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第十章:断罪の光、守護の盾
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「おのれ……忌々しい娘どもが! 偽りの平和を享受していた皇帝がッ!」
正体を暴かれた大神官長が、法衣の下から禍々しい文様の刻まれた石板を掲げた。それは神殿が秘匿してきた古代の魔導具、「絶望の檻(ガイア・クラスト)」。
直後、城の地下から地響きが轟き、無数の黒い触手が床を突き破って現れた。それは周囲の魔力を無差別に吸い上げ、居合わせた騎士たちを次々と飲み込んでいく。
「リゼ、アステリア! 私の背後に下がれ!」
ヴィルヘルムが吠え、獅子のごとき剣筋で触手をなぎ払う。しかし、魔導具はリゼの持つ「原初の守護魔力」を逆手に取り、城の結界そのものを汚染し始めていた。
「死ね! 帝国もろとも、神の怒りに焼かれるがいい!」
大神官長が石板を砕くと、天井に巨大な魔法陣が展開された。放たれるのは、標的を灰にするまで止まらない漆黒の雷——「神罰の雷槍」。
その狙いは、力の源であるリゼに定まった。
「あ……」
あまりの圧力に、リゼの足がすくむ。アステリアが剣を構えて割り込もうとするが、雷の速度はその一歩を許さない。
「リゼ!!」
アステリアの悲鳴が響く中、光がリゼを飲み込もうとした——その瞬間。
ドォォォォン!!
凄まじい衝撃波が謁見の間を震わせた。
リゼが恐る恐る目を開けると、そこには、自分を庇うように立ちはだかる、巨大な鋼の壁のような背中があった。
「……陛下……?」
ヴィルヘルムだった。彼は自身の魔力をすべて防御に回し、皇帝の証であるマントを焦がしながら、生身でその雷を受け止めていた。
「が……はっ……!」
ヴィルヘルムの口から鮮血がこぼれる。しかし、彼の足は一歩も引かない。
「お父様! 無茶です、その雷は……!」
アステリアが駆け寄ろうとするが、ヴィルヘルムは震える手でそれを制した。
「……いい。これで、いいのだ……」
ヴィルヘルムは、背後にいるリゼを見ようともせず、ただ前を見据えたまま、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「リゼ……私は、あの日……お前を、この手で抱き上げることさえしなかった……。お前を守るはずの腕で、お前を排除しようとした。……その報いだ」
「もういい……もういいから、避けて!」
リゼが叫ぶ。憎んでいたはずなのに、目の前でボロボロになりながら自分を守る男の姿に、胸が締め付けられる。
「……嫌だと言ったら、怒るか? ……初めて、父親らしいことが、できた気がするのだ……」
ヴィルヘルムが力強く剣を地面に突き立てると、彼の背中から純白のオーラが立ち上った。それは、娘を想う無私の愛情が引き出した、皇帝一族本来の輝き。
「行け、娘たちよ! 私が、道を作る!」
正体を暴かれた大神官長が、法衣の下から禍々しい文様の刻まれた石板を掲げた。それは神殿が秘匿してきた古代の魔導具、「絶望の檻(ガイア・クラスト)」。
直後、城の地下から地響きが轟き、無数の黒い触手が床を突き破って現れた。それは周囲の魔力を無差別に吸い上げ、居合わせた騎士たちを次々と飲み込んでいく。
「リゼ、アステリア! 私の背後に下がれ!」
ヴィルヘルムが吠え、獅子のごとき剣筋で触手をなぎ払う。しかし、魔導具はリゼの持つ「原初の守護魔力」を逆手に取り、城の結界そのものを汚染し始めていた。
「死ね! 帝国もろとも、神の怒りに焼かれるがいい!」
大神官長が石板を砕くと、天井に巨大な魔法陣が展開された。放たれるのは、標的を灰にするまで止まらない漆黒の雷——「神罰の雷槍」。
その狙いは、力の源であるリゼに定まった。
「あ……」
あまりの圧力に、リゼの足がすくむ。アステリアが剣を構えて割り込もうとするが、雷の速度はその一歩を許さない。
「リゼ!!」
アステリアの悲鳴が響く中、光がリゼを飲み込もうとした——その瞬間。
ドォォォォン!!
凄まじい衝撃波が謁見の間を震わせた。
リゼが恐る恐る目を開けると、そこには、自分を庇うように立ちはだかる、巨大な鋼の壁のような背中があった。
「……陛下……?」
ヴィルヘルムだった。彼は自身の魔力をすべて防御に回し、皇帝の証であるマントを焦がしながら、生身でその雷を受け止めていた。
「が……はっ……!」
ヴィルヘルムの口から鮮血がこぼれる。しかし、彼の足は一歩も引かない。
「お父様! 無茶です、その雷は……!」
アステリアが駆け寄ろうとするが、ヴィルヘルムは震える手でそれを制した。
「……いい。これで、いいのだ……」
ヴィルヘルムは、背後にいるリゼを見ようともせず、ただ前を見据えたまま、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「リゼ……私は、あの日……お前を、この手で抱き上げることさえしなかった……。お前を守るはずの腕で、お前を排除しようとした。……その報いだ」
「もういい……もういいから、避けて!」
リゼが叫ぶ。憎んでいたはずなのに、目の前でボロボロになりながら自分を守る男の姿に、胸が締め付けられる。
「……嫌だと言ったら、怒るか? ……初めて、父親らしいことが、できた気がするのだ……」
ヴィルヘルムが力強く剣を地面に突き立てると、彼の背中から純白のオーラが立ち上った。それは、娘を想う無私の愛情が引き出した、皇帝一族本来の輝き。
「行け、娘たちよ! 私が、道を作る!」
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