私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

426、お風呂に行こう!。

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 大人になってから、このことを思い出す度に冷や汗が出ていたのだけど、今は少し、ほのぼのとしてしまう。

 とても立派な龍だったし、きっと私には想像もつかないほどに長寿で、永い時を生きてきたはずだ。
 受け取った手紙の、文字のつたない事からも、精霊かれらの初めての主人マスターが、とても幼いことに気づいていただろう。


(……ルナもフレアも含めて、年若い者が頑張っている姿が、とても可愛くてしょうがなかったんだろうなと、今なら思う)


 あれですよ、まだ幼い息子や孫が、頑張る姿!
 ……あの紅葉の葉のような、小さくてぷくぷくふにふにの手で、一生懸命になって、何かに取り組む姿。

 大人であれば簡単にできてしまうような事を、ひとつひとつ確認しながら、危なっかしい手つきで進めていく。

 文字通り…老婆心というか、無条件に全力で応援したくなってしまう。
 成功した暁には、どんな事でも、我が身の出来事のように大喜びして……そんな感情になってしまう。


(なんだろう、とにかく可愛らしくて、見守っているつもりが、猫っ可愛がりしたくなっちゃうような感覚だね)


 そうそう、いただいたお土産は、一見なんの変哲もない、龍の鱗や爪、髭や、革、毛。

 不思議なことにそれの一つ一つが、今までに見たことがないほどに、大きい。
 そして、いろんな種族のものが揃えられていた。


(つまり…龍は龍でも、巨体……高ランクな龍から採取された素材、ということになるんだ…)


 火龍や水龍は比較的人間の目に触れることが多いから、手に入りやすいらしいのだけど、そこに風龍、地龍のものまで揃えられていた。

 風龍はとても気まぐれで、ひと所に留まらない性質があるらしく、そもそも遭遇することが難しい。
 地龍は…知識と書いて知龍とも言われるほどに博識で、他の種族より長寿で……そして途方もなく偏屈だと、物語でもよく語られている。
 そしてその属性が示す通りに、洞窟内や地底に潜り込んでしまうので、会いたくて探していても、まず会う事はできない。

 どうやって集めたのだろうかと、不思議に思ってしまった。

 人間で言えば、友達ならともかく、多種族だから…そうだな、いろんな人種や体格の方に『髪の毛ちょうだい!』って言って集めるようなものらしいから。


(私には、ちょっと無理かな……)


 そして、そのどれもが一級品。

 そうそう、この等級なんだけどさ。
 入手した時の状況で、変わっていくんだって。
 例えば鱗の場合。
 表面の傷の有無で、価値が多少上下するのだけど、それ以上に重視されることがある。

 その素材の、入手の時の状況、だ。
 簡単に言えば、殺して、倒して奪った物か、勝手に抜け落ちたものか。


(鮮度的(!)に考えると、前者の方が良さそうなんだけど、魔道具マジックアイテムとして加工するのであれば、後者の『勝手に抜け落ちた』素材が一番加工しやすく、効果が引き出しやすいんだ)


 自然と抜け落ちるまで、長い年月を龍の魔力に晒されながら、共に成長してきた素材だ。
 そして、殺されたりした時に、体内を走り抜ける『痛い!悔しい!許せない!』等の、呪詛や瘴気のかげりの影響も受けていない、純粋な素材となる。


(ま、なんだかんだ言っても、人間に例えちゃうと、抜け毛ですよ。爪切りで切って捨てた、爪の先とか…ね)


 つまりさ、自分の家族ならともかく、知り合いとか他人に『君の抜け毛、くれないかな?』って事を、私のために、わざわざしてくれちゃったわけですよ、この龍は!
 ……本当に申し訳ない。


(あ、そうだ、ルナたちと再会したし、また一緒に行動を始めたのだから、またご挨拶しておいた方がいいね)


 あ、古代語のお手紙で通じるかな?
 まだ、今の言葉だと…ちょっと字の形が不安なんだよなぁ。

 なんて考えながら手伝いをしているうちに、全て終わってしまったようで。
 というか、シュトレイユ王子!めちゃくちゃ手際が良い!

 普段しない事って楽しいのはわかるけどね、お片付けすら楽しくなっちゃうってのは、ちょっとダメかなぁ。
 自然と出来た方がいい事だもんね。
 今回を機会として、ある程度の流れを覚えちゃったら、良いかもしれないね。
 あ…これも老婆心なのかしら。


『さぁさぁ、お風呂行っておいで~って、そうだ、寝室…戻しとく?』

「「このままで!」」


 瞳をきらきらと輝かせたシュトレイユ王子と、エルネストが即答していた。

 フレアはベッドの方へ視線をやると、そちらにはいつの間に移動したのやら、レオンの様子を確認しているヴィンセント兄様がいた。


「……ふふっ。子供たちの好きにさせていいよ……今は、子供たちを楽しませてやってくれると嬉しい」

『では、野営とは違いますが、リゾート風という配置にしておきますね』

「リゾート風…?」

『はい!……戻ってからのお楽しみです☆』


 ゼンナーシュタットとユージアを先頭に、お風呂へと走り出す子供たちの背を見送りながら、にこりと笑う。


『さぁ、ヴィンセント様も』

「ではレオンを頼むよ」


 そう言うと、ヴィンセント兄様も子供たちの後を追って、小走りにお風呂へと行ってしまった。


 さて私は…どうしようかな?

 父様たちは、今もウッドデッキの上で魔法陣を展開したまま、微動だにしていない。


(赤や青の幻想的な、ゆらゆらと強弱のある焔の舞う様は、見ていて飽きないものではあるのだけど……流石に暇になってきた)


 あと…父様たちのすぐそばではなくて、少し離れてしまうと、良い勢いのキャンプファイヤーに見えなくもなくて、思わず笑ってしまう。


『こら、こっそり見てないでセシリアもお風呂…って、そうか、女の子はセシリアだけだもんなぁ。……お風呂手伝う?』

「だ…大丈夫、のはず」

『じゃ、途中まで一緒に行こうか』

「ありがとう!」


 子供たちの片付けを手伝うために、捲り上げていた袖を直しながらのフレアと、歩き出…したと思ったら、颯爽と小脇に抱え上げられてしまった。
 なんかもう、お姫様抱っこですら、ない。


『この方が速いし』

「扱いっ!!」


 なんかもう、主人マスターの扱いじゃなくなってるよね…。
 まぁ、暴走してるから、しょうがないのかもしれないんだけどさ。
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