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はじまりはじまり。小さな冒険?
353、子供たちには、難しいお話。
しおりを挟むそれはもちろん、魔物相手に使うものにも、だ。
万が一、悪用されて人間に使われないようにするためでもあるし、必要以上に魔物を虐待しないためでもある。
魔物の扱いも、基本的には人間に害がないのであれば、野生動物のように共存できる方向へ考えられていたからだ。
それでも、村や作物を襲ったりする『魔物の討伐』は定期的に騎士団によって行われていたし、食料としての狩りも行われていたから、どんな事があっても魔物を保護しよう!というモノではなかったのだけど。
「しかし『監獄』は存在している」
「そうだ。そして『監獄』内には、ご丁寧に『堅牢の封印』まであしらわれている」
珍しくルークの端正な顔が、嫌悪に歪む。
歪んだ顔すら美術品のような美しさで…思わず見惚れそうになるわけだけど、今はそんな場合ではない。
(ちなみに『堅牢の封印』、ゼンナーシュタットがボリボリと食べてたやつね!つまり、南京錠のような形をした錠前型の魔道具……あ、アーティファクトの一つになるのかな?)
今の技術では作れなさそうだし、作れない強力な魔道具を古代の魔道具もしくは遺物だったかな?そんな呼び方をされているようだった。
「堅牢……?」
「ああ、中に入れられた者の一切の能力を封じ、無力化する魔道具だ。……こちらは古すぎて耐久を超えたのか、そのほとんどが模倣品になっていたが、一部はまだ壊れずに機能していた」
ルークが頷くと説明をする。
表情より口調から、怒りを感じる。
こっそり怒っているらしい。
(自分の息子がとてもとてもお世話になった場所だからね、当たり前か)
……ユージアが放り込まれていた牢の鍵がまさに『堅牢の封印』だった。
私が放り込まれていた牢のは壊れてしまったのか、後から真似て作り直された模倣品だったけども。しかも、適当作成で機能してないやつね。
「同時に『思考吸収の檻』まで準備されていたそうだからな。……あれらは、人間に使わない前提で作られていた魔道具だ」
そう、ユージアの首に着けられていた『隷属の首輪』と同じ、魔物を閉じ込めるためにだけ、造られたモノだった。
そもそもそれも、魔物に対しての実験・観察用であって、商用ではないし、まして、魔物をそのまま殺してしまうためのものでもなかった。
(魔物を冒険者に捕まえて来てもらって、生態を調べて、魔物たちの習性等を利用して人が襲われないような魔道具を開発するためのものなんだ)
確かに魔物にしてみたら、嫌なことをされる瞬間はあっただろうけど。
そりゃ忌避剤のようなものを作るための研究だから「何が嫌かな?」と、色々試されたりはしただろう。
でも、限界まで切りつけてみたり、理由もなく毒を使う等、命に関わるような、あからさまな虐待とも言われるような事は、基本的には許されていなかったはずだ。
ま、捕まえて来たのがオークとかだったら、研究の後にご馳走になってしまう(!)という事は、ままあったようだけど。
……食料としても重宝されている魔物は…しょうがないかなと。
ただ、高ランクの魔物ほど、捕獲した後に研究・観察が終われば、必ず解放されていた。
(……まぁ、執拗に恨まれて、解放した近隣の村が再襲撃されないように、簡易の『隷属の首輪』と同じような魔道具を装着の上で、だけどね)
なので『監獄』が魔物の研究・観察のための施設として造られていたのであれば『思考吸収の牢』や『堅牢の封印』があってもおかしくはない。
おかしくはないが、檻の中に人であれ、魔物であれ、遺体が転がっているのは絶対にあり得ない状況だった。
「それと『使用者』が存在しているという理由の一つとして『管理者』であるはずのセシリアが『監獄』のルールに巻き込まれていた事だ」
えーっと、つまりですね。
『監獄』が…まぁ不謹慎だけど、とある遊園地のアトラクションだとして、メンテナンスや管理をするはずの『管理者』が、一緒にアトラクションを楽しむ必要はないって事。
お化け屋敷の修理で、お化けに脅かされながら修理とか、嫌すぎるし。
言われてみればだけど、いくら『監獄』だからって、保守点検に来た業者まで、閉じ込めたりする必要はないもんね?
それじゃあ誰も保守管理なんて請け負わないよ……。
『管理者』なのに簡単に出入りできないのはおかしいし、そもそも管理者の命令を聞かない施設もおかしい。
そう指摘されるまで、閉じ込めておく施設だから『監獄』
『監獄』だから、脱出も難しいって……思い込み過ぎたっだわ。
「つまり『管理者』より上位の権限である『使用者』を持った人物か、もしくは直接『核』から設定を操作できる人物がいた。と、いう事になる」
ルークは小さく息を吐くと、エルネストへと視線を向ける。
ちょうど、大きなアクビが出かけていたところでルークと目が合った事に気づいたエルネストは、びっくりしたのか思いっきりむせ込んでしまった。
ちなみにレオンハルト王子は、エルネストの盛大にむせる音に、飛び上がらんばかりにびくりとして、うたた寝から復帰していた。
「エル、魔力切れか?辛かったら、休んでても良いぞ?」
「だ…大丈夫、でっ…す」
父様が口元を隠すようにしてくすくすと笑いながら、声をかけてくれていた。
さっきまでのレオンハルト王子、可愛かったんだよ?
少し俯き加減で視界を塞ぐように、うつらうつらゆらゆらと揺れている前髪と、真剣な眼差しが徐々にとろーんととろけてくのがね、とっても可愛かった。
「……子供には難しい話だからな。では、そろそろ君たちの課題を開始としようか」
「では、始め」と、子供たちの返答を待たずに、ルークは小さな魔石のかけらをサロンへ向かって放り投げた。
すると、レオンハルト王子の傍にいたはずの仔犬姿のヘルハウンドが、大きく跳躍をし、魔石のかけらとともにサロンの暗闇へと消えてしまった。
ヘルハウンドを追うように、レオンハルト王子とエルネストが椅子から飛び降りると、颯爽とサロンへ走っていく。
さっきの眠そうだった2人の表情はどこへ行ったのやら、ぱっちり。
好奇心に瞳をきらきらと輝かせていた。
「難易度高過ぎでしょう……」
ポツリと呟きながらも、カイルザークがレオンハルト王子とエルネストの後を追うように、サロンへと突入していった。
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