私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

303、side カイルザーク。おやすみなさい。

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ドアノブが壊れてしまったら、押し開けてしまえば良いのに。と、思うでしょう?
でもね、ドアが壊される様な時ってどんな時だろう?


(……そう、研究室長の執務室なだけあって、襲撃者への防衛・防犯機能が完璧なのですよ)


ドアを壊して侵入されて、研究の成果を盗まれてはたまらないから。
もちろん、襲撃を受けて逃げ込んだ先で、ドアを壊されて侵入されたら……ここは地下にある施設だから、窓から逃げるなんていうこともできない。
袋の鼠になってしまうからね。

そして、この魔導学園の建物自体が超巨大な施設型の魔道具マジックアイテムとなっているので……。
壊れた状態に再度衝撃が加わると、完全にドアに強化魔法とロックがかかり、管理部の人間が解除しない限りは解錠ができなくなる。

ただし、少し待てば基本的には自然修復するので、緊急時でないならば、もし壊してしまっても、少し待っていれば直るのだった。
そう、少し待っていれば……。
少し……。

だから。

だから……早く直ってえええええっ!!


『先輩も、早く起きてーっ!』


何度声をかけても、シシリー先輩の目は覚める事が無く。

むしろ声をかけることによって、眠りが浅くなるのか、寝ぼけが余計にひどくなり、しっぽに抱きつく腕に力が篭ったり、反射的になのか、その場で顔をすりすりと擦り付けられたりという、こちらの精神的被害が大きくなるだけだという事に気づき、ただひたすらに、扉の修復が完了するまで耐え続けることとなった。

……結局、自業自得とはいえ、ドアのドアノブごと落としてしまったために『軽微な損傷』ではなかったようで、修復が完了するまで30分もかかってしまった。
そして、その間をずっとこの状態で、耐えた。
この恥ずかしすぎる仕打ちを、耐え切った。


(あ、いや、まぁ、ゲストルームが無理でもとりあえず、その隣の部屋はシシリーが私室として使っているのは知っていたので、そちらへおろせば良いかなとは思ったんだ)


ただ、扉を開いて、ベッドへ……と、視線をやると先客がいたので……。
「扉を開けなかった・部屋の中は見なかった」という事にした。

女性の部屋だもんね、勝手に開けたり覗いたりしちゃダメだもんね!
……女性の…う~ん。
ま、女性だよね。うん。


(ていうか、普通の女性なら、しっぽの付け根あたりを頬擦りしたりしないと思うんだ……)


そこ、思いっきりお尻だからね?
普段触られたりするような場所でも無いから、やたらとくすぐったくて集中出来ないし、妙に四肢の力が抜けるから、歩きも妙にふらつくし。

そもそもだ「野郎のお尻に頬擦りをする……」って言い換えただけでも、怪しすぎだ。
脳裏のそんな光景に軽く戦慄しているうちにゲストルームのドアの修復が終わり、開閉可能となった。

今度こそドアを破損させないように、慎重に慎重に魔力操作でドアを開けると、気持ち身体を屈めて小さくして、ドアをくぐり抜けて入室する。
そのままゲストルーム内に設置されているベッドに直行し、完全獣化を徐々に解いていく。

ガッチリとしっぽにしがみ付いていたシシリーも、獣化から人化へと移行するに従ってサイズが変わっていくと、滑り落ちるように……あ、目算誤って床に寝転がしてしまった。


(ま、まぁ、うっかり床に落とすよりは…いいかな?)


そのままダッシュでシシリーのそばを離れると、ソファーに畳んで置いた制服のシャツとズボンをとりあえず身に付ける。
シシリーを床に転がしっぱなし、というのも申し訳ないんだけど、それでも人化の真っ裸状態でベッドへと抱き上げるのも……色々と問題があると思うんだ。

と、いうことで、なんとか身支度が済んだので、改めてシシリーを抱え上げるとベッドへと運ぶ。


『……カイ…?夢?……でも、良いや。良い表情かおして…る』

『……夢ですよ。夢…』


抱え上げた拍子に、目があったような気がしたのだけど。
どうやらまだ寝ぼけているようで、首筋にぎゅうっと抱きつかれる。
目は開いているのに、焦点が合っていない…反応から見て、目を開けたまま寝てる…?
もう、これはハプニングというより、ここまでくると、酷い寝起きの悪さで……。

寝ぼけるにしても程があるぞ?と思いつつ、シシリー先輩の表情を間近で見て、思わずぎょっとした。


『先輩は…頑張りすぎですよ。少し休んでください』

『…じゃあ、少し…』


そっとベッドに寝かせ直すと、言葉の途中で完全に意識が飛んでしまったのか、すやすやと心地良い寝息とともに、反応がなくなってしまった。

見ているだけで良いから。
二人きりにならないように、傍に近づきすぎないように。
私は必死になっていて気づかなかったが、間近で見たシシリー先輩の目元には強めのクマがはっきりと浮かび上がっていた。

在学中から研究室に所属してたとはいえ、卒業とともに「室長になる」と、いうのはやはり荷が重かったのだろう。
前室長から引き継いだとは言え、本来いるはずの上級生…先輩格の研究員もいない状態から始まったので、実質新規立ち上げと変わらない。


『身体の汚れや怪我は魔法で消せるけど、浄化クリーンでも癒しの手ヒールでも、疲労は取れないんです。しっかり休んでください』


一瞬にして、深い眠りに落ちてしまったようで、今度は寂しい位に何も反応がないけれど。
倒れてから、身体を壊してから休んでもしょうがないんです。

すぐに起きれない状態になるまで頑張りすぎていたという事実に、とても悲しくなる。
そして、それを全く気づいていなかった自分に、腹立たしさを感じていた。

ベッドへと降ろした際に、乱れて顔にかかってしまった髪を、手櫛でサイドへ流す。
気持ちが良かったのか一瞬、ふにゃりと顔が緩んだのを見て、額にキスを落とす。


『……おやすみなさい』


音を極力立てないよう、静かにゲストルームを後にした。

あれは完全に過労だ。
放っておけば、数日のうちに倒れていたかもしれない。
そんなことすら気づかないで、見守りたい。傍にいたい。とか思ってた。
……で、私は何から守れていたんだろう?

避けたり遠慮したりしている場合じゃなかったんだ。
これからは、当面の仕事を奪う勢いでフォローをしていこう。
少しでもシシリー先輩の荷が軽くなるように。
心に、生活に、少しでも余裕ができるように。

……そうしたら、あの私室の荒れ具合も落ち着くのでは?と少し思いつつ。

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