私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

331、尋問なのか個人的な相談なのか。

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「さて…セシリア?いくつか教えて欲しいことがあるの」


目の前に置かれた紅茶に、無意識に手を伸ばしかけてびくりと、止まる。

そう言えばフィリー姉様と二人きり。
逃げ場がないぞ?と思った瞬間、あからさまに挙動不審になってしまったらしく、姉様に笑われて「怒ってるわけじゃないからね?」と、ぽんぽんと頭を撫でられてしまった。


「誰かに『誰にも話しちゃダメ』って口止めされてることはない?」

「ない…です」

「本当に?」


席から身を乗り出すようにフィリー姉様にじーっと見つめられると、なぜかどんどん冷や汗が出てくる。
嘘をついていないのに、ついてしまったような罪悪感というか…でも、本当に嘘はついていないのよ?


「あなたを守るために必要なことだから、ちゃんと話してね。……本当に、無いわね?」


一息つくとフィリー姉様はふわりと笑うと、一転、私を真っ直ぐに見つめて真剣な表情になった。


「あ、ありましぇん…」


あ、噛んだ。
悪さをしたわけでもないのに、じわりと、冷や汗が出てくる。


「……ねぇ、そこで噛まれると、思いっきり怪しいんだけど?」

「ありませんっ!!」


本当、なんでこのタイミングで噛んでしまうのか……。
必死に首をブンブン振る。


「ま、良いわ……じゃあ、次」


左手をくいくいと、何かを招くような仕草をした途端、目の前にレポート用紙よろしく、書類の束が姿を現した。
そこへフィリー姉様は何かを書きこみ始めると、口角を上げてにやりと意味ありげな笑みと共に、次の質問を口にした。


「あなた、誰と婚約するつもり?」

「は…はい?」


いきなりそれですかっ?!

それこそ、ルークにも言ったけど、3歳児に将来の選択をさせないで!なのですよ。
まぁ、そもそも相手を選ぼうにも、その『候補』自体すら、父様に教えてもらってないのだから、どうしようもないのだけど。


「方々から……それこそ王家、辺境伯、侯爵等々…と、申し込みが大量に来てるらしいんだけど」

「えぇぇぇ……」

「なーんて、わからないわよねぇ」


私の悲鳴じみた反応を見ながら、楽しそうに首を傾げる。

私は必死にコクコクと頷く。

その様子を見て、フィリー姉様はからからと楽しげに笑うのだけど、どうにも最初に怒鳴られてしまったのがトラウマになってしまっているのか、ヘビに睨まれたカエルのようにセシリアわたしには恐ろしくてしょうがない。

どうにも『この人は怖い人ではない』と、頭では理解しているのに、じわりと冷や汗をかくくらいだから、あの怒鳴られが相当なショックだったのだろう。


(この反応、セシリアわたしの幼児としての素直な反応と、ばあちゃん的思考との精神面のギャップだから、制御不能で困る。……まぁ、泣き出さないだけマシなのだけど)


というか、縁談は父様が全て断ってくれたはずなのでは?!
まだ断り切れていない……?

3歳でいきなり将来が決まるのは、貴族では当たり前。
むしろすぐに決まったほうが、そしてその相手の格が高いほどに、自分の価値が上がるわけだから誇らしく思って良い……らしい。


(残念ながら、私にはその価値観が理解できないので、なんの得にもならないわけだけど)


むしろ知識では知っていたけど、いざ自分の事となると『まぁそんなもんだよね』とか言ってる場合ではないので、さてどうやって逃げようか?とか、考えてしまう。

くすくすと笑いながら「そこまで必死に考え込まなくて良いわよ」と頭を撫でられるのだけど、正直……気が気では、無い。


「で、同じように私もわからないことがあるのだけれど…何であなた達は、ハンス先生を『ルーク』って呼んでるの?」

「……そう呼ぶようにと、言われてます」


そうとしか言えない。
実際、そう言われてるし、嘘にはならないはずだ。

いくら身内と言っても『前世で同級生でした☆』とか、真面目に答えてたら、どこの不思議ちゃんかと。


(……いや、フィリー姉様の事だから、思いっきり可哀想な子扱いをされかねない)


教会側の情報を得るために頑張っているフィリー姉様だもの、理解ができそうな範囲であれば話したい気持ちもあるのだけど。

内容的にどう頑張っても説明が難しくて、どうしたものかとじーっとフィリー姉様を見つめ返していると、書類から手を離してにこりと笑う。
手から離れた書類は、不思議な事にテーブルに沈み込むようにしてその姿を消してしまった。

ルークの風の乙女シルヴェストルみたいに、書類の宅配のお手伝いをしてくれる精霊でもいるのかしら?と、きょろきょろしていると『これは手紙自体に魔法がかかっているのよ』と教えてくれた。


「うーん…そうねぇ……じゃあ」


サイドに流れる後毛に、くるくると指を絡め遊びながら、小さく囁く。
フィリー姉様にしては珍しく、少し言いにくそうにしていたので、どんな質問が来るのかと身構える。


「……どうしてセシリアは、ハンス先生に好かれているのかしら?」

「へっ?」

「へ?じゃ無いわよ……全てにおいて無関心な先生が、セシリアには気持ち悪いほどにべったりなんですもの!ちょっと悔しいじゃない?!」


逆ギレの勢いで『悔しい!』というフィリー姉様の姿が、シシリーむかしのクラスの女子たちの姿と重なった。


「で、どうなのよ?」

「……わかり、ません」


むしろそこは全力で私が聞きたい。
シシリーわたしとしては、幼馴染み…いや、そうだなぁ、家族として見ていたから、というのもあるのだろうけど、魔導学園でのルークの言葉は本当に青天の霹靂だった。


(びっくりを通り越して、怖かったもん……泣いてしまうくらいに)


ただ、フィリー姉様に説明するには、最初の出会いが誘拐から王宮へ帰宅して、この時の晩餐会が実質のルークとセシリアわたしの初対面ってことになってるはずだから、本当に何がきっかけなのか訳がわからないと思う。
説明しようにも私が途方に暮れるよ!?

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