私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

383、だんだん寂しくなっていって。

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 次に帰ってしまったのがゼンナーシュタット。
 守護龍アナステシアスが「そろそろ龍の離宮へ戻るよ」と、席を立つと、有無を言わさず、猫掴みのようにしてゼンナーシュタットの首の後ろを掴むと、そのまま引きずるようにして帰って行ってしまった。


 唖然と、その後ろ姿を見送っていると、今度はヴィンセント兄様が席を立つ。

 先ほどまでは大人たちの会話に混ざって、それこそ仕事の段取りの話から『避難所』でのレオンハルト王子とシュトレイユ王子の頑張りだったりを、王様たちに話してみせたりしていたのだけど……。

『馬車の準備ができたらしい』と、声がかかると「今度会えるのは年末かな?」と、私の頭をぽんぽんと撫でると、帰って行ってしまった。


(ヴィンセント兄様は結婚してるからね、家族が心配なのは当たり前だよね)


 ちょっと暴走気味な集団行動から、少しずつメンバーが減っていって……次は誰かな?と、ちょっとだけ悲しくなっていると、むしろ自分の体力の方こそ限界だったことに気づく。
 ご飯を食べたら、猛烈に眠くなってきてしまった。


「やっぱり、気を張ってたんだろうね」

「充分頑張ってたさ。レイのフォローから『避難所』滞在中の食事管理まで……実質、セシーの精霊だけでやってのけたんだ。これはとんでもない事なんだよ?」


 席についたまま、うとうとしていたのを気づかれたのか、セグシュ兄様と父様の声が近づいてきた。


「あの仔犬も……セシーが維持してるんだよね?」

「まぁ……でもあれは妖精だから、常に暴走に近いけどね」


 すっと膝裏に手を入れられて、ふわりと浮遊感。
 多分、抱き上げられたのだと思う。

 急激に襲いかかってくる眠気を必死に耐えていたのに、抱えられた安心感から、完全に睡魔に負けてしまった。






 ******






 side セグシュ。


「暴走状態って聞いてたけど、2人とも良い子だったね」

「ん~。セシーの魔力不足か、経験不足。ここら辺で精霊の方が優秀だと暴走状態になってしまうのだそうだよ。だから、暴走自体が悪い状態ってわけではないらしいんだ」


 王城での食事中、ハンス先生の風の乙女シルヴェストルに倣うように、壁際に使用人と共に並び立っている二人の精霊に目をやる。

 ちょっと風変わりな僕の妹は、この数週間のうちに、たくさんの縁を結んできた。
『魔法を使ってみたい』と、魔力測定の日に笑顔で出発してから、魔法を覚える前に、精霊と契約を結んできてしまったり、使ったこともない魔法を使おうとして、とんでもない魔法を発動させてみたり。

 そして何より、家族を増やした。
 僕にとっての、初めての弟が3人もできた。


(……1人は年齢詐称しているらしいけど、中身は幼いみたいなので、弟でいいや)


 セシリア本人が何かをしでかしたわけではないのだけど、一つのトラブルに、周りを大きく巻き込んでいくような結果で、さらに縁を増やしていく。


「いや……父さん。人化できるような格の高い精霊に、幼児が勝てるわけがないじゃないか……」

「まぁそうなんだけど。つまりさ、悪意があっての暴走じゃなくて……」


 父さんが言いかけたところで、飲みかけのワイングラスから、倒れてもいないのに、ワインの水滴がいきなり飛び出す。

 僕の目前で急激に体積を増やすと、人の姿に変わった。
 そのまま、実体化していく。


主人マスターを守るための暴走ですわ』

「うわぁ?!……ぁ、水の乙女オンディーヌ?」


 思わず飛び退くと、その姿を見てカーテシーをしながら、にこりと涼しげな笑みを浮かべる。

 水色のワンピースに、パールの刺繍がされたストールを羽織った、10代前半くらいの可愛らしい女の子が、すっと近づいてくると、頭を撫でる。

 ええと……見た目的には僕の方が年上なんだけどなぁ……。
 思わず憮然としてしまったようで、水の乙女オンディーヌの手で隠された口元から、笑う吐息がこぼれる。


『ふふっ。やはり若い子の反応は初々しくて良いわね』

「初々しいって……僕のことっ?!」


 一瞬、肯定するかのように、とても楽しそうに笑むと、父さんへと向きを変えて、話を進める。


『アルフレド宰相。そろそろ私も仮契約を解除とさせていただこうと思いまして』

「ああ、すごく助かったよ!君はとても優秀だから、ユージアくんが羨ましいね!」

『……契約ができる程度には、育ってほしいところですが』


 父さんも「楽しみだね」と笑いながら、水の乙女オンディーヌへ手のひらがよく見えるように、大きく手を開いて差し出した。

 水の乙女オンディーヌが小さく頷くと、手のひらに青い魔法陣が浮かび上がる。
 その紋様へ水の乙女オンディーヌが触れた途端、手の上を滴が流れ落ちるかのように、紋様が消えてしまった。


『では、失礼いたしますね』


 優雅にくるりと踵を返すと、そのまま周囲に透過していくようにして、姿を消してしまった。

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