330 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
330、最低限の閾値って…。
しおりを挟むあ、そうか。
言われてみれば『王族のための避難所』だもんね。
避難生活、なんてものも王族であれば長期化する場合もままあるし、やっと姿を現せたと思ったら、ボッサボサのボロボロじゃ、見る影もないもんなぁ……。
「しかも避難するための施設なんだから、最低限の暮らしができる設備は整ってるわよ?」
心労からのやつれとか、名誉の負傷であれば「頑張れ!頑張ったね!」と思うのだろうけど、頭髪ボッサボサの無精髭だらけの、明らかになんか臭ってきそうなきったないおっさんになってたら、ダメかも……。
イメージは大事!ってよく言うけど、ある意味印象操作に近いものがあるのかもしれないね。
そんな気がしつつも、どんな場面であってもやっぱり「やつれてても素敵!!!」なんて言われるような『ただしイケメンに限る』的な加護が、王族には必要なのかもしれない。と、ふと思い至ってしまい……笑う。
「いや…最低限どころか、何でもあると思うよ……」
食後のお茶を口にしつつ、こっそりと囁くようにセグシュ兄様。
「じゃあ、気になりついでに…男性陣、お風呂行ってらっしゃい」
エルネストの瞳のキラキラが期待に最大級の輝きを放ちそうなタイミングで、フィリー姉様が手をひらひらと振りながら笑顔で見送るそぶりを見せた。
「姉さん達が先でいいよ?」
「私はどちらでも良いんだけど…ね。今、セシリアを連れて行ったら、のぼせてなくても吐く気がするのよねぇ。だからもう少しセシリアのお腹が落ち着いてから行きたいから、お先にどうぞ?」
やっぱり私か……。
フィリー姉様ごめんなさい。
そうなんだよね、お腹がぽんぽんって笑われるくらいにぽっこりしてしまってるのも、確かにいつもと違うでっぱり具合や硬さからも、簡単に理解はできたんだけど……。
子供のお腹って、腹部周囲の筋肉がまだとても柔軟…と言うか、ほとんど無いから、お腹に力を入れただけでもぽっこりと膨らますことができるんだよね。
あのぽっこりを通り越した、ぽっこり具合。
これって、本当に元に戻るのかな?と不安になるほどの状態なんだ。
「ついでに兄様と2人で、そこのちびっ子3人組を丸洗いしてやって」
「「「えっ!僕もっ?!」」」
「当たり前でしょう!丸洗いされてらっしゃい!」
「「「…はい」」」
「みんながみんなして、自分は違うって思ってるあたりがすごい…あははっ!」
セグシュ兄様、笑うところはそこじゃないと思います……!
そう思いつつも、ものの見事に3人が全く同じ反応を示したことが面白くて、私も笑ってしまった。
「……セグシュも…笑ってる場合じゃないわよ?…まぁ頑張りなさい」
フィリー姉様が意味ありげな笑みを浮かべている。
何を頑張れと?と、セグシュ兄様は不思議そうに首を傾げながら、席を立つ。
……なんとなくだけど、フィリー姉様の言わんとしていることが理解できた気がして、ジト目になる。
うん、兄様たち、頑張って。
「レオン……嬉しそうね?」
何やらそわそわと、どこか嬉しそうにしているレオンハルト王子にフィリー姉様が声をかけていた。
王宮のお風呂……ほら、誘拐事件からやっとこさ王都へと帰ってこれたときに借りたけど、普段からあれだけ豪華なお風呂に入っていたら、他のお風呂なんて楽しそうにも、なんとも思えなさそうなのだけど、レオンハルト王子の表情には、やたらとわくわくとした感じが見て取れた。
「あ…はい。みんなでお風呂というのが……初めてで」
少し恥ずかしそうにほんのりと頬を染めて、伏せ目がちに、はにかむように笑うレオンハルト王子。
「あら…じゃあ、楽しんでらっしゃい。……今日なら思いっきり泳いでも、怒られないわよ?」
「え…良いの?……やってみますっ!」
ぱっとフィリー姉様を見上げると、目をキラキラとさせて満面の笑みを浮かべると、移動を始めているヴィンセント兄様の後を追っていった。
「……余計なこと教えちゃったかしらね?ふふっ」
余計…だろうね。
ま、大変なのは兄様たちだから良いか!とか、ちょっと思っちゃったりもした。ごめんなさい。
ちなみにエルネストは、ヴィンセント兄様に抱えられて。
カイルザークは『ライトちゃんがお手伝いしますよっ!!!』と張り切るライトから、逃げるように断りながら、じりじりと迫るライトを避けつつ、兄様たちの後を追っていく。
(カイルザークの耳が、常に後ろ向き、そしてしっぽも低く、揺れも少なく見えて…あれは完全に嫌がってるなぁ……)
その慌てぶりが、いつも落ち着いているカイルザークには珍しい表情だったので、可愛らしくてしょうがない。
ちなみにお風呂等の設備は全て、今回の『避難所』の構造としては食堂の奥に並ぶ個室群と同じ並びに設置されてるとのことで……そういや、この部屋割りを最初に設定してたのがルークだもんね。
らしい!といえばらしいけど「今必要なもの」以外の設備への無関心さが際立ってるよね。
(食堂と同じく風呂だって水回りなんだから、もう少し使いやすいように、場所を考えたら良いのに)
サロン自体もワンルームとはいえ、無駄にだだっ広いものだから、私たちがこうやって話をしているテーブルセットがある場所と、シュトレイユ王子が眠っているベッドまでの距離が、実はかなり離れている。
まぁ広いからこそ、みんなはこの部屋を『サロン』って呼んでるんだけど…ね。
(広いにしても限度があると思うんだ……『避難所』と呼ぶには広すぎですよ)
それこそが『王族が使う施設』と、姉様たちが言っていた所以なのだろうけど…。
天井も高くて立派なシャンデリアがついていて……広すぎて、とにかく広すぎて、これで1人だったら避難どころか、孤独すぎて泣いてしまうかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる