私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

416、ご飯の準備と、お兄ちゃん。

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『さて……晩御飯なんだけど、この前、好評だったから、お米にしました!…炊けるまでちょっとかかるんだけど、他にリクエストある?』

注文リクエスト聞いてくれるんだ?……街の食堂か何かみたいだね」


 ルナの提案に、エルネストがぱっと顔を上げた。
 先ほどの暗い表情から一転、目を丸くキラキラと輝かせている。


『あ…作れるやつならね?』


 準備した材料で作れると良いんだけど。と笑ってみせる。


「ねぇ、ルナ。冒険者ってこんな感じなのかな?ご飯どうしようとか、明日はどうしようとか…!」

『冒険者かぁ……レイは冒険者に興味があるの?』

「うん!討伐隊にも、騎士団と一緒にいたりするでしょう?かっこいいよね!」


 ……誰もが憧れる『王子様』のシュトレイユ王子は『冒険者』に憧れる。
 そもそも王子様なんて、身近にいるような人物じゃないから、なんとも不思議に聞こえてしまうのだけど。

 自分と違う生活への憧れ。
 シュトレイユ王子の場合は冒険者なのね。






 ******






「ああ……冒険者か…レオンは本当に冒険物語が好きだな」

「……っ!!兄さまっ!」


 レオンハルト王子の、覇気のない声が聞こえた。
 ベッドで休んでいたのだけど…少しは楽になったのかな?

 いつものキチッとした足取りからは程遠く、ふらふらとソファーに座る。
 まだ少し辛そうだ…というか無理してない?
 心配になるくらいに、顔色も悪く見える。

 ……あの『隷属の首輪』は、欠けた魔石に、とても歪な魔法陣の跡が浮かび見えていたから、効果としては『粗悪品』と言われるような状態だったのかもしれない。
 それでも、魔道具マジックアイテムとして機能が成立してしまう程度には、しっかりと作られていた。
 しかも、護符付きで。
 そういう意味では、悪質な方向に高品質な『隷属の首輪』だった。


「……みんな、すまない。警戒しなければいけなかったのに…」


 はっきりとした金の髪がさらりと流れては、俯いた顔を隠す。


(個人的には、4歳児からこんな台詞が出てくること自体が驚きなわけだけど。
 しかも、しっかりと意味をわかって使ってるし)


 レオンハルト王子の話によると、王子自身が油断していたわけではないし、完全に逃げられない状況下で装着させられていた。
 ……つまり、セシリアわたしの立場で言う、セリカの位置の人間によって、いつものように着替えを手伝ってくれている時に、着けられたものだった。

 今日のために準備された正服に、まさか悪意ある魔道具マジックアイテムが紛れ込んでるだなんて、夢にも思わないよ?


「レオン。そこは『すまない』じゃなくて『ありがとう』だよ!…頑張ったね」

「……は…?」


 私の口から思わず出てしまった言葉。
 そして、俯いていたはずのレオンハルト王子がびっくりした顔で、私を見ていた。


「ん?『助けてくれて、ありがとう』でしょ?……無事でよかったよ」


 あの魔道具マジックアイテムは装着と同時に、思考を操る。
 操られている事すら気付かせないほどに、強く思い込ませる。
 思考誘導どころか、ほぼ洗脳に近い強制力を持っていた。

 作りの雑な粗悪品とはいえ、その魔道具マジックアイテムに気づき、抵抗してみせるとは、相当な精神力の持ち主だと思う。
 本当にすごい事なんだよ?

 周囲の大人だって簡単に操られてたくらいなんだから。
 とにかくすごい事なんだよ?


「いっぱい…いっぱい頑張ったのに『すまない』なんて、謝らなくて良いんだよ。そんな辛いのに、レイを守ろうとさらに頑張って……えらかったね」


 レオンハルト王子は何か言おうとしたのだろうか、口を開きかけて…でも、次の瞬間には、また俯いてしまった。
 ……耳まで顔を赤くして。


シュトレイユ王子おとうとと同じ歳の女の子に、慰められるようなことを言われちゃったわけだから、プライド的な何かが許せないとかなのかな?)


 でも、本当にえらい。
 えらかった。


「レオンが頑張ってくれたから、レイも無事だし、私たちもこうやって無事にゃの……だから、ありがとう」


 ……噛んだ。
 この肝心なところで!
 ま、いいや。
 言いたいことが伝わればいいな……って、これは伝わってないな…?

 レオンハルト王子は俯いたままふるふると小刻みに震えていた。
 これって、また私が噛んだのを笑ってるよね…。

 なんか悔しいので、ついでと言わんばかりに、俯くレオンハルト王子の頭を撫でる。
 シュトレイユ王子の明るくて癖毛気味のふわふわと柔らかい金髪とはまた違って、はっきりとした色合いのさらさらのまっすぐな金の髪。

 さらさらと指の間から流れる髪は、見た目よりずっと柔らかいんだよね。
 この子供特有の柔らかさ、好きだなぁ…と、堪能しかけていると、ぽたぽたと雫がこぼれるのが見えて。


「あ…セシリアがレオンを泣かしたっ!」

「えぇぇぇ。ちょっと、大丈夫?!……でも、本当にえらいと思ったんだよ。辛いのに。レイをちゃんと守って、しっかりお兄ちゃんなんだなぁって!」

 ユージアの声にびっくりして『ごめん!ごめんね?』と頭を撫でていた手を背に回して、ぽんぽんとさする。
 頭を抱えこむような体勢になってしまったけど、まぁ、泣き顔隠せてあげれるし。
 抱えるような格好の方が、安心感あるよね。

 ……と、思ってたんだけど、背をさすればさするほど、涙が止まらなくなってしまうようで、無言で泣き続け、ついにはしゃくりあげてしまった。


(えーと、どうしたら良かったんだろうね?!)


 しかし、4歳かぁ……。
 私より1歳年上だから、ちょこっとだけ背が高いけど、それでも前世にほんであれば幼稚園年中でしかない。
 小学生にすら、なっていない歳なんだよね。

 それであんな言動するとか、どれだけおマセさんなんだろうか?

 確かに発達の早い子であれば、一丁前な言動はするけどね。
 それにしたってレオンハルト王子の対応は、大人すぎる。

 元から発達の早い子なのか、それとも、そうせざるを得ない環境だったのか……。


「お兄ちゃんだからって、頑張りすぎちゃダメだからね。無理しないでね……」


 そんな無言のプレッシャーなんて要らないもんね。
 そう思っていた言葉が、うっかり口からこぼれていた。

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