私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
385 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

385、辛いのですよ。

しおりを挟む



 そういえば……うちの息子や孫たちも、親に怒られつつ、布団に押し込められて、寝ると治るパターンと、押し込められても余裕で暴れてけろりと治る、もしくは案の定だけど悪化するパターンがあったな……。

 前世むかしの事をつい昨日のことのように思い出したり、ふっと我に返ったりと、今の状況を考えているのに、前世での息子の幼い頃の顔が浮かんだり……頭の中の情報がごちゃ混ぜになってくる。


(いやいやいや……今の私セシリアまだ幼児だから!息子はいないから!今いるのは息子じゃなくて、兄弟たち、父様母様だからっ!)


 そういえば、セグシュ兄様がまだ滞在中だけど、一応、彼も病み上がり…と言うか、怪我を治したばっかりだからね。
 これで風邪までもらった困るという事で、隔離されてしまっている。


(婚約者のデビュタント間近だもんね……流石にうつすわけにはいかない…ていうかその打ち合わせのための休暇だったんだもの!)


 エルネストもカイルザークも……実は隣の部屋にいるんだけど、私の部屋には立ち入り禁止になってる。


(病原菌扱いだよね……しょうがないんだけどさ)


 馬車での帰宅中に、ルークにも指摘されていたけど、何故かルナもフレアも姿を現さない。

 契約主あるじの体調が悪い時は、負担にならないように、もしくは魔力の供給が足らずに、実体化することができなくて、姿を現せなくなる。
 ……まぁ、暴走中の精霊たちだし、ただ単に、どこかへ遊びに行ってるだけなのかもしれないけど。


 こちらの子供は特に、こんな、なんでもない簡単な風邪で亡くなってしまうことがある。


 回復魔法とか、便利な魔法がある世の中なのにね。
 ……前世にほんより薬も治療法も原始的で、致死率が高いんだ。

 それにしても…辛い。
 鼻は、かみすぎてひりひりするし、それでも常に鼻水がたれていて、呼吸するたびに、ずぴーっと音がする。
 鼻水は垂れてるくせに、詰まってて呼吸はできないし、まぶたも、ものすごく腫れぼったい。
 浮腫んでるのか、視界が狭くてまぶたがしっかり開いている気がしない。

 いよいよ熱が上がってきてしまったのか、ふわふわと……意識が朦朧としてきている。
 そんな中、ドアの向こうから、会いたいと思っていた人の声が聞こえたような気がして、必死に耳をすます。


「久しぶり。元気だった~?」

「……一応ね。相変わらず鼻が良いな」

「ん~。何のことかな?僕は呼ばれた・・・・の。良いでしょう~?」

「僕は…見舞いに来たんだ……それ良いな。僕もつけようかな」


 ドアの向こうから、人の気配と話し声が聞こえてきた。
 ……ユージアと、誰だろう?よく通る綺麗な声だ。

 そもそも、ユージアには当分会えないはずなのに。
 寂しすぎて、夢にまで見ちゃったのだろうか?


「キミの場合は必要ないでしょ?何、アホなこと言ってるの……」

「繋がりが……欲しいな…」


 軽く、小さなノック音とともに、ドアが開かれたのだけど……。


「あぁ…これはユージアは入室禁止だな」

「えっ……」


 ばたん、とユージアを締め出すようにドアが閉じられてしまった、と思う。
 朦朧としすぎて、はっきりと確認できなかったけど、しまったドアの前に立っているのは、1人しか見当たらなくて、しかもそれはユージアではない。


「開けて~っ!!」


 ユージアの叫び声と、どんどん!と、ドアを叩く音が何度か響いたが、急にピタリと音が止む。
 それを確認したかのように、小さく頷くような仕草をしたあと、踵を返すと、ユージアと同じくらいの背格好の子が、こちらに近づいてくる。


 耳が音を拾うのを拒否し始めていたのだけれど、近づいてくる音にはかろうじて、気づけた。


(いくらお見舞いだからって……こんなぼろぼろの状態は誰にも見せたくないんだけどなぁ)


 ぼんやり思いつつ、ベットからせめて上体を起こそうと、腕に力を入れてみるが…起き上がれない……。
 そうこうしているうちに、ベッドの真横まで来られてしまった。


「セシリア、お見舞いに来たよ……起きたいの?無理しちゃダメだよ?」

「おみまい…あり…がと……」


 視界の間近でさらさらと蒼銀の髪が溢れる様子が見えると、さっと背に腕が回されて、上体を起こしてくれていた。
 お礼と、挨拶をしなくちゃ……と顔を上げるとやっぱり見たことがない…そして、とても綺麗な子だった。

 天使のような、いや、一瞬本当に天使のお迎えが来ちゃったかと……素で思ったくらいに綺麗な男の子だった。
 そんな男の子が、私の顔を見て、嬉しそうに微笑んでいる。


「お薬、飲めるかな?」

「あとで…なら。のど…が、いたくて……」


 声、出てるのかな?伝わってる…かな?

 喋ったつもりなのだけど、口からは、かすれて空気のような音しか出ていなかった気がする。


(喋るのも辛い、というか喉が酷く痛くて、水を飲むのも辛いんです……)


 それを必死に伝えたかったのだけど、首を振ろうにも頭はくらくらで動かせなかった。

 というか、こんなぼろぼろな姿じゃなくて、もっと元気な時に会いたかったです……。


「ねぇ、これからどんどん辛くなっちゃうから、今飲もうね。お水準備するから……」


 そう言うと、サイドテーブルに置いてあった水差しに近づいて行った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...