自体が存在しない。


(それにだよ、魔力のコントロールに難がある人間に、即興で攻撃魔法を操れという方が無理なんだから!)


とりあえず、ファイヤーボールっぽいものは、ぽよーんと緩やかに喉の奥へと飛んで行き、先ほど私を笑わせてくれた目玉の房に直撃をした。

強く投げつけるような勢いではなくて、文字通り、ぽよーんである。

私の投げたファイヤーボールは、目玉の房を火炙りに……しなかった。
ジューっと焼け焦げる臭いを、煙を上げながら、房にゆっくりと張り付いたまま沈みこんでいった。


「いや…確かに球状だけどさ……あれだと溶岩マグマとか言うんじゃ…っ」


目玉だから、危険な状況なのは見えてたはずなのに全く避ける気配がなかったなぁとか、そんな考えの中、カイルザークのぼやきが聞こえて…と途中で言葉が途切れる。
流石に痛さは理解したのか、喉の奥から強烈な臭気と液体とが吹き出してきたのだった。

一瞬、ドラゴン特有のブレス攻撃か?と焦ったのだけど、そうではなく。
どうやら悲鳴だったらしい。と言うことに気づく。
なぜなら、直後、身体を捻るようにもがきながら、壁に張り付くことすら放棄し、地面へと墜落していったからだ。


「全方位の障壁展開…きっつい…」


杖を構えたまま、肩で息をしてぐったりなカイルザーク。
この状態で次の攻撃を耐えることは、厳しいだろう。


「原材料、ゾンビなのに痛覚あるんだね…」

『セシリア…そこじゃない。関心すべきはそこじゃないよ』

「まぁそれはともかく…この次はどうしようか?相変わらずあのドラゴン(?)はドアの前で転がってるし……」


口蓋垂を焼かれる…まぁ聞いただけでゾッとするんだけど、それはドラゴン(?)も同じだったようで、地面に墜落した後、その場でごろごろと…のたうちまわっている。
もしできることならば、この隙に出口と向かいたかったのだけれど、その寄りかかる背の下に出口が存在していた。

時間的にも昼下がりからここにきている。
つまりこのまま長居していると、夜になり魔物がさらに活性化していくので、ただひたすらに私達が不利な状況になっていくのが目に見えているのだ。


『ん~、まず心配すべきはさ「この次は」じゃなくて「今」なんだよね…』

「と、いうと?」

『アイツ、僕達をひと飲み込みにしようと、上下の壁を抉ってたでしょう?…つまり』

「あ、周辺の壁ごと剥がれ落ちる?」

『そうそう。ほら、崩落が始まった…』


ずずず…と、嫌な地響きと共に、視界がゆっくりと下方へスライドしていく。
ルナはすぐに隣の、今いた場所と同じように飾り彫りのバルコニーへと飛び移る。
……同じ高さの横にずらりと同じ飾り彫りが多数あるのだ。

が、同じことを何度も繰り返している場合では無いのはわかっている。
しかし、他に足場にできそうなものが何もない。


『こうやって逃げてる間に、出口から少しでも退いてくれたら、少しは勝機がありそうなんだけどなぁ』


滞空中、もう少しで次の飾り彫りのバルコニーに着く!というところで、地上でのたうちまわっていたドラゴン(?)がこちらへ向かって飛び跳ねてきた。
間一髪のところで、ドラゴン(?)の爪をかわして、バルコニーに着地できたのだと思った瞬間、すごい勢いで視界が横に流れた。


「うわっ……ぎゃああああああっ!」


急速に身体が上下されるときの、内臓への重力を感じて思わず悲鳴が出る。
そして、さらに自分の身体がルナの腕による抱きかかえから、単純に上下から圧迫されている状態になっていることに気づき、自分の胸から下を確認しようとして絶叫となった。

黒い獣に喰われ…いや、咥えられていた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...